目次

近年、さまざまな企業で物流DXが推進されています。物流DXの推進は、ドライバーの人材不足や小口配送の急増など、物流業界の課題を解消するためにも有効で、業務効率化やヒューマンエラーの削減といった多くのメリットもあります。

しかしながら、物流業界特有の事情もあり、デジタル化や機械化が進んでいない企業も多いのが現状です。

この記事では、物流DXとは何かという説明だけでなく、こうした物流DX推進における課題や企業事例、物流DXのメリットなどについても解説します。物流DXについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

物流DXの説明の前に、まずDXとは何か知っておく必要があります。DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」を略したもので、デジタル技術を活用した変革のことを指します。

物流DXは、物流産業におけるDXで、配送や輸送、在庫管理、荷役などの物流業務にデジタル技術を活用することで、物流産業の変革を目指すものです。

物流DXの定義

物流DXは、国土交通省が公開している『最近の物流政策について』(2021年1月22日)という資料の中で、「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」であると定義されています。

機械化やデジタル技術の活用によって、物流産業のビジネスモデルそのものを革新することが物流DXであり、物流産業のビジネスモデルやオペレーションの改善を目的としたものです。

物流DXが必要となった理由・背景

物流DXが必要性を増している背景には、現在の物流業界のさまざまな課題が挙げられます。

まず、人材不足の問題です。ドライバーの高齢化やEC市場が急成長したことによる個人宅への配送の増加などで、元々、ドライバー不足が問題となっていました。そんな中、働き方改革関連法案の施行により、2024年4月以降、ドライバーの年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されるため、ますます業界の人材不足が懸念されています。これが、いわゆる「2024年問題」と呼ばれる問題です。

このような人材不足の問題を解消するために、AIの活用によって効率的な配送を可能にしたり、自動運転技術などの実験も進められています。

また、小口配送が増加した影響もあって、倉庫に保管されている荷物の管理が複雑化したり、トラックの積載率が低下するなどの問題も生じています。これらの問題にも、ロボット技術やAIの活用は有効です。

ほかにもIT化の遅れやシステムの老朽化により、業務が属人化してしまっているという問題があります。業務を特定の人材に依存してしまっていると、トラブルが起きた際も特定の人しか対処できません。情報をデジタル化し共有しておけば、このようなリスクに対するリスクマネジメントにもつながります。

これらの課題を解消するために、物流DXの必要性は、近年、急速に高まっています。

「物流DXの推進」国土交通省


物流業界のDX実現における現状と課題

経済産業省などが発表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」でも、物流業界はドライバーの労働環境改善や物流の効率化といった面で、多くの課題を抱えていると指摘されています。

DXは、物流業界における課題を解決するためにも有効です。しかし、物流業界のDXの現状はどうかというと、他業界に比べても遅れているといわれており、なかなか進んでいません。

例えば、契約や見積・受注といった管理業務だけを見ても、電話やFAX、紙を使用したやりとりが主流で、デジタル化が進んでいるとはいえない状況です。

その原因としては、物流業界には小規模な企業が多く、IT化が遅れていることなどが挙げられます。すでに、AIやロボットを活用して業務の効率化に取り組んでいる企業もありますが、導入には多額の投資も必要になるため、小規模な企業にはあまり浸透していないようです。

また、物流の一連の流れに多くの企業が関わるという物流業界の特性もあり、IT推進のリーダーが不明確なことも、物流業界のDXが遅れている一因といえそうです。

「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」経済産業省・国土交通省・農林水産省

物流DX導入のメリット

物流DX導入には、さまざまなメリットが期待できます。ここでは、どのようなメリットがあるのか5つに分けて説明します。

業務効率化 

物流業界にDXを導入する大きなメリットの1つは、業務を効率化できることです。

これまで人の手で行われてきた業務のうち、特に単純な作業や定型業務に対しては、ツールやシステムを導入することがおすすめです。ツールやシステムを活用することで、複雑化した業務の管理や情報の可視化・共有が簡単になり、業務効率化や生産性の向上にもつながるでしょう。

コスト削減

DXの導入には、コスト削減というメリットもあります。

例えば、現在、紙を用いて行われている管理業務や手続きがあれば、電子化・デジタル化することで、用紙代や印刷代などのコストを削減できます。また、デジタル化によって管理も容易になるため、人的コストの削減も期待できるでしょう。

配送状況の可視化

配送状況の可視化も、DX導入の大きなメリットです。

動態管理システム・配送管理システムなどを活用すれば、管理者が、リアルタイムで車両ごとの現在地や配送状況を把握することが可能になります。それにより、管理者が最短ルートを指示するなど、効率的な配送ができるようになります。これは、ドライバーの人員不足を補う意味でも有効です。

人手不足の解消

先ほども述べたように、物流業界におけるドライバーの人材不足は深刻です。

AIドローンや自動運転技術の進歩により、ドライバーを介さない形で、荷物を目的地に届ける方法が普及すれば、ドライバーの人手不足という問題の解消にもつながるでしょう。

動態管理システムなどの導入によって効率的な配送が可能になれば、ドライバーの労働環境も今より改善し、離職率低下につながることも期待できます。

ヒューマンエラーの削減

人の手で行う業務にヒューマンエラーはつきものですが、これらの業務にロボットを導入することによって、ヒューマンエラーは削減することが可能です。

例えば、物流倉庫で大量の荷物の中から、目的の荷物を探して取り出すというピッキング業務に、ピッキングロボットを導入することで、人間よりスピーディーかつ正確に作業を行うことができます。

単純な作業や定型の業務は自動化しやすいため、ヒューマンエラーが多い業務にロボットやシステムを導入することは、業務効率化にもつながるでしょう。

物流DXの取り組み事例 

多くのメリットがある物流DXですが、実際に、どのような形で物流の現場に取り入れられているのでしょうか。物流DXの取り組み事例について説明します。

輸送・配送ルートの最適化

物流DXは、輸送・配送ルートの最適化を可能にします。輸送・配送ルートの最適化とは、ムダなく効率的に、目的地まで荷物を届けられるルートを設計することです。

同じ道であっても、気象状況や事故・渋滞の発生などによって、到着時間は変わります。物流DXは、これらのデータやトラックの空き状況をAIを使って分析することで、アナログで管理するよりも迅速に、適切な輸送・配送ルートを割り出したり、効率的な配車をすることが可能になります。

物流管理システムの導入

物流管理システムは、商品の仕入れから配送までの、一連の情報を管理できるシステムです。この物流管理システムの導入により、在庫管理や入荷・出荷・配送などの工程の管理を効率的に行うことができるようになります。

物流管理システムは、倉庫内の商品を管理し出荷までの流れを担う「倉庫管理システム(WMS)」と、出荷後に商品の配送・到着時間や状態を管理する「配送管理システム(TMS)」に分けられます。

手続きの電子化・ペーパーレス化

手続きの電子化・ペーパーレス化は、経費削減にもつながるため、多くの企業で導入されている方法です。手続きをオンライン化したり、書類や資料をデータ化すれば、印刷・配布コストも削減でき、保管スペースも不要になります。

デジタル化したデータは、業務に携わる人にとってわかりやすく、アクセスしやすい状態で、一元管理をすることが必要です。情報共有をスムーズに行うことができるようになり、更なる業務の効率化、作業時間の短縮につながるためです。
データの管理には、『PlaPi』などの情報管理システムを構築できるツールやシステムの導入がおすすめです。

ロボットを導入

倉庫内での業務で、ロボットを導入する企業も増えてきています。

資材などを運搬する際に使われるAGV(Automatic Guided Vehicle/無人搬送車)や、自動で移動して、商品の仕分けやピッキング作業を行うために活用されているAMR(Automatic Guided Vehicle/自律移動ロボット)などが有名です。

自動運転技術

自動運転技術の実用化も期待され、国内外で、さまざまな開発や実験が行われています。

まだ実験段階ではありますが、自動運転技術を活用した輸送が実現すれば、ドライバーの人材不足という問題の解消にもつながるでしょう。

ドローン配送

ドローンによる配送も、実証実験が進んでいます。まだ飛行時の安全性などの課題はあるものの、ドローン配送が実現すれば、トラックが入れないような場所や、離島などの陸路でアクセスできない場所への配送も容易になります。

道路状況を気にする必要がなく、最短距離で荷物を届けられるのもドローン配送の魅力です。

マニュアルの整備

物流DXを推進するためには、それを実現するツールやシステムの導入が必要になります。

そして、新しいツールやシステムの導入には、使用方法や手順・ルールなどのマニュアル整備が欠かせません。最近では、クラウド上で作成でき、オンラインで共有できる電子マニュアルの活用も進められています。

AIを活用したオペレーションの効率化

AIを活用したオペレーションの効率化は、国土交通省が推進する物流DXの具体的な施策の1つです。

AIロボットに運搬作業をさせたり、データ管理をAIで自動化するといった取り組みや、AI技術を使って最適な配送ルートを割り出すなど、幅広い活用が期待されています。

物流DXを実現する際のポイント 

物流DXを実現する際には、抑えておきたいポイントがあります。ここでは、重要な4つのポイントについて見ていきましょう。

DXの目的の明確化

まず、DXを推進するためには、目的の明確化が大切です。物流DXの目的は、ビジネスモデルの変革や、オペレーションの改善、働き方改革を実現することです。自社の目指す方向を明確にし、システムやロボットを導入すること自体が目的になってしまわないように注意してください。

デジタル化・機械化は、あくまで、DXを実現するための手段であることを忘れないようにしましょう。

経営陣自ら推進に関わる

物流DXを進める時は、経営陣と現場の連携が重要です。

新しいシステムなどを導入する際には、変更に慣れるまでの間、現場に負担がかかってしまうことも多いものです。経営陣は、従業員の理解が得られるように、DXの目的や必要性・メリットについてしっかり説明し、現場任せにするのではなく、自ら推進に関わるようにしましょう。

DX人材の確保・育成

DXに精通した人材の確保と育成も行わなければなりません。DXの推進に、DX人材の存在は欠かせないからです。

DX人材に明確な定義はありませんが、単にITに精通しているだけではなく、デジタル技術やデータ活用のスキルがあり、プロジェクトをリードしていく推進力も必要だといわれています。しかし、国内全体でDX人材は不足しており獲得競争も激化しているので、採用だけでなく、育成にも力を入れる必要があります。

事前の計画を立てて実施をする

DXをスムーズかつ効率的に進めるためには、事前の計画をしっかり立てて実施することが大切です。通常業務への影響も配慮して、計画的に導入していかなければなりません。影響の大きさや効果を見極めながら、進めていきましょう。

物流DXの企業事例

現在、さまざまな企業で物流DXが推進されていますが、実際にどのような形で取り組みが行なわれているのか、企業の具体的な事例を紹介します。

日本航空株式会社×KDDI株式会社 

日本航空株式会社とKDDI株式会社は、共同で、ドローンの社会インフラ化に向けて取り組んでいます。お互いの技術や知見を組み合わせることで目指しているのは、1人の操縦者が複数のドローンを運航する「1対多運航」の実現です。

ドローンは、新しい空のインフラとして、物流の場面だけでなく、災害時などの活用も期待されています。

KDDIとJAL、ドローンの社会インフラ化に向け、1対多運航の実現を目指す取り組みを開始 | KDDI株式会社

ヤマト運輸株式会社 

ヤマト運輸株式会社では、DXとデータドリブン経営(データを活用して、意思決定を行う経営手法)を積極的に推進しています。予測モデルとリアルタイムデータを活用して、配車計画・人員配置を行うことで、利用者が急増する中でも、効率的な配送を実現しているのです。

ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(HD)が策定した経営構造改革プラン「YAMATO NEXT 100」の中でも、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」領域の改革が表明されています。

YAMATO NEXT 100|ヤマトホールディングス株式会社

まとめ 

物流DXの推進は、物流業界が抱えるさまざまな課題に対応することができ、業界の未来のためにも非常に重要であることが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、実際に、デジタル化や機械化を自社で行うとなると、どこから手を付けていいのかわからない方も多いのではないかと思います。そのような時は、なるべく簡単で使いやすいシステムやツールの導入から始めるのが、おすすめです。

『PlaPi』は、誰でも簡単・手軽に商品・情報管理システムを構築できるクラウド型PIMサービスです。カスタマイズ性・操作性が高く、システム慣れしていない人でも、自社にぴったり合ったシステムをストレスなく作れます。自社のDX化を検討しているなら、『PlaPi』の導入を検討してみませんか。

PlaPiの詳細はこちら お問い合わせはこちら