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労働力人口の減少や物価の高騰により経営難に陥る企業も多く、国際競争力の低下も懸念されています。そこで、昨今の経済状況で注目されているのが「生産性の向上」を意識した経営施策です。少ない資源を有効活用し大きな成果を生み出すことができる施策で、企業の成長に大きな影響をもたらすことが期待されています。

生産性向上について、業務効率化との違いや6つの施策について詳しくご紹介していきましょう。

生産性向上とは

生産性とは、投入した資源(インプット)から成果物(アウトプット)がどれだけ産出できたかを表し、企業では投資に対する成果を測る指標として扱われます。

生産性向上とは、限られた人員や資源を最大限活用し、小さな投資で大きな成果を生み出す取り組みのことです。生産性が向上すれば、企業はより少ない社内リソースで大きな価値を生み出すことになるため、1つの組織としてワンランクアップすることが期待できるでしょう。

生産性の3つの種類

生産性には、資本労働性・労働生産性・全要素生産性(TFP)の3つに分類されます。さらに労働生産性は、付加価値労働生産性と物的生産性に分けられ、これらを参考に経営施策の企画や運用を行うことが重要です。

生産性の3つの種類について、それぞれご紹介していきましょう。

資本生産性

資本生産性とは、自社で保有している機器や設備などの資本が、どのくらい効率的に成果を上げられたのかをみる指標のことです。設備の稼働率や利用頻度の向上に努め、投資した設備が効率的に活用されることが、生産性の向上に重要であると考えられています。

資本生産性=付加価値額÷有形固定資産の式で算出することが可能です。

労働生産性

労働生産性は付加価値労働生産性と物的生産性の2つに分類されます。

付加価値労働生産とは、労働者1人あたりがどの程度の付加価値を産出したかを測る指標です。付加価値÷労働力で求めることができます。

物的生産性とは、労働者1人あたりがどのくらいの生産量を産出したかを測る指標です。生産量÷労働力で求めることができます。

全要素生産性(TFP)

全要素生産性とは、付加価値労働生産性に資本データを加える考え方で、Total Factor Productivityの頭文字を取り、TFPとも呼ばれます。労働力や資本に限らず、あらゆる資源を計算に加味して求めるため、より詳しく現実味のある指標を獲得することが期待できるでしょう。

全要素生産性=生産性÷全要素投入量(労働力+資本など)の式で算出することができ、技術の進歩からどれだけ生産性が向上したかを表すことができます。

業務効率化との違い

生産性向上と業務効率化は同じ意味と思われがちな言葉ですが、全く異なるものです。

業務効率化とは、既存業務のムリ・ムラ・ムダのある工程をできる限り排除して、業務にかかる時間の短縮化や業務処理量の増加を促進して効率化を測ることを指します。

生産性向上とは、結果として生み出された成果を軸に測られる取り組みです。生産性向上を達成する手段の1つとして、業務効率化があると考えるといいでしょう。

生産性向上と業務効率化、それぞれの意味合いを理解・区別し、目的に沿った施策を展開していくことが重要です。生産性向上を目的とするのであれば、インプットとアウトプットのバランスをみながら、業務効率化を目的とするのであれば資源の最小化を目指して施策を行っていくことで、それぞれの目的達成だけではなく、相乗効果にもつながっていくでしょう。

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生産性の向上が必要となる背景

少子高齢化により日本の人口は減少傾向にあり、2000年には4,686万人だった労働力人口(15〜64歳)も2030年には4,501万人になるのではないかと推測されています。今までのような働き方を続けていくと、個々の負担が大きくなり企業は衰退していく一方です。そのためこれからの企業には、限られた人員で最大限のパフォーマンスを生み出すことが求められます。

また、IMD(国際経営開発研究所)によると、世界競争力は64ヶ国中34位(2022年)と低迷しており、特に生産性・効率性などを含むビジネス効率性は2014年以降、下降し続けています。生産性向上の分野において日本は他国に大きく遅れを取っており、国を挙げて取り組むべき課題として、2019年より「働き方改革」に係る法律が施行されました。

「働き方改革」により、労働生産性の向上や、長時間労働の改善などが期待されています。

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生産性向上に向けた取り組み「4つの型」

生産性の向上には、資源(インプット)や成果(アウトプット)どちらかの改善、または方向性は拡大か縮小のどちらか、自社の組織形態や業務内容と照らし合わせて方向性を決める必要性があります。4つの型それぞれの内容を詳しくご紹介していきましょう。

インプット縮小型

業務の効率化やコスト削減を図るなど、インプットを減らすことに重点を置いた取り組みです。インプットを縮小し、生産量というアウトプットを維持することで、結果的に生産性向上の実現が期待できます。

インプット大幅縮小型

事業の統廃合やリストラを実施するなど事業全体を整理して、インプットの縮小を大幅に推し進める取り組みです。人員が削減されたことにより、アウトプット減少の可能性もありますが、生産性の質の向上が期待できます。

アウトプット拡大型

社員の労働量や労働時間などインプットの量を変えずに、社員のスキルアップやITツールを活用してアウトプットを増やす取り組みです。

アウトプット大幅拡大型

元より生産性の高い事業に集中的にインプットを行い、成果をより大きくすることで、アウトプットを更に推し進める取り組みです。アウトプットが増えているように見えても、インプットの増加率より伸び率が低い場合は、無益な投資を生んでいる可能性もあるので注意しましょう。

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生産性向上による企業のメリット

生産性向上を図ることで、企業内に多方面でさまざまなメリットを与えることができます。どのようなメリットがあるか、詳しくご紹介していきましょう。

ワークライフバランスの向上

既存業務の無駄を削減したりシステムの自動化が促進されたりすることで、効率的に業務を進めることが可能となるでしょう。その結果、残業時間の減少や休暇取得率が上がるなど労働環境が改善することで、ワークライフバランスの向上が期待できます。

国際競争力の向上

日本の企業は生産性が低下しており、価値の高いものやサービスを生み出せておらず、世界から遅れを取っているのが現状です。同業他社との差を付けるため、まずは諸外国を参考に生産性向上に取り組んでいくことが、国際社会でも闘うことのできる商品・サービスの産出につながるでしょう。

コスト削減

コスト削減を目指し人件費や残業代、原材料費などを減らしていきましょう。浮いたコストで新商品の開発や労働環境を改善することで、生産性向上につながります。その結果、社員の満足度や顧客満足度の向上にもつながり、企業全体に好循環が生まれるでしょう。

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生産性向上を実現させるための6つの具体施策

生産性の向上を実現するためには、6つの具体的な施策があります。現状の把握から課題の整理、課題の解決まで、施策の実行を遂行していけば生産性の向上につながるはずです。6つの具体的な施策について詳しくご紹介していきます。

業務全体の見える化

まず自社の生産性の現状を把握し、業務を可視化することが重要です。業務の「見える化」には、マニュアルやフローチャート、システム相関図、社員の労働時間など自社に関するさまざまな情報を最大限準備します。担当者のみで実施するのではなく、時間や手間がかかりすぎている業務がないか現場に従事する社員の話を聞き、協力して取り組みながら行うことで想定外のコストや無駄な工程を発見できる可能性が高まるでしょう。

業務の無駄の洗い出し・課題の整理

業務全体を可視化した後、社員が取り組む業務の中に無駄や非効率な業務が潜んでいないかを確認していきます。効率の悪い業務は社員のモチベーションの低下を招きかねません。複数の業務をまとめることは可能か、人によって成果に差が出ている業務はないかなどの課題を発見し、業務フローの改善や業務廃止を検討しましょう。業務フローをマニュアル化し、誰でも同じ質の成果を生むことができる仕組み作りを行うことも重要です。

アウトソーシングの導入

アウトソーシングを導入し、社内業務の一部を外部企業に委託することです。アウトソーシングのサービスには、事務作業や広告制作、商品の梱包や発送業務など多岐に渡ります。サービスを利用することにより、社員が注力すべき業務に専念できるようになるため生産性の向上が期待できるでしょう。そのため、アウトソーシングの導入は自社社員が担当すべき業務と外部委託できる業務を適切に仕分け、コスト面とサービス面のメリットを考慮しながら検討していくことが重要です。

テクノロジーの導入

デジタルツールの活用やクラウドサービスを利用した情報共有など、各種テクノロジーを取り入れることで、生産性の向上が期待できます。近年、特に注目されているのがRPA(Robotic Process Automation)です。RPAはデータ入力や在庫管理、発注などのオフィスの定型業務をソフトウェアで自動的に行うツールのことで、人的コストを減らしつつ作業効率が上がるメリットがあるため各企業で導入が促進されています。

従業員のスキルアップ

社員のスキルアップは、業務量や質の向上につながります。会社が指定するスキルだけではなく、どのようなスキルアップが必要か管理者と現場の社員が一緒に協力し合いスキルアップに向けた施策を考えていくことが重要です。また、社員のエンゲージメントを高めることで、スキルアップに向けた意識の向上につなげることも期待できます。社員教育を通じて社員1人1人が生産性を意識して取り組むことができれば、企業全体の生産性向上もスムーズでしょう。

人材の再配置

社員一人ひとりの強みやスキルを把握し、その人に合った部署やポジションに再配置することも生産性の向上につながります。強みを最大限に活かせる部署への配置ももちろんですが、反対に弱みを克服するための部署に配属し、経験を積んでもらうという手法もあります。どちらにしても、日頃から社員の働きぶりをよく観察したり定期的に面談を設け、会社の都合だけではなく社員のスキルや今後の展望も考慮することが大切です。

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まとめ

「生産性向上」とは、少ない資源を有効に活用し大きな成果を生み出すことです。業務効率化は生産性向上の1つの施策であり、意味合いとしては別のものとなります。

6つの施策をご紹介しましたが、生産性の向上には、企業と現場の社員との連携が必要不可欠です。まずは社員の「声」を聞く体制を整え、それから生産性向上に取り組むことによって、企業の成長も加速していくでしょう。

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