近年、DXが多くの業界で加速しています。貿易業界もその例外ではなく、DXの導入により、業務の効率化やコスト削減が進んでいます。
貿易の仕事は、以前から膨大な書類と手続きが伴うものでした。一つの商品を他国から購入し日本に輸入する際でも、多くの会社と人々が関わっています。外国での取引にはさまざまなリスクが伴うため、多くのルールが決められ、たくさんの業者が間に入り、膨大な紙が使用されてきました。
このような背景を踏まえて、DXの導入がどのように貿易業務を変革しているかを理解することが重要です。本記事では、貿易DXの現状と課題、貿易DX推進の具体的なメリットについて詳しく解説します。今後の業務改善に役立てられるよう、貿易DXの理解を深めましょう。
貿易DX とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを革新し、企業全体の効率や顧客体験を向上させる取り組みです。これにより、企業は競争力を高め、新たな価値を創出することができます。
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貿易DXとは、デジタル技術を活用して貿易業務を効率化し、付加価値を創出する取り組みです。これにより、従来の紙ベースの手続きや人手による作業が減少し、より迅速かつ正確な貿易業務の遂行が可能になります。貿易DXの導入は、企業が国際競争力を維持するため、また、さらに高めるための重要な手段です。
貿易DXの具体的な取り組みとしては、ブロックチェーン技術を活用した貿易書類の管理や、AIによる需要予測などが挙げられます。これにより、貿易業務の透明性と効率性がさらに向上し、企業は迅速な意思決定とリスク管理が可能となるでしょう。
貿易DXの現状
国際貿易は、DXが遅れている業界の一つとされています。貿易業務は依然としてアナログな方法に依存しており、紙の書類やPDFを使った情報交換が一般的です。これにより、安全なデータ共有が難しく、手作業で行わなければならない業務も多く残っています。新型コロナウイルスの世界的な流行や労働力不足の影響を受け、貿易業界でもDXの必要性が高まっています。
経済産業省では、「NACCS」というシステムを活用した貿易手続きの電子化が進められていますが、利用者にとって使いやすいシステムにするためにはまだ改善が必要です。さらに、電子化されたデータの活用も重要な課題であり、申請支援チャットボットの導入や業務効率化が検討されています。
このように、貿易DXは進展しているものの、多くの課題が残されているのが現状です。デジタル化の推進により、貿易業務の効率化やユーザーの利便性向上を目指し、さらなる取り組みが求められています。
DXが進まない理由
貿易業界でDXが進展しない理由として、主に2つの要因があります。
まず、貿易業界には荷主や取引相手だけでなく、倉庫管理者や運送業者、税関など多くの人が関わっており、それぞれに異なる立場や役割があります。このため、情報の安全な共有が難しいのです。
さらに、貿易業界にはデータよりも実物に信頼を置くという伝統的な慣習が根強く残っており、迅速なデジタル化の障壁となっています。
これらの要因が組み合わさることで、貿易業界におけるDXは進展しにくくなっています。情報の安全性を確保しつつ、業界全体でデジタル化を推進するための取り組みが必要です。
貿易業務で解決すべき課題
貿易業務には多くの課題がありますが、その中でも大きな問題となっているのが非効率なコミュニケーションです。貿易担当者は多くの関係者と連絡を取り合う必要があり、そのため情報の共有に時間と手間がかかります。さらに、メールや電話、FAXなど、多様なコミュニケーション手段を用いることも、効率を低下させる要因です。このような状況では、情報の円滑なやり取りや迅速な対応が難しくなります。
加えて、貿易業務が個人に依存しやすく、担当者にかかる負担が大きいことや、業務の引継ぎが難しいという課題もあります。輸送の進捗状況を確認する際にも、貿易担当者を介さなければならないため、全体の効率が悪くなってしまうのです。
他にも、国や地域ごとに異なる書類や規制に対応しなければならないため、書類管理にも多くの時間がかかることが課題となっています。
貿易DXで活用できるツール
アナログな貿易業務の課題を解決すべく、完全電子化を実現するツール開発が各国で進められています。ここでは代表的なツールを3つ紹介します。
TradeWaltz(トレードワルツ)
「TradeWaltz(トレードワルツ)」とは、ブロックチェーン技術を活用し、貿易業務の完全電子化を目指す貿易情報連携プラットフォームです。
輸出・輸入業者と船会社、銀行、保険会社など、多岐にわたるステークホルダーを取りまとめ、産業横断的なコミュニケーションを可能とすることで、貿易業務の課題を解決し、貿易DXに大きく寄与します。データ改ざんや不正の防止に役立つブロックチェーン技術を使用し、安全な取引が行えることも特徴です。
今後は海外のプラットフォームとも接続し、世界中をつなぐ貿易取引のハブ役となることが期待されています。
株式会社トレードワルツ「TradeWaltz」
Forward ONE(フォワード ワン)
「Forward ONE(フォワード ワン)」は、物流事業を幅広く展開する株式会社日新が手がけているデジタルフォワーディングサービスです。デジタルフォワーディングとは、運送費の見積もりから貨物のトラッキングまで、貿易に関する業務を独自のシステムで一元管理を行うフォワーディングのことです。
「Forward ONE(フォワード ワン)」では、国際物流費を即検索やスレッド機能などにより、貿易業務にかかる負担軽減を実現できます。
2024年6月には「作業進捗管理・本船動静トラッキング機能」の提供が開始され、今後も先進機能の提供が予定されています。
株式会社日新「Forward ONE」
Yusen Vantage Focus(ユーセン バンテージ フォーカス )
日本の大手国際航空・海上貨物フォワーダー、郵船ロジスティクス株式会社が手がける「Yusen Vantage Focus(ユーセン バンテージ フォーカス )」は、出荷プロセスの効率化を実現できるデジタルフォワーディングサービスです。
2024年4月には、輸送状況だけではなく、出荷書類も一元管理できるシームレスなプラットフォーム「Yusen Vantage Focus – Book」が公開されました(2024年7月現在、日本発の輸送は未対応)。オンライン上で瞬時に見積もりを提示する「Yusen Vantage Focus – Quote」と、リアルタイムに輸送状況を確認できる「Yusen Vantage Focus – Track」と合わせることで、複雑な国際輸送の出荷プロセスの省力化が可能となります。
郵船ロジスティクス株式会社「Yusen Vantage Focus 」
貿易DX推進のメリット
貿易DXを推進することで得られるメリットは多岐にわたります。ここでは4つのメリットについて具体的にみていきましょう。
処理業務に関する業務量削減
国際貿易においては、サプライチェーンが複雑化し、多くの関係者との連絡が頻繁に必要になります。このため、書類やスケジュールといった情報を効率的に整理し、管理および共有することが困難でした。
そこで、クラウド上のプラットフォームを活用してデータを一元管理すれば、すべての関係者が容易にアクセスできるようになります。結果として、貿易業務の効率が大幅に向上し、工数の削減が期待できるでしょう。
情報漏れや伝達ミス等の人的ミスの削減
従来の貿易業務では、貿易担当者が各関係者との連絡の中心となっていました。この方法では、連絡ミスや情報の行き違いが発生しやすく、業務の円滑な進行を妨げることが多々ありました。
貿易業務のDX推進を行うことで、クラウド上のプラットフォームを活用して関係者を結びつければ、情報を一元的に管理・共有することが可能になります。この一元的な情報共有により、コミュニケーションの頻度を減らすことができ、結果として報告漏れや伝達ミス等の人的ミスを大幅に削減できます。これにより、業務の精度が向上し、全体の効率を向上させることができるでしょう。
運賃の見積・比較が簡単になる
輸送コストは貿易を行う際に重要となる要素ですが、どの業者に依頼すべきか、適正価格がわからずに悩む人は多いでしょう。このような悩みを解決するためには、運賃比較サイトを利用するのがおすすめです。これらのサイトでは、出発地や目的地、輸送方法などで絞り込んで検索することで、最新の運賃を簡単に比較できます。これにより、輸送業者の選定にかかる時間や手間を大幅に削減することが可能です。
貿易DXは、こうしたプロセスをデジタル化し、効率化を図ることで、業務スピードを向上させ、コスト削減を実現します。
最適な輸送手段の選択によるコスト削減
輸送手段の最適化は、DX推進による大きなメリットの1つです。DXを推進することで、長距離輸送にはコストの低い海上輸送を、短距離輸送には迅速な陸上輸送を選択するなど、輸送手段を最適に組み合わせることが可能になります。また、貨物の統合や分割を適切に行い、割引を適用したり、小口貨物として輸送したりすることで、コスト削減の工夫も容易になります。
さらに、クラウド上のシステムを導入すると、リアルタイムで輸送状況を追跡し、効率的なルート変更やスケジュール調整が可能です。これにより、無駄なコストを削減し、業務効率の向上が期待できるでしょう。
貿易DX推進による今後の働き方
貿易DXの推進により、働き方が大きく変わります。デジタルツールを活用することでオフィスに出勤する必要はなくなり、場所を選ばずに仕事ができるようになります。リモートワークの普及は、時間や場所に縛られない柔軟な働き方を可能にし、業務の効率化も実現するでしょう。
この変化は、地方に住む人や子育て中の親にとっても大きなメリットがあります。特に女性にとって、出産や育児といったライフイベントを抱えながら、仕事を継続できるかどうかは重要な問題です。柔軟な働き方ができれば、場所や時間に縛られることなく、仕事と家庭の両立がしやすくなるでしょう。
また、貿易業界は深刻な人材不足に直面しており、優秀な人材の確保が急務となっています。柔軟な働き方を導入することで、優秀な人材にとって魅力的な職場となり、企業の競争力強化にもつながるでしょう。地方在住者や家庭の事情を抱える人にとっても、貿易業務に携わる機会が広がり、業界全体が活性化していくことが期待されます。
まとめ
貿易DXの導入により、従来、膨大な時間と労力を要していた書類作業や手続きが効率化され、大幅なコスト削減と国際競争力の向上が期待できます。
その一方で、情報共有の難しさや、慣習的な業務フローからの脱却に対する抵抗など、いくつかの課題も存在します。これらの課題を克服し、貿易DXを推進するためには、デジタルツールの積極的な活用が不可欠です。
デジタルツールを活用することで、業務効率の向上や人的ミスの削減が実現し、貿易業務の全体的な改善が期待できるでしょう。
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