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トレーサビリティは「製品がいつ・どこで・だれによって作られたか」を明らかにするためのシステムで、品質を管理するうえで欠かせません。安全に対する意識の高まる近年では、さらに重要度が増しており、導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。当記事ではこの「トレーサビリティ」について詳しく解説します。

トレーサビリティとは

トレーサビリティ(traceability)は「trace(追跡)」と「ability(能力)」を組み合わせてつくられた言葉で、「追跡可能性」を意味しています。すなわち、製品及びその原材料や部品の生産段階から、消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態にしておくことを指します。

トレーサビリティは流通に関わっている業界全体で使われている言葉です。さまざまな業界で使用されており、業界により少し定義が異なる場合もあるようです。

トレースフォワードとトレースバック

トレーサビリティには「トレースフォワード」と「トレースバック」という2つの考え方があります。

トレースフォワードは、製品の時間経過に沿って追跡することを指します。例えば、製造工場で何らかの不備が判明した場合、出荷した製品の経路を確認するのがトレースフォワードです。

一方、製品の時系列をさかのぼって記録をたどることをトレースバックといいます。出荷した製品に問題が発生した場合、トレースバックにより履歴をさかのぼることで、ロットや工程が特定可能なのです。

トレーサビリティを支えるブロックチェーン

ブロックチェーンとは、分散型ネットワークに暗号技術を組み合わせて複数のコンピュータでデータを同期し記録する方法で、記録の改ざん防止に有効です。

従来のトレーサビリティシステムでは、数多くの製品履歴を一貫して管理することは困難でした。また、紙で管理すると、取引履歴の改ざんが容易という課題もあったのです。

そんななか、トレーサビリティにブロックチェーンを活用することで、容易かつ迅速な対応が可能になり、情報の改ざんも防止できるようになりました。

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2種類のトレーサビリティ

トレーサビリティは大きく分けると2種類あり、「チェーントレーサビリティ」と「内部トレーサビリティ」と呼ばれています。この2種類のトレーサビリティについて詳しく解説します。

チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティは、原材料や部品の生産から加工、流通、販売までの製品の移動が把握できる状態のことをいいます。一般的に使われている「トレーサビリティ」は、この「チェーントレーサビリティ」のことです。

チェーントレーサビリティにより、生産者は自分がつくったものがどこで加工され、どこで消費されたかを追跡することが可能になります。また消費者は生産者や生産場所を確認できるようになり、安心して製品を購入できます。

内部トレーサビリティ

内部トレーサビリティとは、特定の工場や企業など、限定した範囲での原材料や製品の移動を把握するトレーサビリティのことです。

例えば自動車をつくる工場の場合、パーツの仕入れ・組み立て・検品・納品までを一企業のなかで追跡します。内部トレーサビリティの構築によって、作業の効率化や問題発生時の対処が容易になり、製品の品質向上にもつながるのです。

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トレーサビリティが必要となった背景

製品に不具合などがあった場合、原因の特定や有効な対策を迅速に行うことが非常に重要です。その際に必要となるのがトレーサビリティです。

問題発生時に対応が遅かったり適切でなかったりした場合、消費者や取引先からの信頼を失ってしまいます。また場合によっては、企業が存続できない事態に陥ってしまう可能性もあるでしょう。

こうしたことを防ぐためにもトレーサビリティは、とても重要なシステムなのです。トレーサビリティの仕組みをしっかりと構築しておくことで、消費者や取引先からより信頼される企業となることができるでしょう。

トレーサビリティを導入するメリット

トレーサビリティを導入することによって、さまざまなメリットを得ることができます。今回は、そのなかから代表的なメリットを3つご紹介します。

1.リスク管理の強化

トレーサビリティの導入により流通の記録を正確に管理できるため、何か問題が起きた際でも原因の特定が容易になります。リスク管理を強化して迅速に原因が特定できると問題を最小限にとどめることも可能です。スムーズな対応ができるようになるため、手間や時間がかからずコストメリットもあるでしょう。

2.企業イメージの向上

消費者が購入するものを選ぶ際、「安心」で「安全」な製品であることはとても重要なポイントです。

トレーサビリティを導入し、リスク管理のあり方を明確にすることは、安心・安全に対して配慮をしている証明となります。そのため、企業イメージの向上につながり、信頼できる企業の製品は消費者に安心感を与えることができるでしょう。

3.顧客管理の効率化

トレーサビリティでは、納入先や顧客の情報もまとめて管理します。そのため、基本情報や購入履歴といったデータを活用することで、受注傾向や顧客の好みを把握しやすくなります。結果として、顧客管理の効率化につながるでしょう。

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トレーサビリティの具体例

トレーサビリティを導入する企業は増加しています。食品だけでなく、自動車や家電などさまざまな業界でトレーサビリティが注目されています。

実際にトレーサビリティを導入している企業の一部をご紹介します。

セブン&アイ

セブン&アイグループでは生産地までのトレーサビリティ確保などを盛り込んだ方針を定めています。

例えば、セブン-イレブン・ジャパンでは、約180の工場の情報をすべてデータベースで管理できる体制を整えており、その結果、商品の原材料産地から店頭に並ぶまでの生産履歴の管理が可能となっています。

<セブン&アイ>
セブン&アイグループの重点課題(株式会社セブン&アイHLDGS.)

GESHARY COFFEE

日比谷にあるカフェ「GESHARY COFFEE」では農園からカップまでのすべての段階で品質管理を徹底しています。

コーヒーの最高品種である「ゲイシャ」の魅力を最大限に引き出せるよう、一貫した体制と工程を構築しているのです。

<GESHARY COFFEE>
Farm to Cup(GESHARY COFFEE)

EARTHRISE

ジュエリー素材の生産から流通までの透明化は、今まで不可能といわれてきました。そんななか「EARTHRISE」は日本で初めてこの透明化に取り組んだジュエリーブランドです。

「EARTHRISE」が現在使用しているジュエリー素材の95%は、トレーサビリティを確保しています。

<EARTHRISE>
エシカルジュエラーであるために、大切にしている10のこと。(EARTHRISE)

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トレーサビリティ導入における課題

トレーサビリティは、メリットも多く、リスク管理をするうえで大変有効なシステムです。しかしながら、まだ課題があるのも現状です。

チェーントレーサビリティの場合

チェーントレーサビリティの場合、企業間の連携が大きな課題となります。生産者から消費者までと追跡の範囲が広いチェーントレーサビリティでは、企業ごとの価値観や認識のズレがないよう、あらかじめすり合わせをしておくことが重要です。

内部トレーサビリティの場合

内部トレーサビリティの場合は、自社内で全体のリスクを見渡す必要があるため、企業内での連携が課題となります。一般的にはトップダウンで行われる内部トレーサビリティですが、そのようなトレーサビリティは、実際の現場では適応しづらい危険性があるのです。

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まとめ

トレーサビリティはリスクマネジメントを可能にするだけでなく、作業の効率化や顧客からの信頼獲得にもつながる大変有用なシステムです。今後さらにトレーサビリティを導入する企業が増え、活用される分野が広がることが期待されます。トレーサビリティのさらなる普及によって、私たちがより安心して暮らすことのできる社会になるでしょう。

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