B/L(船荷証券)とは、貿易において運送人(船会社)が貨物を預かった際に発行する、重要な船積書類です。貿易取引には複雑な手続きが数多くあり、B/Lについても正しく理解しておく必要があります。
本記事では、B/Lの定義を解説するとともに、B/Lが発行されるまでの流れや種類、Way Billについても紹介します。
B/L(Bill of Lading: 船荷証券)とは?
B/Lとは、Bill of Ladingの略語です。貿易取引における船積書類のひとつであり、 船荷証券(ふなにしょうけん)とも呼ばれています。
貿易取引では、荷主と運送人との間で運送契約を結びます。運送契約とは、運送人が物品を運送することを約束し、その対価として荷主が運送賃を支払う契約です。
荷主の貨物を預かったことを証明する書類として、運送人はB/Lを発行します。貨物を受け取るための証明書にもなるため、B/Lは貨物の引換券のようなものと言えるでしょう。
B/Lは貨物の引換券以外にも重要な役割を持っています。
たとえば、運送契約の証拠書類としての役割です。B/Lには、貨物の内容や数量だけでなく、運搬条件や免責事由といった貨物の運送に関する、重要な契約条件が明記されています。そのため、B/Lは荷主と運送人との間で運送契約が交わされていることの証拠となります。
また、貨物引渡請求権を立証する有価証券としての役割もあり、約束手形や為替手形のように、裏書によって貨物の権利を譲渡することが可能です。
B/Lの役割は主に以下の4つです。
①貨物の受領書
②運送契約の証拠
③有価証券
④貨物の引取証
B/Lの役割はどれも重要であることから、国際海上輸送においてもっとも重要な船積書類と言われています。
B/L発行までの流れ
B/L発行は運送人が行いますが、具体的にどのような流れで発行されるのでしょうか。B/L発行までの流れを詳しくみていきましょう。
貿易取引を行う事業者は、船会社と直接運送契約を結ぶケースは少なく、多くの場合は貿易に関する手続きをフォワーダーに代行してもらいます。フォワーダーとは、荷主と運送人の間に立ち、貨物の運送を取り次ぐ事業者です。一般的に、フォワーダー自体は輸送手段を持っておらず、実際の運送は船会社や航空会社が行います。
1. 荷主がフォワーダーに船積み業務を依頼
荷主はフォワーダーに貨物の船積みを依頼します。荷主は、インボイス(送り状)やパッキングリスト(梱包明細書)、船積指示書などの書類を用意し、フォワーダーへ提出することが必要です。
2.フォワーダーが船会社に貨物の船積みを依頼
フォワーダーは、荷主から提出された書類の内容を確認します。不備がなければその情報をもとに、船積み依頼書を作成し、船会社に貨物の船積みを依頼します。船積み依頼書は、B/Lのベースとなる書類です。
3. 船会社が貨物を船積みし、B/Lを発行
船会社は、フォワーダーから貨物を引き受け、船積みを行います。B/Lは、貨物の船積みが完了したタイミングで、船会社によって発行されます。
以上がB/L発行までの流れです。
通常、B/Lの原本は3通発行されます。これはB/Lの紛失により、貨物の引き受けができなくなることを回避するためです。発行されたB/Lは、フォワーダーを経由して荷主に渡されます。荷主は荷受人へB/Lを送付し、荷受人が貨物と引き換えることで引き渡しは完了です。
B/Lの種類
B/Lの原本はオリジナルB/Lと呼ばれますが、発行のタイミングや運送状況によって呼び方が異なります。それぞれの種類には異なる特徴や使い方があります。
Received B/L(受取船荷証券)
Received B/Lは、船会社が荷主から貨物を受け取った際に発行される船荷証券です。つまり、この時点では、貨物の船積みは完了していません。
実際に貨物の船積みを行い、Received B/Lに貨物の船積み事実と日付を追記することによって、通常のB/Lと同じ扱いになります。 この船積証明は「On Board Notation」と言います。
Order B/L(指図式船荷証券)
B/Lには、「指図式」と「記名式」があり、Order B/Lは「指図式」の船荷証券です。
荷受人が指定されていない状態で発行されており、B/Lの荷受人欄には、「TO ORDER」や「TO ORDER OF SHIPPER」と記載されています。荷主の指図によって誰にでも貨物を譲渡できるため、流通性があります。
Straight B/L(記名式船荷証券)
「指図式」のOrder B/Lに対し、Straight B/Lとは「記名式」の船荷証券です。
荷受人が特定されており、荷受人欄には該当者の名前が記名されています。その人物または組織にのみ貨物が引き渡されるため、流通性はありません。
Stale B/L(期限喪失船荷証券)
Stale B/Lとは、指定された期限を過ぎて提示された船荷証券です。
一般的に、貿易取引の決済に使われるL/C(信用状)には、有効期限と船積書類の銀行への呈示期間が記載されています。
B/Lは、L/Cの有効期限かつ呈示期間内に、銀行に書類を呈示されなければなりません。呈示期間が明示されていない場合は、船積書類の発効日後21日以内に呈示しなければ、その船荷証券は期限喪失と見なされてしまいます。
Liner B/L (定期船船荷証券)
貨物を運ぶ船には、決められたルートを通る「定期船(ライナー)」と、荷主の要望に合わせて貨物を運ぶ「不定期船(トランパー)」があります。
定期船(ライナー)を利用する個品輸送において発行される船荷証券をLiner B/L と呼びます。
Charter Party B/L (傭船契約船荷証券)
Charter Party B/Lとは、傭船契約(ようせんけいやく)に基づく貨物輸送で発行される船荷証券です。
傭船契約とは、一定期間の航海の間、船舶の一部またはすべてを貸し切り、これに積載した物品等を運送する契約です。
傭船契約に基づく貨物輸送で発行されるCharter Party B/Lでは、表面に「As per C/P」と記載され、B/L約款以外の運送条件付随することが明記されています。
Combined Transport B/L・Multimodal Transport B/L(複合運送証券)
Combined Transport B/LおよびMultimodal Transport B/Lは、複合輸送契約を証する運送書類です。港から港への海上輸送で発行される本来の船荷証券ではありませんが、有価証券として船荷証券と同様の機能と性質を持っています。
Surrendered B/L(サレンダードB/L)
Surrendered B/Lとは、荷主が船会社にB/Lを返却し、貨物の迅速な引き渡しを可能にするための手続きです。
荷主は船会社にB/Lの原本を返却し、サレンダーの手続きを依頼します。船会社はB/L原本の回収を確認後、荷受人がB/L原本の提示なしで貨物を引き取れるように指示します。
これにより、B/L原本が届くよりも先に貨物が現地に到着する現象「船荷証券の危機」を回避できるのです。
B/Lを使わずにWay Billを使って貨物を受け取るには?
B/Lは船積書類の中でもっとも重要な船積書類ではありますが、近年はスピードを重視した取引が増え、B/Lではなく「Way Bill」を利用した取引も増えているようです。
Waybillとは
Waybillは、Sea Waybill(海上運送状)とAir Waybill(航空貨物運送状)の2つに分けられます。ここでは、B/Lと比較しやすいSea Waybillについて解説します。
前述したとおり、B/Lの性質は主に以下の4つです。
①貨物の受領書
②運送契約の証拠
③有価証券
④貨物の引取証
一方、Sea Waybillは①貨物の受領書と②運送契約の証拠を兼ね備えた書類です。B/Lと違い、③有価証券の性質はないため、裏書きによる譲渡はできません。
Sea Waybillには④貨物の引取証の役割もありません。なぜなら、貨物の引き取り時にSea Waybill原本を提示する必要がないからです。貨物を引き取る人がSea Waybillに記載された荷受人であることが確認できれば、貨物の引き取りが可能です。
ただし、Sea Waybillでは必ず荷受人を指定しておく必要があります。Order B/L(指図式船荷証券)のように荷受人を指定しない状態で発行することはできません。
Waybillのメリット・デメリット
Waybillは、取引の手続きを簡略化できることが魅力ですが、利用する際の注意点もあります。ここでは、Waybillのメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
メリット
Waybillのメリットは、手続きを簡略化でき、迅速な貨物引き渡しが可能となることです。
B/Lの場合、貨物の引き取りにはB/Lの原本が必要です。そのため、B/Lの原本を荷受人へ送付する手間が発生します。B/Lの原本の送付が遅れてしまうと、たとえ貨物が到着していたとしても貨物の引き取りができないという事態が発生してしまいます。
一方、Waybillには貨物の引取証の役割がないため、荷受人への原本の送付は不要です。船会社から受け取ったWaybillは、荷受人へメールやFAXなどで送付が可能です。B/Lの原本を送付するという手間は不要となります。また、荷受人であることを証明できれば貨物の引き受けが可能であるため、迅速な貨物引き渡しも実現します。
デメリット
Waybillのデメリットは、代金支払の有無にかかわらず貨物が引き渡されてしまうリスクがあることです。
Waybillは、有価証券としての役割がないため、荷主にとって実質的に後払いと変わらない状況です。取引にリスクがあるため、十分な信頼関係がある相手との取引に限るなど対策を講じておく必要があります。
有価証券としての役割がないWaybillには、財産価値がありません。そのため、L/Cでの担保にはならず、L/C取引で使用できないことも、Waybillのデメリットといえるでしょう。
まとめ
B/L(船荷証券)は、安全な輸出入業務を行うために不可欠な重要書類です。B/Lの原本が必要となるが故、受け取りの遅れが生じており、より迅速な対応が求められています。
輸出入業務には、B/L(船荷証券)だけでなく、貿易業務には、インボイス、パッキングリスト、運賃明細書など、さまざまな書類作成も必要です。やり取りする関係企業やフォワーダー・貨物運送事業者が多い場合、何度も似た書類を作成する、非効率な業務に追われているなど、業務の煩雑化に悩んでいる企業も多いでしょう。
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