企業経営において、物品管理は利益に直接的につながらないため、意欲的に取り組んでいる企業は少ないかもしれません。
しかし、物品管理が適切に行われていれば、社内のムダを省き、業務の効率化が進みます。
本記事では、物品管理の重要性をおさらいしながら、効率的に物品管理を行うための方法も紹介します。
物品管理とは?
言葉通り、企業内で使用する、さまざまな物品を管理するのが物品管理です。適切に物品管理ができれば、業務に必要な物品の過不足をなくし、適正に管理することができるでしょう。
例えば、あるペンが見つからず、新たに購入したとします。ペンが自社に届いた途端に、以前使用していたものが見つかった、というような経験をしたことはありませんか。
ペンを探すための時間や、複数のペンを管理するためのスペースや手間は、本来は不要です。物品管理ができれば、ムダなコストを省き、業務の効率化を図ることが可能なのです。
物品の種類
物品管理の対象になる物の種類を大まかに分類すると、機材と備品、消耗品の3つに分けられます。どのような物が物品管理の対象となるのか具体的に紹介しますので、自社内を思い浮かべながらチェックしてみましょう。
機材
まず、機材は、ノートパソコンやタブレット、スマートフォンなどの通信機器、撮影機材などです。どれも社外に持ち出して使用できるもので、かつ高額であることが特徴といえます。
ほかにも、スクリーンやプロジェクター、パソコンのモニターなどが機材として挙げられます。自社の購入品だけでなく、レンタルやリース品の機材も、物品管理の対象です。
備品
物品管理が必要な物品として、ほかには備品が挙げられます。備品となる条件は、耐用年数が1年以上で、価格は10万円以上、20万円未満で取得したものです。
具体的には、デスクやイスなどのオフィス家具、デスクトップパソコン、ロッカー、ブックシェルフ、時計などが該当します。企業規模が大きくなれば、その分、備品も多くなるため、物品管理は大変な業務となるでしょう。
消耗品
物品管理の対象となる物品には、消耗品も含まれます。文房具や事務用品、洗剤、トイレットペーパー、日用品など、低価格で短期に使用するものです。
機材と備品、消耗品は、価格や使用可能な期間などに、かなりのばらつきがありますが、すべて物品管理の対象となります。
在庫管理との違い
自社で製造する製品や原材料などの在庫を管理することを在庫管理といいます。具体的には、在庫の数量、状態、保管場所などを把握し、管理します。
在庫管理をすれば、売れ筋商品や、売れなくて不良在庫となりつつある商品を把握でき、経営状態をつかむことが可能です。的確な経営判断をするための材料となるのです。
現代の在庫管理は、現状把握だけではなく、細かい管理が求められています。人口の減少や環境負荷への配慮などもあり、大量生産、大量消費の時代は終わりました。余計な在庫を持つと、管理のための人件費やスペースにコストがかかるため、各社、在庫を持たない努力をしています。
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物品管理の目的
経営に直接的に関わる在庫管理と比較して、物品管理は軽視されがちです。しかし、物品管理は経営とは無関係ではなく、実は重要な役割を担っています。物品管理の目的を再確認してみましょう。
業務効率化
普段の業務で使用するパソコンやデスクなどは、ほとんどが物品管理の対象となるものです。機材や備品が整った状況であるからこそ、業務ができるともいえます。
機材や備品の物品管理が「見える化」されていれば、使用予定の重複なども回避でき、スムーズな運用が可能です。必要な時に必要な物品を使用して、結果的に業務効率化にもつなげられるでしょう。
コスト削減
物品管理では、機材や備品の交換やメンテナンス時期をチェックし、故障時の修理なども行っているため、いつも最適な状態で物品を使用可能です。
適正な数量の機材や備品で業務を回せるため、ムダがありません。当然、コストパフォーマンスも上がります。
物品のコンディションを適正に保てていない場合、緊急で高価な物品の購入が必要になったり、時間外料金を払ってメンテナンスを依頼しなければならなくなったりと、コスト高になる恐れがあります。
セキュリティ対策
物品管理の対象物には、社外秘の情報を取り扱うノートパソコンやスマートフォンなどのように、情報漏えいのリスクが高いものも含まれています。いつ、誰が、どこで使用しているのかを管理できていれば、紛失してしまった場合の追跡もしやすくなるでしょう。
仮に物品管理をしていない状態で行方がわからなくなった場合、紛失したのか、盗難されたのかもわからない、困難な状況に陥ります。状況によっては、企業の信用問題にもなりかねないでしょう。
内部統制
物品管理は、内部統制を高めることにつながります。経営者も従業員も、同じルールにのっとり、ミスなく管理する必要があるからです。
物品管理が規則通りにしっかり行えるのであれば、内部統制もできつつあるといっていいでしょう。
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物品管理で把握すべき内容
物品管理では、物品のどんな要素をどのように管理していくといいでしょうか。物品管理で把握すべき、具体的な内容を紹介します。
所在
機材や備品などを「誰が」「どこで」管理、あるいは使用しているのかを社内で共有しておくことは、物品管理をする上で、最も大切なことです。物品の紛失や私物化を防ぐことができるからです。
機材や備品は、企業の財産ともいえます。誰もが必要なときに使用できるようにしておきましょう。
状態
物品管理をする機材や備品の状態を把握しておくことも重要です。使用可能なのか、故障しメンテナンス中なのかなど、個々の状態を明らかにし、適切な対処をする必要があります。
購入年月日の管理に加え、最適な状態を保つために、使用期限の把握も忘れないようにしましょう。
数量
同種の物品を複数個管理する場合は、数量を把握しつつ、過不足のないように調整することも、物品管理の仕事の1つです。
所有している数量と在庫数が異なる場合は、紛失してしまった恐れがあります。物品が「あるはずなのにない」という状態に陥り、業務に支障をきたすことがないようにしましょう。
資産
会計処理上、備品や機材は「資産」として扱います。数年間かけて、減価償却をしていく資産は、購入年月日や価格、個数などを正確に把握しましょう。
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物品管理の5つのステップ
物品管理をしていく手順を5つのステップで紹介します。具体的な内容を確認しながら、自社での物品管理をシミュレーションしてみましょう。
物品管理台帳の作成
まずは、物品管理台帳を作ります。手書きやエクセルデータ、システムを利用するなど、どのような方法でも構いません。
物品管理台帳には「品名」「数量」「所在(保管場所)」「購入日」「状態」の項目を設けるのが基本です。企業が支給しているスマートフォンなどは「利用者」「利用日」「返却日」などの項目を作りましょう。リース品であれば「リース期間」「交換期限」などの項目が必要となってきます。
カテゴリ分けとラベリング
物品をカテゴリ分けし、ラベリングをしておくと、管理台帳の記載や棚卸しがしやすくなります。ICタグやバーコードを付したラベルを物品に貼っておけば、端末でスキャンするだけで、数量や保管場所などの情報を把握でき、物品管理業務の効率化が図れるでしょう。
保管場所を決める
物品をカテゴリごとに分け、保管します。保管する棚には番号やカテゴリ名などを記して、一目で確認できるように工夫しましょう。
物品の配置の仕方にも工夫ができます。よく使うものや使用期限の近いものを手前に置けば、取り出しやすく、戻しやすい環境をつくれるでしょう。
使用に関するルールを周知する
物品の貸し出しや返却のルール、持ち出し規定などのマニュアルを作成し、周知します。ルールを守れない場合には、紛失や盗難、情報漏えいなどのリスクが生じることも、伝えておくといいでしょう。
管理業務担当者だけでなく、営業担当者や製造担当者など、どの部門の社員にも分かりやすいマニュアルの作成を心がけると、物品管理が成功に近づきます。
定期的な棚卸
物品管理台帳の記載どおりの物品があるかチェックするために、定期的な棚卸しを行いましょう。数量はもちろん、メンテナンスの必要性なども併せてチェックを行いましょう。
機材は、棚卸しのタイミングで動作チェックも行うことをおすすめします。使用期限内であっても、使用する時になって動作しないこともあり得るからです。
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物品管理にはシステム導入もおすすめ
手作業でも物品管理は可能ですが、システムを導入している企業も増えてきました。ICタグやバーコードと併用すれば、物品管理台帳と物品を照らし合わせなくても、端末をかざすだけで数量や使用期限などのチェックが、簡単にできるからです。
システムで物品管理を行えば、物品の名称の誤認やカウント間違いなどの人為的なミスを防ぐことができ、より正確な管理が可能です。さらに、物品管理の業務効率が向上し、業務時間を減らせるので、人件費の削減にもつながっていくでしょう。
しかし、物品管理のためにシステムを導入すれば、当然、システムの利用料や運用担当者の人件費など、新たなコストが発生します。物品管理の業務効率を上げることが、システムへの投資コストを上回るかどうかの見極めが必要です。
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