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電波を使って、専用のタグに記録された情報を読み取るRFID。すでにさまざまな分野で活用され、人々の生活に欠かせないものになりつつあります。本記事ではRFIDの仕組みや特長を解説しながら、身近な利用例について詳しくご紹介していきます。

RFIDとは

RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波を用いてICタグやRFカード(RFタグ)に記憶された情報を読み書きできる自動認識システムです。離れた位置からでもRFタグを一括で読み取れるため、段ボールに入っている商品も外側から検品、在庫管理ができます。Suica(JR東日本)などの交通系ICカード、スマートキー、ETCカードなどもRFIDを活用した技術で、人々の快適な生活に欠かせない技術といえるでしょう。みなさんも商品の入ったカゴを所定の位置に置くだけで、購入総額が表示されるセルフレジを利用したこともあるのではないでしょうか。

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RFIDの導入推進状況

RFIDは小売や物流、医療、製造とさまざまな業界で活用されている技術です。経済産業省ではRFIDを普及させるために、大手コンビニ5社と日本チェーンドラッグストア協会へRFタグの利用合意を取り付けました。

コンビニ電子タグ1000億枚宣言

経済産業省は2017年4月に「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定し、2025年までにコンビニ大手5社が取り扱っている全商品にRFタグを付けることで合意しました。現在は商品をバーコードで管理し、消費期限間近の商品を店員が確認・管理していますが、RFIDを活用すれば自動で消費期限・在庫の管理が実現できます。消費期限間近の商品は、スマホアプリによるポイント付与や値引きを行うことで、消費者への購入を促すことも可能です。RFIDの導入は少子高齢化による人手不足解消だけでなく、食品ロス削減も同時に実現できるメリットがあります。

ドラッグストアスマート化宣言

経済産業省と日本チェーンドラッグストア協会は、2025年までにドラッグストアで取り扱う全商品にRFタグを取り付ける「ドラッグストア スマート化宣言」を2018年3月に策定しました。商品配送時にRFタグを活用することで、入出荷、検品の効率化と誤配送防止効果が期待できます。また、RFIDリーダーを搭載したスマートシェルフを設置すれば、取り扱い商品の棚卸しも自動化が可能に。レジ業務もRFID対応セルフレジの設置で、待ち時間短縮と高速決済が実現します。さらに高級化粧品や香水、医薬品などの万引き防止効果もあり、コンビニ同様に人手不足解消や単純作業の効率化が見込めるでしょう。

RFIDの基本構成要素と仕組み

RFIDは大きく分けて「RFタグ」「RFIDリーダー」「データベース(ソフトウェア・システム)」の3つの要素で構成されています。

RFタグ

RFタグは、インレットと呼ばれるICチップとアンテナを組み合わせたもので構成されています。インレットはそのままで使用されることはなく、さまざまな保護素材を使ってタグやカード、シール状に加工されることが一般的です。また、ICタグ、電子タグ、無線タグ、RFIDタグなどたくさんの呼び名がありますが、すべて同じものを指しています。

RFIDリーダー

RFIDリーダーはRFタグを読み取る機械で、手軽に扱えるハンディタイプから、所定の位置に設置するゲートタイプ、据え置きタイプがあります。小売店のセルフレジで活用されているRFIDリーダーは、デスクトップ型と呼ばれる据え置きタイプで身近なリーダーと言えるでしょう。

データベース(ソフトウェア・システム)

RFIDリーダーで読み取った情報を上位システムに転送することで、さまざまな商品の管理、作業の効率化ができます。一般的に在庫管理システムやPOSレジなどを利用している企業が多いですが、Excelデータでも管理可能です。Excelであれば手軽に導入ができるため、既存の業務ルーティンにRFID技術を組み込むことも簡単でしょう。

RFIDを読み取る流れ

RFIDは、RFタグに記録された情報をRFIDライターで読み取り、処理システムに情報を送信する仕組みです。RFIDを読み取る流れを具体的にまとめると、以下のような流れになります。

1.RFIDリーダーからRFタグに向けて電波を送信
2.RFタグのアンテナが電波を受信し、内部のICチップが起動
3.ICチップ内の情報を信号化し、RFタグのアンテナから送信
4.RFIDリーダーのアンテナで、RFタグからの情報を受信
5.RFIDリーダーの処理システムを介して、ソフトやアプリ上でデータ処理を行う

RFIDはこの一連の流れを1秒間に何度も実行します。リーダーで読み取ったデータは、在庫管理システムやPOSレジのような処理システムに転送することで、データ処理が可能です。

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RFIDのタグの種類

RFタグには「パッシブ型」「アクティブ型」「セミアクティブ型」の3種類に分類されます。違いはバッテリーの有無でそれぞれ用途や価格、通信距離が異なります。

パッシブ型

現在、最も普及しているRFタグです。パッシブ型はRFIDリーダーからの電波をエネルギー源として動作するため、バッテリーを内蔵する必要がありません。手軽かつ安価に導入が可能なことから、アパレル企業や物流企業など、多くの商品を取り扱う小売・物流業界の商品管理で多く活用されています。バッテリーを内蔵しているアクティブ型と比較すると通信距離は短くなり、通信可能距離は数センチほどです。小型でメンテナンスフリーなのが特長で、交通系ICカードに使用されているのもパッシブ型です。

アクティブ型

アクティブ型は、1〜100メートルと長距離通信を可能にしたバッテリー内蔵型のRFタグです。アクティブ型は、自己通信型と待受通信型の2種類に分かれていて、用途によってバッテリーの消耗を抑えています。比較的大規模な倉庫で活用されることが多く、人や物、動くものを対象に使用することが多いです。アクティブ型に温度センサーを内蔵すれば、鮮度管理も可能となります。長距離通信が可能というメリットがある一方で、バッテリーの管理が必要で、タグサイズが大型なため単価が高くなるデメリットもあります。

セミアクティブ型

セミアクティブ型は、パッシブ型とアクティブ型両方の機能を持つRFタグです。通常は、パッシブ型として動作し、RFIDリーダーからの通信を受信したときにアクティブ型として動作します。そのため、アクティブ型よりもバッテリーの消費量が少なく、パッシブ型よりも通信距離が長くなるメリットがあります。必要なときだけバッテリー駆動するので、誤検知が少ないのも特長です。現在スマートメーターや河川の水位管理、市民マラソンや自動車レースのタイム計測に活用されています。

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RFIDの特長

RFIDには多くのメリットがあり、さまざまな場面で活躍の幅を広げています。しかし、導入コストが高くなりがちで、金属や水の影響を受けるデメリットもあります。ここでRFIDの特長を簡単に確認しておきましょう。

メリットデメリット
・非接触通信で、大規模倉庫や段ボールの中でも情報の読み込みが可能。
・電波が届く範囲であれば、複数同時に読み取り可能。
・情報の書き込みができるため、入退場記録など厳密な情報管理が可能。
・小型で耐久性が高く、恒久的に使用できる第三者による複製が困難なため、高いセキュリティ性が得られる。
・導入コストが高い。
・通信環境によっては、感知できない可能性がある。
・金属や水の影響を受けやすく、読み取りエラーが起こる可能性がある。

また、使用する周波数帯によってもRFIDの個性は大きく変わります。下記は、国内で使用されている4つの帯域ごとに特長をまとめたものです。

LF帯
Low Frequency
HF帯
High Frequency
UHF帯
Ultra High Frequency
マイクロ波帯
通信方式電磁誘導電波
周波数~135KHz13.56MHz433MHz
860~960MHz
2.45GHz
通信速度比遅いやや遅い速い
特長環境に
左右されにくい
水の影響を
受けにくい
通信距離が長いアンテナが小型
通信距離~10cm~10cm~数十m~2m
用途スマートキー
など
電子マネー、
交通系ICカードなど
小売業の商品管理・
在庫管理、棚卸業務など
製造ラインの
個体識別や
位置管理など

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バーコード・QRコードとの違い

RFIDは、バーコード・QRコードと比較してメリットが多く、バーコードのように接触する必要がありません。バーコードは印刷物のため、はっきり確認できないと情報が読み取れず、汚れなどに弱いデメリットがあります。一方、RFIDは電波が届く範囲であれば、視認できない場所であっても情報の読み込みが可能です。また、バーコードと違い、RFIDは情報の書き換えもできます。

RFIDバーコード
データ書き換え×
同時読み込み×
読み取り距離数メートル〜数十メートル以内
(電波の届く範囲であれば可能)
数十センチ以内
(接近が必要)
遮蔽時の認識○(視認できなくても可能)×
汚れの影響×
コスト導入時が高い(イニシャルコスト)安いが人件費が必要
(ランニングコスト)
保有情報量最大数1,000文字バーコード:約20文字
QRコード:7,089文字

RFIDの利用例

RFIDは日常のさまざまな場面で活用されていて、すでに私たちの生活に欠かせない技術となっています。ここで身近なRFIDの利用例をご紹介します。

  • 在庫管理・レジ業務の効率化
    大手アパレル企業を筆頭に、さまざまな業界で商品にRFタグを取り付け、セルフレジや在庫管理など業務の効率化に成功しています。
  • 学校や図書館の備品・図書管理
    机や椅子、図書にシール状のRFタグを貼り付け、遊休資産を活用したり、メンテナンス管理に活用したり、公共施設でもRFID技術は利用されています。
  • ETCカード
    自動車内に設置したETC車載器へETCカードを装着し、料金所を通ると無線決済されます。海外ではETCカードに代わり、シール状のRFタグを貼り付けるタイプも普及してきました。

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まとめ

ビジネスだけでなく、日常のさまざまな場面で活用されているRFIDは、今後ますます普及するであろう技術です。サプライチェーンのスマート化を国も後押ししているので、コンビニやドラッグストア以外にも活用されていくでしょう。普段何気なく利用しているサービスにも、実はRFIDが活用されているかもしれませんね。

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