コロナ禍を経て、ECサイトでの買い物が定着し、物流の需要は高まっています。一方で、物価高騰や人材不足などのあおりを受け、物流コストは増加傾向にあります。
物流コストを削減するためには、どのような対策を行えば良いのでしょうか。
本記事では、厳しい経営環境下でも、物流コストを削減するためのさまざまな方法を紹介します。物流コスト削減を考えている方は、ヒントを探してみましょう。
物流コストの種類
物流コストとは、物流に関するすべての費用のことを指します。物流行程の範囲は幅広いため、物流コストの内訳は企業によって異なるでしょう。
コスト削減のためには、まずは物流コストの範囲を的確に把握しておく必要があります。
ここでは、支払物流コストと社内物流コスト、2種類の物流コストについて確認してみましょう。
支払い物流コスト
物流コストのうち、社外の事業者などに支払う費用を、支払い物流コストといいます。具体的には、陸送、鉄道、航空便、船便などを利用した送料や、荷物を保管する倉庫の使用料などです。
支払い物流コストに含まれる費用は幅広く、商品の配送・保管費用、梱包作業や発送管理を担うロジスティックス業者への委託費、商品の包装業務を委託した際の費用なども含みます。
社内物流コスト
自社内に発生する物流関連のコストを、社内物流コストといいます。具体的には、社内配送費や社内保管費、社内梱包費などです。
また、配送に使用するトラックの維持費や燃料費、駐車料金、ドライバーの人件費なども、社内物流コストに含めます。
社内物流コストの多くは、会計上ほかの費用に仕分けられている場合も多く、項目をすべて把握し、正確に算出することは簡単ではありません。
物流コスト上昇の理由
物価高の影響により、さまざまなものの価格が上がっています。物流コストも例外ではありません。しかし、物流コストが上昇しているのは、物価高だけが理由ではありません。
ここでは、物流コストが上昇している主な3つの理由を解説します。
働き手不足
働き手不足は、物流コスト上昇の理由の一つです。
日本における少子高齢化の問題は、年々深刻化しています。生産年齢人口が減少傾向にあり、すべての産業において人手不足の状態です。
さらに、物流業界では、長時間労働の是正のため、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が設けられました。これは「2024年問題」と呼ばれ、モノを運べなくなる可能性が懸念されています。モノが運べなくなると、輸送コストは上がり、必然的に物流コストも上昇してしまいます。
物流需要の増加
新型コロナウイルス感染症が拡大したことにより、感染症予防の観点から対面販売を避ける人が増えました。インターネット通販サイトやフリマサイトなどを使用する人が増え、物流の需要は増加しています。
物流需要は増加しているのにもかかわらず、働き手は不足しています。物流需要に対して、物流供給が追いついていないことは、物流コスト上昇の原因と言えるでしょう。
配送業務の負荷増加
物流需要が増加するとともに、物流に対するニーズは多様化しています。時間指定や再配達制度、細分化されたサイズ・料金体系など、さまざまなニーズに対応するためには、人手が必要です。
しかし、働き手が不足している現在、人材確保のために高水準の労働条件を提示する必要があり、物流コスト上昇は避けられない状況です。
物流コスト削減が難しい理由
物流コストを削減しようとしても、「思うようにコストを削減できない」という課題を持つ企業は多いでしょう。
物流コスト削減が難しい理由として、その内訳が不明瞭であることが挙げられます。物流コスト削減を実現するためにも、なぜコスト削減が難しいのかを理解しておく必要があります。
サプライチェーンが複雑
サプライチェーンが複雑であることは、物流コスト削減が難しい理由の一つです。
商品の供給には、原材料の調達から製造、保管場所への輸送、消費者などへの配送など、あらゆる場面で物流がかかわっています。物流コスト削減を実現するためには、各段階において、効率化を図るための改善が必要です。
サプライチェーンが複雑であればあるほど、データは散在しています。状況を把握するだけでも時間がかかるため、物流コストの削減が難しくなる要因となっています。
燃料価格の変動
陸送や海上輸送、航空輸送など、どの物流ルートを選択しても、燃料費は切っても切り離せません。燃料費は、世界情勢などの影響を受けやすく、企業が単独でコスト削減に向けて取り組んでも成果が出にくい状況です。
物流コストの大きな割合を占める燃料費の削減が難しいことは、物流コストの削減も困難になる理由と言えます。
在庫管理の最適化が困難
適正量の在庫管理ができていれば、在庫管理をする手間も、在庫を保管する場所にかかるコストも少なくて済みます。しかし、社会情勢の変化や予測の誤りなども生じるため、在庫管理の最適化が困難な場合もあり、物流コスト削減が難しい理由の一つとなっています。
顧客の要求の多様化
物流需要の増加に伴い、顧客の要求は多様化しています。そのニーズに応じようとすれば、多くの在庫を抱えたり、手間がかかったりなど、物流コストはおのずと上昇してしまいます。顧客の満足度を維持しながら、物流コストを削減していくことは非常に困難です。
物流コストの7つの削減方法
物流コストの削減が難しいとはいえ、何もしなければ物流コストは上昇するばかりで、企業にとっては大きな負担となります。
企業が事業を継続するためには、積極的に物流コスト削減に取り組むことが必要です。ここでは、物流コストを削減する7つの方法を紹介します。自社の物流をイメージしながら確認してみましょう。
物流拠点の集約
物流コストを削減する方法として、複数の物流拠点を集約させることを検討してみましょう。
物流拠点が多ければ多いほど、配送先までの距離が近くなり、燃料費を抑えることができます。その反面、物流拠点の数だけ、家賃や維持費、スタッフの人件費や交通費などの物流コストがかさんでしまいます。
近年は、国の軽貨物自動車事業に対する規制緩和や、配送アプリなどの登場により、より柔軟な配送が可能となってきています。物流拠点を集約することで、物流コストの削減が期待できるでしょう。
人件費・管理費の見直し
人件費・管理費の見直しは、物流コストの削減に有効です。物流に関わるスタッフ数や給料は適正か、定期的にチェックしてみましょう。
人材不足に陥っている状況下では、人件費の見直しは難しいかもしれません。しかし、ロボットやAI技術を用いることで、自動化できる業務もあります。自動化を導入することで、人件費を削減でき、結果的に物流コストを削減できます。
業務フローの可視化と改善
物流コストの削減するためには、業務フローの可視化と改善にも取り組みましょう。
例えば、運転状況を可視化するシステムを導入すれば、勤務状況を「見える化」でき、勤務形態や業務効率の課題が明確になります。明確となった課題に対して、解決方法を見いだせれば、物流コストの削減にもつながっていくでしょう。
サプライヤーへの価格交渉
物流コストを削減するため、サプライヤーへの価格交渉を行うことも有効です。
物流需要が増加している中、人手不足の状態でもあり、一方的な価格交渉に応じてくれるサプライヤーは少ないかもしれません。しかし、倉庫を短期契約で借りているのなら、長期契約に変更することを条件に値引きを依頼するなど、サプライヤーにもメリットがある条件を示すことができれば、交渉が成立する可能性が高まります。
価格交渉を行ったことがきっかけで、サプライヤー側から物流コスト削減のための提案もあるかもしれません。
物流システムを導入する
物流システムを導入することで、物流コストの削減が実現するケースもあります。
長年の経験と勘で培われてきた自社の物流であっても、物流システムによって業務フローを可視化することで、これまで見えていなかったムリ・ムダ・ムラを発見できる可能性があります。その課題を一つずつ解消していけば、物流コストの削減に近づくはずです。
物流業界で導入できるシステムは、多種多様です。商品の在庫や出入庫、図面データ、製造番号の管理などを一元的に管理できる在庫管理システムや、商品の輸送状況をリアルタイムにチェックできる貿易管理システムなど、自社の業務にあった物流システムを選定しましょう。
3PL(4PL)を利用する
物流コストの削減を実現する選択肢の一つとして、専門業者に外注することも検討しましょう。
物流業界では、物流システムの構築からオペレーションまでをアウトソーシングする「3PL(Third Party Logistics:サード・パーティー・ロジスティクス))」が一般的です。
物流業務の専門家である3PLに業務を任せることで、業務効率向上を期待でき、物流コストの削減が期待できます。これまで物流業務に割いていた時間や人材を、主要業務に回せることもメリットです。
近年は、3PLに物流コンサルティングの視点を加えた「4PL(Fourth-Party Logistics:フォース・パーティ・ロジスティクス)」にも注目が集まっています。
在庫管理を最適化
在庫管理を最適化することは、物流コストの削減に有効な方法です。
過剰在庫を抱えている場合、必要以上の人件費や管理費などが発生します。在庫を最小限に抑えられれば、これらにかかっていたコストは大幅に削減できます。
在庫管理を最適化するには、在庫管理システムの活用がおすすめです。過去の在庫データを蓄積し、データを分析することで、在庫を最適な状態で維持できるようになります。過剰在庫にかかる無駄な物流コストが削減でき、利益の最大化が目指せます。
まとめ
働き手の不足や物流需要の増加などは、今後も続くことが予測されます。そのような状況下において、企業にはいかに物流コストを削減するかが大きな課題となるでしょう。
物流拠点の集約や人件費・管理費の見直しなど、さまざまなコスト削減方法を取り入れながら、物流コストの削減を目指しましょう。
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