地震の二次災害とは、本震が引き金となって発生する二次的な災害のことです。

津波や火災、ライフラインの寸断など、地震の二次災害にはさまざまな種類があります。地震に対する備えは、二次災害の種類やその対策方法について覚えておくことが重要です。

今回は、地震の二次災害の種類や対策方法、実際に起きた大地震後の二次災害について解説します。企業が行うべき二次災害対策に関してもご紹介しますので、参考にしてください。

地震の二次災害とは?

災害は一次災害と二次災害とに分けられます。一次災害とは、災害に起因する直接的な被害のこと、二次災害とは一次災害が引き金となって発生する二次的な災害のことです。

地震における一次災害には、建物の倒壊や道路の損壊などがあり、二次災害は津波や火災、停電、断水などが挙げられます。一次災害は突発的に発生する災害であり、予期することができません。一方、二次災害が発生するまでには、時間的な猶予があるため、適切な対策と知識があれば被害を最小限に抑えることも可能です。

地震によって発生する二次災害は、場合によって一次災害よりも甚大な被害となる可能性もあります。ハザードマップの確認や防災備蓄品の確保、また災害に対する知識を習得しておくなどの対策を行うことが重要です。

地震の二次災害の種類と対策

地震の二次災害は、大きく分けて8つに分けられます。それぞれの特徴や対策について把握し、いざという時に適切に対応できるようにしましょう。

地震の二次災害の種類と対策について、詳しく解説します。

余震

余震とは、本震に続く地震のことです。本震よりも小さな揺れが到来するイメージを持たれがちですが、本震と同じレベルの揺れ、またはそれ以上の揺れが数日間、数週間続く可能性があります。そのため、現在、気象庁では防災上の呼びかけ以外では「余震」という言葉を使用していません。

以下が、余震に対して行うべき対策です。

・建物への耐震装置の設置
・耐震化・耐震性の強化
・避難経路の確保
・ドアや窓の開放 など

火災

地震後の火災の原因には、電気配線のショートや暖房器具によるものがあります。また、停電からの復旧後、再通電によって発生する通電火災にも注意する必要があるでしょう。

以下が、火災に対して行うべき対策です。

・家具・家電の転倒予防
・ストーブ・暖房器具周辺の掃除
・消化器や火災報知機の設置
・ガスの元栓を閉める(揺れが収まったら)
・ブレーカーを落とす など

津波

津波とは、大規模な地震によって海底の断層の上下の動きが生じ、海水が押し上げられることで起こる波のことです。発生した津波は徐々に大きさを増し、陸に一気に押し寄せます。津波警報が発生した、もしくは海岸付近にいるときに地震が発生した場合、ただちに高台に避難しましょう。

以下は、津波に対して事前に行っておくべき対策です。

・住んでいる地域や会社周辺のハザードマップ確認
・安否確認方法の共有
・避難訓練の実施
・非常持ち出し袋の準備 など

地割れ・液状化現象

地割れ・液状化現象も、地震によって引き起こされる二次災害です。地割れとは、強い揺れによって地表に亀裂が入ること、液状化現象とは地盤が液状化することを指します。どちらも発生すると、避難経路が遮断されたり、建物の傾斜や沈下が発生したりします。

地割れ・液状化現象に対する対策は以下の通りです。

・地盤調査で、地盤の強度を確認
・国土地理院のハザードマップで液状化しやすい場所を確認
・避難経路が遮断された場合に備えて、防災備蓄品の準備 など

土石流・落石・落盤など

地震の揺れの影響で引き起こされる、土石流や落石、落盤などの災害もあります。また、台風や大雨などに起因する土砂災害により、被害が拡大することがあることにも注意しましょう。自宅や会社周辺に山やがけなど、土砂災害リスクの高い場所がある場合は特に注意が必要です。

以下が、土石流・落石・落盤などの対策です。

・ハザードマップで自宅や会社周辺の土砂災害の危険性を把握
・非常持ち出し袋の準備
・避難場所の確認 など

ライフライン(水道・電気・ガス)の寸断

断水や停電、ガスが止まってしまうことも、二次災害として挙げられます。これらのライフラインが停止すると、飲み水やトイレ、照明や食事の準備など、生活を送る上でさまざまな支障をきたします。

ライフラインが寸断されてしまった場合は、防災備蓄品の準備が重要です。以下の備蓄品を準備しておくとよいでしょう。

・断水に備えて:飲料水、非常用トイレ、ウェットティッシュなど
・停電に備えて:ポータブル電源、モバイルバッテリー、懐中電灯、乾電池、カイロなど
・ガスの寸断に備えて:カセットコンロ、ガスボンベ、発熱材、食料など

通信(ネット・電話)の寸断

災害時は、安否確認のためネットや電話などの通信が混雑しつながりにくくなります。連絡が取れず混乱を招かないためにも、事前に対策を講じておくことが大切です。

以下が、通信の寸断に対する対策例です。

・安否確認方法の共有
・連絡が取れなかった場合の集合場所の共有
・緊急時の連絡先の共有

エコノミークラス症候群・感染症

避難所や車内で長時間同じ姿勢をとったことで、エコノミークラス症候群を引き起こす場合もあります。エコノミークラス症候群とは、静脈に血栓ができ、場合によっては肺に詰まって肺塞栓を引き起こしてしまう病気です。

また、避難所などで集団生活を送る場合は、感染症にも注意を払う必要があります。以下が、エコノミークラス症候群や感染症を予防するための対策です。

・運動や体操を適宜行う
・水分補給
・マスクの着用
・消毒液など衛生用品を備蓄しておく

実際に起きた大地震後の二次災害

日本はこれまでに、多くの地震に見舞われています。発生した地震の被害の多くが、火災や津波、液状化などの二次災害によるものです。

ここでは、実際に起きた大地震後の二次災害について紹介します。

【1995年】阪神淡路大震災

1995年の阪神淡路大震災では、地震後285件もの火災が発生しました(※1)。特に揺れの大きかった地域に多く、地震直後だけでなく、地震発生後1時間以上経過した後も断続的に火災が発生しています。

この地震での火災原因の大半はわかっていません。しかし、特定された55件の原因のうち、33件が通電火災によるものであったことが判明しています。阪神淡路大震災による火災で亡くなった人は559人にも及び、電気火災への対策や防災そのものへの重要性が再認識された災害の1つです。

【2011年】東日本大震災

2011年に発生した東日本大震災では、東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました(※2)。この地震で特に大きかったのが、津波による被害です。太平洋沿岸地域にかつてない大きな津波が到来し、家屋や建物が飲み込まれたり、道路が障害物で寸断されたりとたくさんの被害が発生しています。

福島県相馬で9.3m以上、岩手県宮古では8.5m以上の津波を観測し、この津波によって多くの人が亡くなっています。東日本大震災によって、津波の恐ろしさ、津波への対策方法などについて見直されるきっかけとなりました。

【2016年】熊本地震

2016年4月に発生した熊本地震では、震度7の地震を同一地域で2回も観測し大きな被害をもたらしました(※3)。4月の地震発生以降、地震活動が活発化し、同年7月までに震度1以上の地震が1,888回も発生しています。

この地震では、震源地の断層に近い低地や地下水位の高い地域で液状化による被害も深刻でした。家屋や建物の傾斜や沈下、墳砂の堆積、基礎杭が抜けて段差が生じる事例が多く発生しています。

また、度重なる地震によって地盤が緩み、豪雨による土砂災害も発生しました。その年の梅雨前線到来に伴う豪雨によって、158か所で土砂災害が発生し、15人の人が亡くなっています。

【2018年】大阪府北部地震

2018年に発生した大阪府北部を震源とする地震では、大阪市北区や高槻市などで震度6弱、大阪市、京都府、滋賀県などの一部市町村で震度5弱以上の震度を観測しました。この地震では6人の人が亡くなっており、うち2名は崩れ落ちたブロック塀の下敷きになって亡くなっています。

また、全壊した家屋が21棟、半壊が455棟に及ぶなど、地震による家屋の損壊が顕著でした。火災も発生したものの、同日中に鎮火し死者は出ていません。また、停電や断水、ガスの停止などライフラインが寸断された地域もありましたが、全て1週間以内には復旧しています。

企業が行うべき二次災害対策

自然災害と隣り合わせの日本において、企業でも二次災害対策は重要です。従業員の安全を確保するのはもちろん、事業継続のため災害に備えた対策案を考える必要があるでしょう。

企業が行うべき二次災害対策について、くわしく紹介します。

従業員の安全確保

災害が発生した場合、まずは自分、従業員の安全確保が最優先です。会社内で避難訓練を実施したり、防災対策に関する勉強会を開いたりするなど、従業員の防災に対する意識を深めておくようにしましょう。また、従業員の安否確認のため情報伝達手段を確保しておくことも重要です。

従業員の安全確保は、労働安全契約法や労働安全衛生法でも定められている事項です。緊急時に安全を確保しなかったり、無理に出勤させたりした場合、企業に罰則が課せられます。法律で定められているから、ではなく、人命が最優先と考え、対策を講じていきましょう。従業員の安全は、事業継続や早期復旧を目指すうえでも重要です。

BCP(事業継続計画)を策定する

緊急事態に備えてBCP(事業継続計画)を策定することも重要です。二次災害を考慮したBCPの策定を進めましょう。策定する際には、起こりうる二次災害や、その災害が自社にどのような被害をもたらすのかを具体的に挙げた上で、対策を考えていきます。

対策が不十分だった場合、事業継続が困難になる可能性もあります。最悪のケースを考慮し、被害を最小限にし早期復旧を可能とするBCPの策定を心掛けましょう。

前項で紹介した大阪府北部地震では、事前にBCPを策定していたことで、早期に復旧を可能とした事例もあります。事前に策定したBCP計画に基づき、対策チームを派遣、復旧活動を行った結果、翌日に工場を再開させた事例です。こうした事例があることからも、企業のBCPの策定は有効であるといえます。

まとめ

今回は、地震の二次災害の種類や対策方法、企業が行うべき二次災害の対策方法について解説しました。地震の二次災害には、余震や津波、液状化現象などの大きく分けて8つの災害があります。二次災害に対する知識や対策方法を知っておくことで、被害を最小限にし、慌てずに対応することができるでしょう。

災害対策を行う上では、食料や飲料水、日用品などの防災備蓄品を準備しておくことも重要です。万が一、災害によって避難を余儀なくされたり、ライフラインが寸断されたりした場合に有効活用できます。しかし、企業における防災備蓄品の品目は膨大で、管理が煩雑になりがちです。

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