デジタル競争の激化や人材不足などの要因から、多くの企業がDXの重要性を認識しているのではないでしょうか。しかしながら、DXを推進するためには膨大な投資が必要とされます。
この負担を軽減する手段として導入されたのが「DX投資促進税制」です。本記事では、DX投資促進税制の概要や認定要件についてわかりやすく解説します。(税制について2023年10月時点の記載となります。)
そもそもDXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して企業のビジネスモデルや業務プロセスを変革し、付加価値を高める取り組みのことです。これにより、効率化や生産性向上、顧客体験の向上など、企業の競争力を強化することができます。
経済産業省の「DX推進ガイドライン」では、DXについて以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
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DX投資促進税制とは
DXの推進は企業にとって競争力を高めるうえで重要な取り組みですが、その実現には多額の投資が必要となります。そこで、DXの推進を促進するため、日本ではDXに特化した税制として「DX投資促進税制」が導入されました。
DX投資促進税制は、企業がDXに関連する投資を行った際に、その投資額に関して特別償却または税制控除といった優遇措置を受けられる制度です。これにより、企業はDXに向けた投資負担を軽減し、積極的なDXの推進を行うことが期待されます。
DX投資促進税制の優遇措置を受けるためには、まずDX認定を取得しなければなりません。DX認定については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
経済産業省は「令和5年度税制改正に関する経済産業省要望」において、令和4年度末までとされていたDX投資促進税制の適用期限の2年間延長を要望しました。その結果、適用期限は令和6年度末まで延長することが決定されました。
DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制の見直し及び延長
情報技術事業適応の定義と認定要件
経済産業省によると、「情報技術事業適応」は次のように定義されています。
「デジタル技術の革新により世界で破壊的なイノベーションが起きていることを踏まえ、こうしたDigital Disruptionの動きに対応していくべく、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革(DX)に取り組むこと」
また「情報技術事業適応」の認定要件は、以下の5つがあります。
1.計画期間
2.生産性の向上または新需要の開拓
3.財政の健全性
4.前向きな取組
5.全社的取組
上記要件の詳細な基準は、以下の「産業競争力強化法における事業適応計画について」の11ページ「事業適応計画の認定要件(詳細)」に記載されていますので、参考にしてください。
DX投資促進税制の恩恵を受けるには、具体的にはD要件とX要件を満たす内容の事業適応計画を作成する必要があります。
それでは、これらの要件について詳しくみていきましょう。
デジタル要件(D要件)
デジタル要件とは、以下の条件に該当する投資を実施することを指します。
データ連携 | 社外のデータや新たに取得するデータと、内部データを連携すること |
クラウド技術の活用 | 社外のクラウド技術を利用したITサービスの活用または、自社のクラウド技術の活用 |
情報処理推進機構(IPA)が審査する「DX認定」の取得 | 情報処理推進機構(IPA)の審査する「DX認定」の取得(レガシー回避・サイバーセキュリティ等の確保、デジタル人材の育成・確保) |
企業変革要件(X要件)
企業変革要件では、計画の実施期間が5年以上であることに加えて、投資が以下の条件に適合している必要があります。
売上上昇 | 全社レベルでの売上上昇が見込まれること |
海外市場の獲得 | 成長性の高い海外市場の獲得を図ること |
全社の意思決定に基づくもの | 全社の意思決定に基づくもの (取締役会等の決議文書添付など) |
対象となる投資・設備
DX投資促進税制で対象となる投資・設備は次のようなものです。
ソフトウェア | 取得および製作いずれも可能 |
繰延資産 | クラウドシステムへの移行に係る初期費用 |
器具備品 | ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る |
機械装置 | ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る |
税制優遇の内容
DX投資促進税制適用の対象になると、以下の税制措置を受けることができます。
投資した設備 | 税額控除 | 特別償却 |
・ソフトウェア ・繰延資産 ・器具備品 ・機械装置 | 3%または5% グループ外の他法人ともデータ連携する場合は5% | 30% |
税額控除の上限は「カーボンニュートラル投資促進税制」と合わせて当期法人税額の20%までとなります。
投資上限額
DX投資促進税制における投資上限額は、次の通りです。
投資額上限 | 300億円 (300億円を上回る投資は300億円まで) |
投資額下限 | 国内の売上高比0.1%以上 |
投資額上限の300億円は、事業適応計画の認定要件ではなく、この税制措置による特例の計算の基礎となる投資額の最大値です。したがって、400億円の投資計画でも認定を受けることはできますが、DX投資促進税制の適用においては、特別償却限度額または税額控除限度額は300億円を基準に計算されます。
なお、投資額下限については、設備ごとに設定されているのではなく、計画全体で判断されます。また、事業適応計画が認定されているため、投資金額が当初の予定を下回ることは通常ありませんが、災害などの影響により延期や減額となる場合には個別の事情による判断となるでしょう。
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DX投資促進税制が適用されるまでのステップ
次にDX投資促進税制が適用されるまでのステップを詳しくみていきましょう。
DX投資促進税制の詳細と自社の現状確認
まず第一に、DX投資促進税制の詳細を理解することが重要です。このためには、経済産業省や情報処理推進機構(IPA)が公表している情報を参照し、要件などを確認する必要があります。
次に、自社の現状を把握し、DX投資促進税制の適用要件を満たすためにどのような対策を取るべきかを検討しましょう。
DX認定の申請・取得
DX投資促進税制の恩恵を受けるためには、まずIPAの「DX認定」を取得しなければなりません。
DX認定を受けるための要件
DX認定には、「デジタルガバナンス・コード」という基準を満たすことが条件となります。
デジタルガバナンス・コードは、経済産業省が提唱するデジタル化に関するガイドラインです。Society5.0への移行に向けて、企業が自主的に取り組むべきデジタル化戦略とビジョンを策定・公表することを促し、デジタル技術を活用した成長を実現するための指針となっています。
デジタルガバナンス・コードには以下の4分野6項目が含まれており、企業は各々の基準を満たすことが求められます。
1.ビジョン・ビジネスモデル
2.戦略
2-1.組織づくり・人材・企業文化に関する方策
2-2.ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策
3.成果と重要な成果指標
4.ガバナンスシステム
DX認定申請に必要な書類
DX認定申請に必要となる主な書類は以下の通りです。
1.定款の写し
2-1.事業報告の写し
2-2.貸借対照表
2-3.損益計算書
3.生産性の向上又は需要の開拓について
4.財務内容の健全性の向上について
5.経営の方針の決議又は決定の過程について
6.計画の実施に必要な資金の使途及びその調達方法の内訳について
7.暴力団排除に関する誓約事項
8.前向きな取組の根拠(成長発展事業適応又は情報技術事業適応に関する計画に限る)
9.前向きな取組に係る補足説明資料(情報技術事業適応に関する計画に限る。)
10.第三者機関による認証(エネルギー利用環境負荷低減事業適応を行う者が金融支援を受けようとする場合に限る)
11.融資計画(利子補給制度を受けようとする場合に限る)
事業適応計画の作成・承認
「DX認定」の取得後は、事業適応計画を作成しましょう。この事業適応計画は経済産業大臣の承認が必要になります。
DX認定を受けるための事業適応計画に関する取り組み内容は、該当する事業分野を所管する省庁へ個別に相談し、事業適応計画を作成・提出します。
事業適応計画に記載しなければならない項目は次の3つです。
・事業の目標
・事業の内容
・投資の内容
また、事業適応計画とともに、情報技術事業適応に係る確認申請書やその他の補足資料も記載し、提出する必要があります。これらの書類はそれぞれ所定の様式が用意されているので、よく確認して作成するようにしましょう。
DX資産の取得と税務申告
事業適応計画が承認されたら、その計画とデジタルガバナンス・コードに基づいて、実際にDX資産を取得し、DXに取り組みましょう。このDX資産は税制適用期間内に事業に活用する必要があります。
適用事業年度が終了した際には、DX投資促進税制を適用して税務申告を行いましょう。
実施状況報告書の提出
事業の適用年度が終了したら、実施状況報告書を提出することが求められます。この報告書は3か月以内に提出しましょう。
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まとめ
DX投資促進税制は、企業がDXに向けた投資を奨励するための税制です。DXを推進するには、大規模な投資が要求されますが、それを軽減することで、企業の競争力向上が期待されます。DX投資促進税制の恩恵を受けるためには、一定の要件を満たさなければなりませんが、認定された企業は税制上の優遇を受けることが可能です。この税制を活用することで、より多くの企業が積極的にDXへの投資を行い、日本の経済成長と競争力の向上に貢献することが期待されます。
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