生成AIの急成長は世界的な話題となり、大企業での業務活用も行われるようになってきました。生成AIの活用は業務効率化や生産性向上の実現に効果を期待できるため、これから導入を検討している企業も多いでしょう。
一方、セキュリティの面では問題がないのかと、不安を感じている人も多いかもしれません。
今回は生成AIのセキュリティリスクについて解説し、社内でできる対策を紹介します。
生成AIとは
生成AIとは、分析・学習したデータを元に新しいコンテンツを生成できる人工知能の総称です。生成できるコンテンツは、テキストや音楽、画像など生成AIによって異なります。
一例を挙げると、OpenAIが開発して世界的な広がりを見せているチャットボット「ChatGPT」は、問いかけに回答する会話形式でテキストを自動生成してくれる生成AIです。製品の紹介文や資料の作成などに活用すれば、ライターを雇う費用の削減や時間短縮などが可能になります。
ほかにも、画像系の生成AIでイメージ画像を作成する、CMに音楽系の生成AIで作ったバックミュージックを挿入するなど、生成AIはさまざまな活用が考えられるでしょう。クリエイティブな分野ではもちろん、プロセスの自動化にも役立つと、多くの分野でビジネスへの活用が進められているのです。
生成AIのセキュリティリスク
生成AIをビジネス活用するにあたり、セキュリティ面で問題はないのだろうかと不安を感じる人は多いでしょう。リスクとしては、情報漏洩や権利侵害といったものが考えられます。
外部からの攻撃による情報漏洩
外部から攻撃されることで情報漏洩が発生するリスクがあります。
例えば、ハッカーによる攻撃でセキュリティの弱い部分から侵入されると、生成AIが保存しているデータやアクセスしている個人情報などが盗まれてしまう可能性があります。ビジネス上の機密情報なども危険にさらされる恐れもあるでしょう。また、生成AIの回答が誤ったものになるよう操作されてしまうといった危険も考えられます。
生成AIを使用する際は、アクセス制御やデータ暗号化、定期的なセキュリティ監査などを実施して外部からの攻撃に備え、情報漏洩のセキュリティリスクを最小限に抑えることが必要です。
社内の機密情報がAIシステムに入力されることによる漏洩
社内の人間が悪意なく情報漏洩をしてしまうというセキュリティリスクもあります。
生成AIは利用者がAIシステムに入力した情報も学習データとして活用するものが少なくありません。社内の機密情報を入力してしまうと、学習データに取り込まれ、外部の人へのレスポンス生成に使われてしまう恐れがあります。
例えば、生成AIを用いて資料作成やPR文の作成などを行っているうちに、重要なデータや未公開の情報をうっかり入力してしまうというケースが考えられます。データの入力に関して社内でルールを定めることや、誤って取り込まれないように入力データを厳格に管理すること、外部に機密情報が漏れないようにAIの応答を監視することなどの対処が必要です。
間違った情報(ハルシネーション)の発信
ハルシネーションとは、生成AIが事実に基づかない間違った情報を生成してしまう現象を指します。AIが生成するコンテンツは、全てに事実の裏付けや正しい情報元があるわけではありません。生成AIが「それらしい回答」を作り出している可能性もあるのです。
間違った情報を拡散してしまうと世間の混乱を招き、発信した企業の信頼性が低下します。
ハルシネーションの発信を防ぐために、生成AIによって生成したコンテンツは、必ず人間によるファクトチェックを行う、公開する前に複数人で確認するなどといったルールを社内で定めておくとよいでしょう。
権利侵害(他者の権利を侵害する)
生成AIで作成したコンテンツが権利侵害をしてしまうセキュリティリスクも考えられます。
生成AIは既存の文章や画像などに酷似したコンテンツを生成する可能性があり、著作権を侵害してしまう場合があります。また、事実と異なる情報の発信や差別や偏見などの問題を含む表現が、個人の名誉を害してしまうというケースもあるでしょう。
ハルシネーション発信の防止と同様に、生成AIを用いて作ったコンテンツは人間の目でチェックを行い、法的・論理的に問題のある情報が含まれていないかを確認した上で使用しましょう。
生成AIのセキュリティリスクへの対策
生成AIを活用するにあたって懸念されるセキュリティリスクは複数あります。しかし、ガイドライン策定やセキュリティシステムの導入といった対策を行うことで、リスクの軽減は可能です。生成AIのセキュリティレベルを引き上げることも有効な方法でしょう。
企業ができるセキュリティリスクへの対策について詳しく解説します。
社内の利用に関するガイドラインを策定
生成AIを社内で利用する場合は、ガイドラインを事前に整備しておきましょう。
生成AIのシステムに機密情報を入れないなどルールを定めてガイドラインを作成することで、生成AIの安全な利用方法を社内で共有でき、セキュリティリスクを最小限に抑えられます。
どのような情報が機密情報にあたるのか、許可されている生成AIの使用方法なども明らかにしておきましょう。社内で研修などの教育を行うことも効果的です。
セキュリティシステムを導入する
生成AIに対応しているセキュリティシステムを導入することも1つの方法です。セキュリティを強化することで、効率的なリスク管理ができます。
特にAIを活用したセキュリティシステムが有効です。セキュリティ担当者に代わり、AIがネットワークやシステムへの攻撃を識別してくれるため、より効果的な脅威の検出が可能です。
また、高度な分析能力で侵入経路や被害の迅速な特定ができるため、感染したデバイスの隔離や侵入ルートを封じるための対策を効果的に行ってくれます。
サイバー攻撃は日々複雑化しています。社内の情報を守り被害に遭うリスクを減らすために、しっかりと対応できるセキュリティシステムの導入は重要です。
生成AIのセキュリティレベル向上
セキュリティシステムを導入するだけでなく、生成AI自体のセキュリティレベルを引き上げておくことも大切です。
生成AIのアルゴリズムが最新の状態ではないと、外部からの攻撃に弱くなる、バグが発生しやすくなるなどの危険があります。常に最新の状態にしておくように注意し、生成AIのセキュリティレベル向上に努めましょう。
生成AIが作り出したコンテンツについてのモニタリングや分析を強化し、異常なパターンや不審な活動が見られた場合は早期に検出できるようにしておく必要もあります。定期的にセキュリティテストや監査を行い、新しい脅威にも素早く対応できる体制を整えることは効果的なセキュリティ対策です。
生成AIのセキュリティリスクに対して社内でできる対策
社内で生成AIを利用する際の注意点に加えて、生成AIの悪用や誤用で起きるセキュリティ脅威の問題も理解し対策しておく必要があるでしょう。
生成AIのセキュリティリスクに対して社内でできる対策を解説します。
外部からの攻撃に備えた学習
最近、生成AIをサイバー攻撃者などが悪用し、新しい攻撃を作り出すために使っているという事例が増えているようです。
フィッシング攻撃に使うメール文章を大量に作ったり、マルウェアのプログラミングにおいて作成効率を上げたりといったことにも生成AIが使われてしまい、手口が巧妙化しています。
外部からの攻撃に効果的に対応する手段の1つとして、攻撃に備えた学習をAIにさせておくという方法があります。
例えば迷惑メールのパターンや特徴を学習させておくことで、受信したメールについて安全性の評価や自動的なフォルダ振り分けなどが可能です。
生成AIを悪用すると詐欺メールだとは気付きにくい自然な文章のメールが容易に作られてしまいますが、AIが危険性を感知すれば機械的に処理してくれるため、誤って開封してしまう事態を防げるでしょう。
AIは新しいパターンを学習させるほど対処能力を高められるという特徴があります。日々進化しているサイバー攻撃ですが、使用する側も攻撃に備えた学習をAIにさせておくことで、セキュリティシステムをより堅牢にし、リスクへの迅速な対処ができます。
セキュリティ対策のアップデート
セキュリティ対策は常に最新のものにアップデートしておきましょう。
近年のテクノロジーの発達は著しく、サイバー攻撃も次々と新しいパターンが出現しています。最新の脅威に対応するために、セキュリティソフトウェアの更新や脅威検出方法の見直しを定期的に行いましょう。
セキュリティに関わる脅威について従業員と共有したり、教育を行ったりといった活動も重要です。新しい攻撃の手口や、業界のセキュリティトレンドなどについても情報収集を怠らないようにしましょう。
人間による確認
AIや機械によるチェックで見つけられる脅威も多いです。しかし、複雑な判断や根本的な倫理判断は不得意なため、人間が確認することではじめて露見するミスや問題もあります。
AIは提案や分析に活用し、最終的な判断は人間が確認して行うようにしましょう。
AIが事実ではない情報を学習したり、意図せぬところで機能してしまったりという場合もあるため、人間による定期的なチェックが必要です。テクノロジーに任せられることで効率化できる部分と、人の確認や判断が必要な部分をしっかりと理解し、生成AIをはじめとするAIを上手に活用できれば、セキュリティリスクをより軽減できるでしょう。
まとめ
生成AIを利用するにあたっては、情報漏洩やハルシネーションなど、いくつかのセキュリティリスクが懸念されます。しかし、ガイドラインの作成やセキュリティの強化といった対策をすれば、リスクの軽減は可能です。
生成AIは、業務効率化や経費削減に大きく貢献するため、セキュリティリスクに注意しながら有効活用することをおすすめします。
生成AIを業務活用する場合は、事前に商品や情報の管理体制を整えておくとスムーズです。AI活用はまだ早いかなと検討している場合でも、まずは商品情報を一元管理し、共有することからはじめてみてはいかがでしょうか。
商品や情報の管理を効率的に行えるサービスとしては『PlaPi』がおすすめです。
『PlaPi』は、誰でも簡単・手軽に商品・情報管理システムを構築できるクラウド型PIMサービスです。
システムインフラとしてMicrosoft Azureを利用しており、システムを日本国内に配置の上、情報の暗号化、アクセス経路に対する不正な通信を遮断する対応をとっているため、情報セキュリティに配慮したサービスとなっています。
現在PlaPiでは、登録された情報を生成AIと組み合わせて利用できる機能を用意しております。この生成AI機能では、参照される情報がPlaPiに登録された情報のため、ハルシネーションを防ぐことにつながります。
生成AIを活用したいが、セキュリティ面が気になるという企業様は、ぜひこの機会にPlaPiのトライアルを検討してみませんか。