HSコードは、商品を輸出入する際に必要な世界共通の分類番号です。世界税関機構(WCO)が管理するHS条約に基づいて定められているもので、200以上の国や地域で使われています。
また、EPA(経済連携協定)でも原産地証明書への記載が求められます。EPAが活性化している近年、HSコードの必要性は高まっており、しっかり理解しておくことが重要です。
今回はHSコードとはとはどのようなものかを詳しく解説し、調べ方や種類について紹介します。
HSコードとは
HSコードとは、輸出入する商品を分類するためにつける番号です。日本語では、関税分類番号や輸出入統計品目番号、税番、HS番号などと呼ばれることもあります。
分類番号は世界共通のもので、世界税関機構(WCO)が管理する「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約」(通称HS条約)に基づき定められており、商品がどのような物かということや関税率、原産地規則などを調べられるようになっています。
HS条約は2024年1月現在、185か国・地域がメンバーとなっており、また条約には非加盟でもHSコードを使っている場合もあるため、実際には200以上の国や地域で用いられています。
HSコードはおおむね5年毎に大幅な改正がありますが、経済連携協定(EPA)の原産地規則や関税率は協定締約時や交渉時のHSコードで規程されるため注意しましょう。
HSコードが必要な背景
HSコードが必要な背景はいくつか考えられます。
まず、輸出入するときに、世界共通の番号があることで商品がどのような物品であるかを的確に判断できるという点で必要です。
国際貿易では言語の違いもあり、製品名だけではどのような商品なのかがわかりづらい場合も少なくありません。規則に従ってHSコードが付けられていれば間違いなく判断でき、制限品や規制品を見分けたり、関税を決めたりといったことに役立ちます。
HSコードは、EPAを活用するためにも必要です。EPAは経済連携協定(Economic Partnership Agreement)の略称で、国や地域間の貿易や投資、二国間協力を促進するために締結される協定です。
EPAを活用すると、輸出入時の関税が削減できるケースがあります。しかし、EPAの活用には、貨物の国籍を証明する「原産地証明書」が求められ、HSコードを記載しなければなりません。EPAが活性化している近年、HSコードの必要性はますます高まっていると言えるでしょう。
そのほかにも、各国政府が輸出入の統計データを作成する際にHSコードを使用していることから、データ作成にも役立っています。
HSコードの種類
HSコードは、HS条約の加盟国を中心に使われている世界で共通した分類番号です。しかし、国や地域によっては、異なる独自のコードを使用している場合もあります。
ここでは、アメリカで用いられているHTSコード、ブラジルなどで用いられているNCMコードについて紹介します。
HTSコード
HTSコードの「HTS」は「Harmonized Tariff Schedule」の略称です。国際的に統一された関税システムを、アメリカに適用するために使われています。HSコードとの互換性はなく、基本品目分類番号が6桁であるHSコードに対してHTSは4桁で、末尾に2桁と4桁の拡張コードをつけることで品目の確定を行います。
NCMコード
NCMコードの「NCM」は「Nomenclatura Comum do MERCOSUL」の略称です。ブラジルやアルゼンチンなど、メルコスール(南米南部共同市場)に加盟している国で用いられています。NCMコードは8桁のコードで、HSコードとは6桁までが同じ番号です。
関税同盟であるメルコスールでは、メルコスール加盟国の間は無関税、加盟国外との貿易の関税率は統一された同じ税率が用いられます。
ブラジルに輸出したい場合、輸出側でもインボイスにNCMコードを記載しなければなりません。不備があるなど現地で認められないコードであった場合は、通関手続きの遅れや罰金が発生することもあるので注意が必要です。輸入者側の納税者番号であるCNPJ番号の記載も必要となるため、輸入側とコンタクトを取り、細心の注意を払いながら進めましょう。
HSコード一覧
HSコードは、一見すると数字の羅列ですが、それぞれ数字は重要な意味を持っています。
HSコードは「部・類・項・号」で構成される
HSコードは「部・類・項・号」で構成されています。
HSコードの最も大きな分類である「部」(Section)は、貿易対象品目を全21種類に分類したものです。「部」の中に類(Chapter)があり、さらに項(Heading)や号(Sub-heading)が続き、細分化されていきます。
HSコードの分類要素
HSコードの上6桁の番号は、上2桁が「類」、上4桁が「項」、上6桁が「号」を示しており、HS条約の加盟国や準拠国は同じルールに従って番号をつけなければなりません。すなわち、上6桁が同一の番号であれば、同じ品目であるということになります。
そのため、現地の言葉の商品名からは品目がわからないといった場合でも、自国の関税率表でHSコードを照らし合わせることで、関税率を判断することが可能です。
世界共通の上6桁に対し、7桁目以降の数字は国によって異なるもので、国内で定められた細分方法にしたがって付けられた番号です。日本では、7桁目以降に「統計細分」と呼ばれる下3桁を加えて、9桁の番号をHSコードとして定めて使っています。
最近は、NACCS(国際輸出入貨物に関する税関手続きの電子情報システム)に対応するために10桁目を用いる場合も多くなってきたようです。
HSコードの一覧表
HSコードの調べ方の1つとして、一覧表を確認するという方法があります。HSコードは税関サイトに「輸出統計品目表」として一覧表が掲載されています。
一覧表を見るとわかるように、HSコードで分類されている品目数は膨大です。そのため、すべてを覚えておくことは不可能ですが、社内で取り扱っている商品についてはHSコードを把握しておく必要があります。HSコードの情報を管理できるシステムなどを導入して、製品データに結び付けて管理しましょう。
HSコードはどのようにして決まるのか
HSコードは、輸出者が決定します。商品の品目の特徴を輸出統計品目表や実行関税率表などと照らし合わせ、最も適当なHSコードを選んで定めましょう。慣れていないと難しい作業であるため、実際には、税関の事前教示制度の活用や専門の業者への依頼でHSコードを決めている場合も多いようです。
乗用車のシートベルトHSコードを例に、決定方法を見ていきましょう。日本では「870821000」が、乗用車のシートベルトのHSコードですが、上6桁は世界共通の規定に従ったもので、7桁目以降は国内で細分化した番号が付けられています。
まず、上2桁の類「87」は「車両並びにその部分品及び附属品」に該当することを意味しています。
類に「08」を続けた項「8708」が「部分品及び附属品」を意味し、さらに「21」を付けて号「870821」にすることで「シートベルト」であることを意味する6桁になるのです。もし「シートベルト」ではなく「バンパー」であるならば、「21」を「10」に置き換えた「870810」になります。
7桁目以降は「統計細分」として国ごとの細分方法で分類番号をつけることができ、日本では下3桁を加えます。乗用車のシートベルトの場合は、「870821」に「000」を加えた「870810000」が日本でのHSコードとなるのです。
HSコードの調べ方
HSコードは品目ごとに細かく分類されているため、商品がどのHSコードに属するものであるかを判断するには、ある程度の専門知識が求められます。EPAの税率を適用する場合も、原産地規則や関税率がHSコードによって規程されているため、理解を深めておく必要があります。
自分が輸出側としてHSコードを付ける場合だけでなく、輸入側になる場合も確認が必要です。輸出者に通知されたコードを十分に確認しないまま、輸入の手続きを進めてしまい、万が一間違っていた場合には、申告書類の訂正や修正申告をしなければなりません。HSコードや関税率は、必ず確かめておきましょう。
HSコードを自分で確認するための調べ方としては、一覧表を見るという調べ方もありますが、税関の「関税分類の事前教示制度」を活用する調べ方がより確実です。文書やEメールによる照会が行われています。
文書による事前教示の照会を行うと、事前教示回答書として返されます。その有効期間は3年間と定められており、有効期限内は事前教示回答書に記載された内容が、評価申告や輸入(納税)申告の審査で尊重されます。
照会は、口頭やEメールでも行えますが、輸入申告時の税関の審査で尊重はされません。文書と同等の申請にしたい場合は、特定の手続きが必要です。
関税分類の事前教示制度を使うためにもある程度の知識が必要とされ、手間もかかります。よりスムーズにHSコードを調べたい場合は、通関業者へやフォワーダーに依頼するという方法もあります。
まとめ
HSコードは、他国からの貨物について的確に把握できる、世界共通の分類番号です。輸出業者・輸入業者ともに、正しく理解する必要があります。HSコードを使いこなせると、輸出国の言葉がわからない場合でも、品目を判断できます。
EPAの活用でもHSコードは重要な役割を果たします。社内で取り扱っている商品のHSコードについては、それぞれの製品データに結び付けて管理しておきましょう。
HSコードを正しく使用するためには、自社の商品管理が適切に行われていることが前提です。
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