国の法整備などにより働き方改革が推し進められて4年が経過しようとしています。この間、企業や従業員にどのような変化があったのでしょうか。

働き方改革に取り組もうと考えている方や、他社の働き方改革を比較して自社の現状把握をしたい方は、本記事で働き方改革についておさらいしましょう。

働き方改革とはどのような取り組み?

働き方改革とは、文字通り働き方の改革です。ただし、働き方改革を主体的に取り組んでいくのは、労働者ではなく企業です。
生産性を向上させるために、企業はこれまでイノベーションや投資に取り組んできたことでしょう。しかし、人口減少と共に労働力の減少が顕著となってきた現在は、就業機会を増やし、従業員が能力を存分に発揮できる環境をつくることが重要です。

労働力不足に伴う廃業やシェアの低下を避けるためにも、企業は働き方改革に早めに取り組むといいでしょう。労働力の減少を食い止めるためには、長時間労働や労働生産性の改善、今もはびこる男女間の雇用・処遇格差の解消、ライフステージに合わせた多様な働き方の提供が必要となってきます。

厚生労働省のホームページに【「働き方改革」の実現に向けて】と題し、働き方改革に取り組む企業への国の支援などがまとめられていますので、一読をおすすめします。

働き方改革推進の背景

働き方改革が推進される背景には、現在、日本社会の抱える大きな問題、人口減少による労働人口の減少があります。日本は、少子化が進む超高齢社会であることを報道などで見聞きしている方も多いことでしょう。

労働に関する調査研究を実施している独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した「労働力需給の推計〜労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計〜」によると、労働力人口は2017年の6,720万人から、経済成長と労働参加が変わらない場合、2040年には5,460万人と約20%減少すると見込まれています。

一方で、2017年と比較してある程度の経済や雇用対策が行われ、若者や女性、高齢者が労働に加わった場合には5,846万人、経済や雇用対策が適切に行われて各層の労働参加が進んだ場合には6,195万人と推計しました。何らかの対策を講じれば、人口減少による労働力の減少幅を小さくできることを示しています。

働き方改革関連法による働き方の変更点

政府は、働き方改革を促進するため「働き方改革実現会議」を2016年9月に設置し、翌年3月には「働き方改革実行計画」をまとめました。長時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備など、9分野の働き方改革の具体的な方向性を示したものです。

2018年6月に「働き方改革法案」を成立させ、翌年4月からは「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」を順次施行しています。労働人口の減少が待ったなしの状況の中で、政府主導で働き方改革を企業に促しているのです。

働き方改革関連法とは、働き方改革促進のために改正した労働関連法の総称です。働き方改革関連法という新たな法律がつくられたわけではありませんので、注意しましょう。

【働き方改革に向けて改正された法律】

  • 労働基準法
  • 労働時間等設定改善法
  • 労働契約法
  • 雇用対策法
  • パートタイム・有期雇用労働法
  • 労働者派遣法
  • 労働安全衛生法
  • じん肺法

働き方改革関連法では具体的に、時間外労働の上限規制の導入や年5日の年次有給休暇の取得、月60時間超の残業割増賃金率の引き上げなどが行われました。

中でも大きく話題になったのは、高度プロフェッショナル制度の導入でしょう。コンサルタントなど高度な専門知識を持った高年収の社員を対象に、労働時間の労働基準法に縛られない自由な働き方を認めたものですが、過酷な働き方につながるという懸念が浮上していました。

働き方改革関連法には産業医・産業保健機能の強化も含まれています。労働者に直接関わる法律だけでなく、労働者が働きやすい環境を整えることなど、間接的な部分も含んだ法改正が行われました。

働き方改革の推進の現状

国も法改正などにより推進している働き方改革ではありますが、企業における働き方改革の浸透度合いはどうなのでしょうか。

参考になりそうなのが、2021年に発表された東京都産業労働局の「働き方改革に関する実態調査」です。この調査は2020年秋ごろに行われたもので、都内にある962事業所と、その従業員1,024人が回答しました。

改正された働き方改革関連法の内容については、事業所の約90%が知っていたのは「時間外労働の上限規制」「年5日の年次有給休暇の確実な取得」で、そのほかの内容も過半数の事業所が知っていると回答しました。従業員も同様に、前述の2項目についての認知度は高いことがわかりました。

しかし、「時間外労働の上限規制」を受け、労働時間管理に変化があったと回答した従業員は49%、変化はなかったという回答は31%でした。また、年5日の年休の取得については「年5日取得できなかった労働者がいた」と30%の事業所が回答し、取得できなかった理由を 46% の従業員が「業務量が多いため」、人員不足のため(44%)、もしもに備えて有給休暇を残しているため(38%)と答えています(回答割合は四捨五入しています)。

働き方改革の推進状況としては、労働者に直接関わる働き方改革関連法改正内容については認識されているものの、働き方改革が進んだとは言いがたい状況ともいえるでしょう。

働き方改革における課題

働き方改革法案の改正もあり、働き方改革に取り組む企業はあるものの、何らかの障壁があり取り組みを実施できていない企業や、実施しているものの働き方改革につながらない企業があるようです。企業が働き方改革に取り組む上で何が課題になっているのか、企業側と従業員側に分けて洗い出してみましょう。

まず、企業側の課題で考えられることは、働き方改革に取り組むことによる生産性や売り上げの低下です。業務量を変えずに時間外労働を抑えようとすれば、企業の生産性は低下し、売上高も下がることは容易に想像できるでしょう。

また、従来の業務でいっぱいの状況のため、当然、新しい仕事を検討したり、取りかかったりするような時間も確保しづらくなるでしょう。企業の将来的な生産性にも影響を与えかねません。

加えて、働き方改革の社内規約変更の手間の発生も、働き方改革推進によって発生する課題の1つです。この社内規約の見直しを怠ると、行政指導を受ける可能性も出てきます。

このように、働き方改革を従来と同じ人員で取り組むのは難しいため、企業は新たな従業員を採用したり、外部事業者に委託したり、ITツールを導入したりする傾向にあります。しかし、人件費がかさんだり、外部委託費用や新しいツールの導入費が増したりするなど、コストアップは避けられません。

従業員側の課題としては、労働時間の見直しにより残業代が削減されることで給与額が減り、モチベーションの低下を招くことです。また、働き方改革により短時間で従来の業務量をこなさないとならないため、仕事が速い従業員に業務が集中し、プレッシャーの増大と負担の増加につながってしまいます。

働き方改革のメリット

従来の働き方を変える働き方改革は課題も多く、取り組むには労力やコストもかかるため、日常業務に追われていれば後回しにしがちです。しかし、働き方改革に取り組めば、さまざまな利益を享受できます。取り組むためのモチベーションにもなりますので、メリットについても押さえておきましょう。

優秀な人材を確保しやすくなる

働き方改革の最大のメリットは、企業が優秀な人材を確保して生産性の向上につながることです。多様なライフスタイルの従業員一人ひとりに合った労働環境や規則が用意できれば、子育てや介護などの避けられない事情を抱え、従来通りに働けなくなった従業員に働き続けてもらうことが可能です。

人材流出を防ぐ

優秀な労働力を確保し続ければ生産性アップだけでなく、それぞれのワークライフバランスが保たれ、人材の流出を回避することもできるでしょう。人材不足が叫ばれる中、優秀な人材を確保し続けられることは企業にとって非常に価値があることです。

企業のブランドイメージが向上する

さらに、生き生きと従業員が働いていれば、企業のブランドイメージが良くなることも期待できます。ITが普及した現在は、企業情報の収集や拡散がしやすいため、企業イメージは非常に大切です。売上アップだけでなく、取引先と良好な関係づくりや求人募集の点などにも影響が出てくるでしょう。

働き方改革推進のポイント

企業が働き方改革に取り組んでメリットを享受していくためには、どのように進めていけばよいでしょうか。働き方改革推進のポイントを3つ紹介します。

PDCAサイクルを回す

まず1つ目のポイントは、企業内の課題を把握し、施策を考え、スピーディーに実施することです。従業員へヒアリング調査などは、回数を重ねればさまざまなニーズを拾うことができますが、この点に時間を投じすぎると、調査をしただけで働き方改革につながりません。

ニーズを拾ったら施策に落とし込んですぐに実施し、見直しを行うという一連の流れを繰り返していくことで、企業に合った改革が進んでいくはずです。働き方改革もPDCAサイクルを回しながら促進していきましょう。

ITツールを活用する

2つ目のポイントは、ITツールの活用です。自社でITを活用していない場合はもちろん、活用している場合でも、ITを使用できないかという視点を持って業務を見直してみましょう。

メールや内線電話をコミュニケーションツールにしている場合には、チャットアプリやウェブ会議システムなどの導入で業務効率がアップするかもしれません。在宅勤務者がいる場合にはデータ共有サービスを活用し、社内外でも同じデータを扱えるようにしたり、PCの起動状態を記録するプレゼンス管理ツールやインターネットを利用した勤怠管理ツールを使ったりすることも有効でしょう。

研修や講習会で学ぶ機会をつくる

最後のポイントは、研修や講習会を行うことです。さまざまな知見を得ることで、より理想的な企業に近づける可能性が高まります。

時間管理や生産性向上をテーマにした研修や、IT研修などもおすすめです。社内で講師が見つからないようであれば、外部講師を検討するなどの方法もあります。

コロナ禍で働き方改革が促進

コロナ禍で、働き方改革は促進されてきた面があります。例えば、リモートワークなどは非対面や非接触で業務を進められるため、多くの企業で急速に活用されるようになりました。

ただし、従業員間のコミュニケーションの機会が減少し、企業への帰属意識が低下するなど、生じたものはメリットだけではありませんでした。

コロナ禍を考慮した働き方改革のポイントが厚生労働省のセミナー資料にまとめてありますので、チェックしておきましょう。

【働き方改革推進のポイント】
「働き方改革実践の手引き」を活用した働き方改革の推進手法

働き方改革の取り組み事例

企業が働き方改革に取り組む重要性を理解したら、他社は具体的にどのように取り組んでいるかが気になってくるはずです。働き方改革に取り組む3社の事例を紹介しますので、自社で取り組むとどうなるのか、シミュレーションをしてみましょう。

豊田鉃工株式会社様

トヨタ自動車だけでなく、世界中の自動車関連企業に自動車用鋼板をはじめ、樹脂部品や電子部品などを提供する同社。1946年に設立された歴史ある企業であることから紙を使った伝達が8割を占め、海外拠点で現地システムを稼働させているからこそデータを一元管理できない課題を抱えていました。

課題解決のため、製造業向けPLM(PLM:Product Lifecycle Management)システムを導入したことで、製品の企画や生産、販売、廃棄まで管理し、業務効率アップを図ることができました。

具体的には、各部門情報の見える化ができたほか、CADデータが必要なときすぐに取り出せるようにしたり、ペーパーレス化を実現させたりすることができました。さらに、国内と同じシステムを活用して海外拠点データの一元管理も可能にしました。

清水建設株式会社様

大手建設会社として名をはせている同社ですが、建設業だけでなく、新エネルギーや海洋・宇宙開発などの新事業へも進出しています。中核事業である建設業の営業部門にて、顧客管理マスターデータの刷新に取り組み、人力によるデータの品質低下を防げるようになりました。

同社ではマスターデータで建築物や建物用途、得意先名、業種、支払先金融機関、住所などをマスターとして管理し、さまざまな業務システムで活用してきました。マスターデータの管理システムを導入することで、既存の顧客だけでなく見込み顧客の情報も管理できるようになり、事業の根幹となるデータをより有益なものに変化させることができました。

第一三共エスファ株式会社様

ジェネリック医薬品メーカーである同社は、膨大な医薬品包材の管理にかかる負担を解消しようと、クラウド型の製品情報管理サービスを導入しました。製品の情報だけでなく、画像データも管理できることがメリットであり、名称だけでなく画像でもデータを検索できるようになりました。

包材デザインの設計担当者が資料として簡単に包材デザインをデータで引き出せるようになり、ペーパーレス化を実現し、さらにクラウド型サービスのためリモートワークも可能にしました。

まとめ

従来業務をこなしながら働き方改革に取り組むには、社内の体制を整えたりコストをかけたりしないと難しいことがわかりました。しかし、得られるメリットはとても大きく、試みる価値は非常に高いといえます。まずは、小さなことから改革を始めてみましょう。

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