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「ICタグ」は私たちの身近にたくさん存在していることをご存知でしょうか。例えば、電子マネーやタイムカードなどのなかに埋め込まれています。しかしながら、名前は聞いたことがあっても詳しくわからないという方は多いのではないでしょうか。当記事ではそんなICタグについて詳しく解説します。

ICタグとは

一般的に集積回路(IC)を搭載した小型のタグをICタグといいます。ICタグの特徴は、電波をつかって接触せずに複数のアイテムを識別可能なことです。

ICタグの付いた商品を読み取り装置で読み取ると、段ボールなどに入っている状態のままでも中身を識別できるのです。そのため、商品の検品や在庫管理、棚卸など、さまざまな場面で効率化できるようになりました。

バーコードと比べると、ICタグは汚れに強く、データ量も多いというメリットがあります。さらにはデータ書き込みや複数同時読み取りもでき、透過性もあるという優れものです。

ICタグ・RFタグ・RFIDタグの違い

ICタグとRFタグは呼び方が異なるだけで、基本的に同じものを指します。どちらもICチップとアンテナで構成され、保護素材で加工されています。

一方、RFIDはハンディターミナルなどの読み取り装置とICタグをまとめて呼ぶ際に用いられます。電波をつかって接触することなくICタグの情報を読み取ったり、書き換えたりするシステムの総称です。そのため、RFIDタグも基本的にICタグと同義で使用されます。

RFIDは電子マネーやセルフレジ、カードキーなどで活用されており、私たちの生活を便利にしてくれています。

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ICタグの歴史・需要が高まった背景

近年ICタグの実用化が進み、さまざまなシーンで利用されるようになりました。しかし実は、ICタグの元となるものは1960年代に開発されたといわれています。1960年代の後半にはEAS(Electronic Article Surveillance)という盗難防止システムが開発されました。このシステムでは商品を不正に持ち出そうとした場合、タグを検知して警報音を鳴らします。家電量販店などの小売店や図書館などでもよくみられるこのシステムは、RFIDの技術が商業的に利用された初めての例の1つだと考えられています。

1980年代、ICタグはまだ実用的ではなかった一方で、バーコードは広く普及していました。しかしながら各々のバーコードにスキャナをかざす作業は時間とコストがかかるという課題があったのです。そこでさらなる自動化に対応するため、ICタグの需要が高まりました。

1990年代になり半導体技術の発達により、ICタグの小型化および経費削減が進み、RFIDの普及につながりました。

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ICタグの原理・仕組み 

ICタグが情報の読み書きを行う仕組みには2種類あります。「情報を電波にのせて伝達する」仕組みと「電波を電力に変換し利用する」仕組みです。これらの仕組みおよびICタグが作動する流れを詳しく解説していきましょう。

仕組み① 情報を電波にのせて伝達する

ICタグはスキャンするとデータを読み取ることができます。これは、データを電波や磁界にのせて読み取り装置に送信しているためです。この原理を変調と呼びます。変調はスマートフォンや地上波デジタル放送などでも使われているのです。

仕組み② 電波を電力に変換し利用する

ICタグは受信した電波をエネルギーに変換し、電源の代わりとして使います。電源やバッテリーのないICタグは、前述の仕組みを利用しているのです。

この技術を利用した身近な例には電子レンジがあります。電子レンジでは食品に電波があたると、電波はエネルギーに変換されます。そのため、食品が加熱されるのです。

ICタグには検波回路が組み込まれており、ここで受信した電波を電力に変換します。そのため、電源のないICタグでも作動できるのです。

ICタグの作動の流れ

電源のないICタグが作動する流れをみていきましょう。

まず読み取り装置が通信を開始すると、ICタグに電波が送られてきます。次に、ICタグは受信した電波を検波回路で電力に変換します。この電力はICタグの内部にあるコンデンサという部品にためられます。コンデンサに十分な量の電力がたまると、ICタグのシステムが起動し、機器との通信が開始されるという流れになっています。

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ICタグの種類・特徴

ICタグはバッテリーの構造によって、「パッシブタグ」、「アクティブタグ」、「セミアクティブタグ」の3種類に分類することができます。以下で詳しくみていきましょう。

パッシブタグ

「パッシブタグ」は読み取り装置から受け取った電波をつかって作動します。電源やバッテリーが不要で安価に導入することができます。また、消費電力を抑えられるというメリットがあります。

アクティブタグ

「アクティブタグ」はICタグにバッテリーが内蔵されています。安定して電源を確保できるため、パッシブタグと比較し通信距離を長くできるのです。ただし定期的に電池交換を行う必要があるというデメリットもあります。

セミアクティブタグ

「セミアクティブタグ」は読み取り装置から電波を受信した時にだけ作動します。ただし、電源が内蔵されており、特定の場面のみ内蔵電源を使います。このため、パッシブタグより通信可能な距離が長く、アクティブタグより電池消耗が少ないというメリットがあるのです。

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ICタグの規格

ICタグには主に2つの国際規格があります。1つ目が「NFC」、2つ目が「EPCglobal」です。

NFC

NFCはISO(国際標準化機構)の国際規格(ISO/IEC 18092)です。Near Field Communicationの略で、近距離通信方式と呼ばれています。NFCはさらに「FeliCa(フェリカ)」と「Mifare(マイフェア)」の2種類の規格にわけて定められています。

「FeliCa(フェリカ)」はもともと国内規格(JIS X 6319-4)でした。後にISOの国際規格として定められ、日本国内を中心に普及しています。

「Mifare(マイフェア)」はオランダで開発された規格で、海外を中心に普及しています。

両者を比較すると、FeliCaのほうが通信速度が速く、機能面においても優れているというメリットがあります。一方で、Mifareはより安価で利用できるでしょう。

EPCglobal

EPCglobalはUHF帯(高い周波数)を用いたICタグの国際規格です。通信プロトコルやハードウェアの定義だけでなく、データのフォーマットも定義されているのが特徴です。

UHF帯は通信距離が長く、一括読み取りに適しているというメリットがあります。一方で、金属・水分に弱い、ゴムに吸収されるといったデメリットもあります。

UHF帯を用いたICタグのほとんどがこの国際規格に準拠しているでしょう。

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ICタグ活用の具体例

ICタグはさまざまな場面で利用されています。では、具体的にどのような種類のタグがどのような場面で活用されているのでしょうか。タグの種類ごとに具体例をご紹介します。

ラベルタグ

ラベルタグ

裏面がシールになっており、プラスチックや紙などに容易に貼り付けることのできるタグです。厚みがないので、さまざまなものに手軽に利用できるというメリットがあります。

例えば、図書館では本に貼り付けて利用されています。これにより蔵書管理や貸出処理が効率化されます。

また、商品パッケージに貼り付けて商品管理を容易にすることも可能です。他にも、備蓄品に貼り付けて、在庫管理や期限の管理にも利用できるのです。

特定用途向けタグ

特定用途向けタグ

用途に合わせてつくられた特殊なタグです。流通用のパレットや工場の機械、ホテルのリネン品などで利用されています。

例えば、流通用のパレットにこのICタグを埋め込みます。工場出荷時に最初の情報を書き込み、物流における各段階で情報を追加します。その結果、スムーズにトレーサビリティを確保することが可能なのです。このICタグは流通用に適した仕様になっており、外部からの衝撃にも強いため安心して利用できるでしょう。

NFCタグ

NFCタグ

通信エリアが数cmであるNFCタグは、「かざす」ことで通信します。そのため個体を確実に識別するというメリットがあります。このメリットを活用した例が電子マネーです。

NFCタグはカードタイプの他に、キーホルダーやリストバンド、ICタグといった形状でも製品化されています。丈夫で何度も使用可能なため、ランニングコストを抑えられるでしょう。

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ICタグ導入時の注意点

ICタグを導入する際には、PoC(Proof of Concept)を行うことが非常に重要です。PoCとは概念実証ともいわれ、実現可能性や効果を検証することを指します。

ICタグは種類によって金属・水分に弱いものや、利用する周波数帯により電波干渉を受けるものなどもあります。こうした場合、想定していたようなデータの読み書きができない事態も考えられます。ICタグの読み取り精度は100%保証されているわけではないのです。

そのため、ICタグを導入する前にはPoCを実施し、ICタグが想定通りに動作することをきちんと確認することが重要です。想定通りに動作しない場合は、ICタグの種類の再検討なども慎重に行う必要があるでしょう。

ICタグの導入を決定する際には、ICタグにより取得できる情報を、実際の業務でどのように利用していくのかを検討することが重要になります。例えば、ICタグと商品情報管理を組み合わせることで、在庫管理や棚卸し作業、防犯対策といった業務を効率化することが可能です。

ICタグ導入のステップ

上記の内容をふまえ、ICタグ導入のステップは以下の流れです。

1.現状分析・課題抽出
2.ハードウェアの選定
3.PoCを実施し、導入効果検証
4.想定通りでなかった場合、対応策検討
5.RFIDの要件定義
6.システム設計・開発、テストの実施
7.現場への導入・構築

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まとめ

半導体技術が発展し、ICタグはさまざまな分野で普及してきています。電子マネーや図書館での貸出処理など、私たちの身近でICタグがたくさん使われています。

ICタグを導入することにより作業の効率化や人件費削減が可能になるというメリットがあります。種類がたくさんあるため、利用シーンに合った最適なICタグを選定し、有効活用できるようにしましょう。

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