経済産業省が取り組むDX推進を受け、建設業界でも「建設DX」が注目されています。今回は建設DXとはどのようなものかを詳しく解説し、建設業界が抱えている課題や具体的な取り組み事例、方法をご紹介します。
建設DXとは
DXは、デジタル技術を駆使してサービスや業務のありかたを変革し、デジタル化で激しく変化しているビジネス環境の中で、競争に負けない優位性を確立していく取り組みです。
建設DXは、建設業の業務にAIやICT、ドローンなどのデジタル技術を取り入れ、DX推進を行うことを指します。
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建設DXが必要となった理由・背景
建設DXが必要となってきた背景には、近年の急速なデジタル技術の発展があります。以前から国土交通省は「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を推進し、ICTを活用した業務効率化に取り組んできました。しかし、十分浸透したとは言い切れず、特に地方自治体やローカル企業ではICTの導入に対応しきれていない組織も少なくありません。
さらに、経済産業省の取り組むDX推進では、現行の業務を効率化することだけにとどまらず、デジタル技術で人々の生活や社会全体の形を革新していくことが求められています。建設業界でももう一歩進み、企業のあり方やビジネスモデルまでをも変革していく建設DXが必要になっているのです。
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建設業界が抱える課題
建設業界は人材確保や生産性の面で多くの課題を抱えており、建設DXの取り組みで解決を模索していくことが望まれています。建設業界が抱える課題を4つ解説します。
人材不足
建設業に就業している人材は減少傾向にあり、人材不足が課題となっています。国土交通省の報告によると平成9年のピークでは685万人いた建設業就業者が、令和2年の時点では492万人まで減少しているようです。
また、高齢化問題も深刻です。55歳以上が約36%、29歳以下が約12%となっており、いかに技術承継を次世代にしていくかということも大きな課題となっています。
働き方改革
厚生労働省が進める働き方改革の一環で、2019年に残業時間の上限規制を設ける労働時間法制の見直しが施行されました。建設業は5年の猶予期間が適用されていましたが、期間終了が差し迫っています。
生産性
建設業ハンドブックによると、労働生産性の全産業平均が4,525.1円/人・時間であることに対し、建設業は2,872.9円/人・時間と、大きく下回っているようです。工事単価の下落なども関係していますが、人手不足や慢性的な長時間労働による作業効率の低下なども一因だと考えられます。
対面主義
建設業界では、現場に赴いて図面や指示書を見ながらやりとりする、対面主義の考え方が根強くあります。他の多くの産業で注目され評価されているテレワークも、建設業界ではなかなか導入が進みません。総務省の情報通信白書によると、コロナ禍であった2020年のテレワーク実施率が30%近い産業も多かった中、建設業では15.7%と全体平均を大きく下回る割合でした。
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建設DXのメリット
建設DXに取り組むことで、業務の効率化や働き方改革への対応などが実現できます。建設DXのメリットを解説します。
業務効率化
建設DXに取り組み、業務のデジタル化を進めると効率化につながるというメリットがあります。たとえば設計図面や測定データから作成した3次元モデルに情報を紐づけて一元管理すれば、ビジュアルでの確認や各工程での情報追加が簡単になり、関係者間で迅速な情報共有が可能です。
工務店などでは、CRM(顧客管理)やSFA(営業自動化)といった支援システム導入も効果的な建設DXです。顧客や商談に関する情報が社内で一元管理でき、営業業務が効率化できます。
働き方改革の促進
今まで現場にて行われていた監督業務などをテレワークで行えるようにすれば、移動時間の大幅な削減ができます。残業時間の削減や労働環境の改善につながり、働き方改革を促進できるでしょう。
また、危険が伴う作業を機械化や遠隔操作できるようにすれば、事故のリスクを押さえられます。作業員の安全性が確保され、ストレス軽減につながるはずです。
省人化
デジタル技術を用いて自動化を進めれば、作業にあたる従業員を減らすことができ、省人化につながります。また、AIを搭載した建設機械など、機械が自ら判断して自動施工するデジタル技術も発達してきています。
技術継承問題の改善
建設DXの活用で、熟練技術者の判断や行った施工の記録を、モデルとしてデータに残しておくことが可能です。マンツーマンで直接指導を受ける機会が無くても社内全体で共有でき、一度に多くの技術者が学習できるようになります。
また、判断や思考をAIに学習させる手法を活用して作業に取り入れれば、品質の安定や向上が図れるでしょう。
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建設DXの取り組み事例
建設DXで用いられるデジタル技術について解説し、具体的な取り組み事例を紹介します。
AI(人工知能)
AI(人工知能)は、コンピュータに学習や判断をさせる技術です。熟練技術者の情報を習得させれば、品質向上や社内教育に活用できます。
SaaS(クラウドサービス)
SaaSとはクラウド型のソフトウェアサービスです。インターネットでサービスを使用できるので、オフィスから離れた建設現場ともリアルタイムでつながり、状況や情報を共有できるようになります。
IoT
IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」を意味し、モノに通信技術を搭載してデータの収集と利用を行う技術です。IoTで現場のデータを収集すれば、分析結果を作業や技術の標準化に活用できます。
ICT(情報通信技術)
ICTはインターネットを活用した産業やサービスの総称です。ICT建機を活用すれば、位置検測装置で入手したデータをもとに重機の自動コントロールなどが行えます。
ディープラーニング(機械学習)
ディープラーニングは、人間の行動をコンピューターに学習させることです。従来は目視で劣化を確認していた設備点検などにも、コンピューターを導入できるようになります。
ドローン
ドローンとは無人航空機です。カメラを搭載すれば、上空からの様子や人が直接入れない場所の状況も確認できるので、点検作業や工事の進捗確認などに役立ちます。
BIM/CIM
BIM/CIMは3Dデータを活用して、構造物を立体的な図面で示す技術です。計画段階から立体的な完成イメージを捉えられるようになるので、課題を検討しやすくなります。
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建設DXを進める方法
建設DXは段階を踏んで行うと効率的に進められます。建設DXを進める方法を紹介します。
現状分析・課題の明確化
まずは解決すべき課題を明らかにします。現場の様子や意見を調査し、負担や要望を理解しましょう。
建設DXの目的・戦略を策定
明らかになった課題を解決できるように、建設DXの目的や戦略を定めていきます。現場の課題は経営者層とも共有し、企業全体で建設DXを進められるように理解を得ておきましょう。
DXの導入体制の整備
デジタル技術に対応できる人材の育成や採用を行います。建設DXを推進するためのチームを立ち上げ、取り組みに専念できる体制を整えることが大切です。デジタルツールの導入も行います。
小さな範囲で実行をはじめる
現行の業務を突然大きく変えてしまうと、現場の混乱や従業員のモチベーション低下につながります。ペーパーレス化やクラウド化といった小さな範囲の取り組みから実行をはじめるとよいでしょう。
効果測定・見直し
建設DXを導入したら、必ず効果測定を行って見直しましょう。エラーの発生や導入がすすんでいない様子が見られたときは、改善が必要です。従業員の反響やシステムの状態を確認しながら、建設DXの効果を高める方法を模索していきましょう。
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建設DXの成功事例
建設DXを実際に成功させている企業の事例を調べると、導入ツールや取り組み方のポイントが学べ、自社で取り組むべき建設DXの方向性を考えやすくなります。建設DXの成功事例を5つ紹介します。
鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社は「HANEDA INNOVATION CITY(HICity)」の開発にあたって代表企業を務めています。官民連携して行われている「先端」と「文化」をコア産業とするまちづくりの取り組みです。
現実空間を仮想空間にモデル化する「デジタルツイン」を活用するなど、DX建設を実現しています。BIMを活用したデータの統合・可視化・分析で自立走行バスの混雑状況などを可視化したり、収集したビッグデータをAIで解析したりといった技術を用いて、合理的な施設運営を図っているのです。
平山建設株式会社
平山建設は段階的に3ステップの取り組みを行う「スモールDX」を実践し、中小建設業が建設DXに取り組む手法として推進しています。
「スモールDX」は、まず業務をペーパーレスにしていく「デジタル化」、次にデータ共有を効率よく行うための「クラウド化」、最後に「データ活用」で労働生産性向上を図っていくという手法です。加えてBIMなどの建設DXも積極的に導入し、顧客へのサービス向上や採用でのアピールにも活用しています。
戸田建設株式会社
戸田建設は建設DXの取り組みで、ものづくりと運用のサイクルで収集できるデータをリアルタイムでプラットフォームに蓄積し、顧客への高い価値提供をしていくことを目指しています。
建設DXの実現に向けて、4ステップに分けたロードマップを掲げているのが特徴的です。人材育成や本社ビルのスマート化を行う段階、デジタル技術を稼働させる段階、ビジネスモデルや顧客との接点を革新する段階といったステップをクリアし、データが全ての業務で流通する「デジタル常態」をゴールとして定めています。
戸田建設が考えるデジタルトランスフォーメーション(DX) | 戸田建設株式会社
清水建設株式会社
DX銘柄に3年連続で選定されている清水建設は、設計企画でのコンピュテーショナルデザイン「Shimz DDE」の活用や、竣工時までBIMデータを連携する「Shimz One BIM」、建設現場でロボットや3Dプリンターを活用するデジタル化施工「Shimz Smart Site」などに取り組んでいます。
株式会社熊谷組
熊谷組は、2016年に起きた熊本地震の災害復旧工事をすべて無人化施工で行い、二次被害を防ぎながら調査・設計・施工のプロセスをデジタル化することに成功しました。また、ダムの施工で人為的ミスを削減するAI骨材粒径判別システムや、業務や施工をサポートするクラウドアプリケーションの自社開発にも力を入れています。
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まとめ
建設業界は建設DXに取り組み、抱えている多くの課題を解決していくことが求められています。まずは身近な業務のデジタル化を実行していきましょう。管理システムなどを使ってペーパーレス化やクラウド化を進めることで、建設DXの最初のステップを踏み出すことができます。
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