食品が食べられることなく捨てられる「食品ロス」が社会問題となっています。食品ロスは食べ物が無駄になるだけでなく、環境や経済にも悪い影響があるものです。

食品を扱う企業で対策が必要であることはもちろんですが、一般的な企業でも防災備蓄用の食品を廃棄する時などに、大量の食品ロスを発生させている場合があります。食品ロスは社会全体で取り組まなければならない問題なのです。

食品ロスを減らすためにはどうすればよいのか、食品ロスの原因や現状について解説し、企業が取り組める対策を具体的に紹介します。

食品ロスとは

食品ロスとは、食品として作られたものが食べられることなく捨てられてしまうことです。食品ロスは大きく2つに分けられるでしょう。

まず1つ目は「事業系食品ロス」で、食品関係の事業で発生する売れ残りや規格外品、食べ残しが原因の食品ロスが該当します。2つ目は「家庭系食品ロス」で、家庭で出る食べ残しや食べられるのに捨てられている部分、賞味期限切れで捨てられる食品などを含みます。

食品ロスの現状

食品ロスは世界で取り組むべき社会問題となっています。先進国を中心に多くの食品が食べられないまま捨てられてしまっている一方、食糧が足りないことが原因で多くの人が飢餓状態に陥っている国もあるのです。捨てられて無駄になる食品を発生させることなく、世界中の人々で食糧を分け合える方法を模索していかなければなりません。

日本でも食品ロスの原因に対して対策がなされ、改善されてきている部分もありますが、まだまだ社会的な課題であることには変わりありません。食品ロスの原因と向き合い、今後も継続的に取り組みを進めていく必要があります。

また、2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)でも、「つくる責任 つかう責任」という項目が設けられています。2030年までの目標として世界の食品ロスを半分にするということが掲げられたものです。

世界共通の目標であるSDGsには多くの注目が集まっており、SDGsへの取り組みを行う企業は評価が高まる傾向にあります。企業が自社の食品ロスについて、原因を探り対策を行うことは、イメージアップやビジネスチャンスにつながる可能性もあるでしょう。

食品ロスの原因

食べられる食品が廃棄されてしまうという状況はいくつかのパターンが考えられます。食品ロスはなぜ発生してしまうのか、原因について詳しく解説します。

食品の過剰生産

食品の過剰生産が原因で食品ロスになってしまう場合があります。

例えば、農業や畜産業は自然に左右されやすいため、凶作になるリスクを考慮して生産する場合も多く、豊作時は生産量が需要を超えてしまうことがあります。

また、小売業者の発注に確実に応えられるように過剰生産してしまうケースもあります。生産量が発注量を下回って納品が追いつかないと、ペナルティが要求される場合も多いのです。多めに生産して残ったものは捨てるという形がとられることも多く、食品ロスの原因となっています。

外観品質基準の問題

見栄えを重視して外観品質基準が厳しくなりすぎているという問題も原因のひとつです。安全性や味などに問題が無くても、見た目が悪いというだけで消費者に避けられてしまうことが多々あります。

商品として出荷するにはサイズや重さ、形といった外観品質基準を満たしている必要があるので、規格外品は廃棄されるということが起こってしまいます。加工して出荷される場合もありますが、加工のためにコストをかけるよりも廃棄したほうが安いとなると、利益を優先して捨てられてしまい、食品ロスの原因になるケースも少なくないようです。

小売店の売れ残り

小売店の売れ残りも食品ロスの原因となっています。消費者のニーズに応えるために、幅広い種類の商品を数多く販売している小売店も多いでしょう。スーパーなどでは欠品しないことがよしとされ、多めの発注がなされている場合も少なくありません。また売り場作りの面でも、大量の商品を陳列することで消費者の注意を引きアピールするという手法も見られます。

すべて販売できれば問題ないのですが、賞味期限や販売期間のうちに売り切ることができないと、廃棄するしかなくなることもあるでしょう。実際にはまだ食べることが可能である食品でも、賞味期限に従って廃棄されてしまいます。

家庭や飲食店等での廃棄

家庭や飲食店では、購入した食品が期限切れで食べられなくなってしまったり、調理した食品を食べ残したりといったことも食品ロスの原因になっています。買いすぎや作りすぎに注意することで廃棄を防ぐ必要があるでしょう。

また、調理の際の過剰除去も食品ロスの原因のひとつです。過剰除去とは、可食部を食べられない部位と一緒に取り除いて捨ててしまうことで、野菜の皮むきで厚く向きすぎる、ヘタなどの部分を必要以上に大きく切り取るといったことが含まれます。

備蓄食品の廃棄

企業では備蓄食品の廃棄が原因となり食品ロスが発生することも多いようです。

大きな災害が原因で交通機関がストップした場合など、通勤者が帰宅困難になる可能性があります。当面の生活が社内でできるように、災害対策として食品を備蓄している企業は多いでしょう。自治体によっては企業で用意するべき備蓄量が条例で定められている場合もあります。

災害備蓄をしておくことはもちろん重要ですが、管理が適切に行われていないと期限が近い食品への対処が遅れ、賞味期限が切れて大量廃棄が発生するというケースも少なくありません。企業の備蓄食品の廃棄は社会問題になりつつあり、適切な管理方法や、寄付などの形で廃棄を防ぐ対策を考えることが重要です。

食品ロスが及ぼす悪影響

食品ロスの発生にともなう問題は、単に食品を無駄にしてしまうという点だけでなく、環境や経済にも悪影響があるということでも深刻です。食品ロスが原因となり引き起こされる悪影響について説明します。

地球温暖化の原因になる

食品ロスとなり捨てられた食品はゴミとして焼却されます。焼却時には発生する温室効果ガスである二酸化炭素が発生するため、地球温暖化の原因になってしまい、環境に悪影響を及ぼすのです。

廃棄物処理ができなくなる

環境省は令和4年時点の最終処分場について、残余容量9,666万m3、残余年数23.4年と発表しており、「最終処分場の残余容量と最終処分場の数は概ね減少傾向にあり、最終処分場の確保は引き続き厳しい状況」としています(※1)。

食品ロスで廃棄物を出し続けると、廃棄物処理が追いつかなくなる事態が考えられます。食品は適切に食べることができれば本来廃棄物にならないものです。食品ロスを抑える取り組みが廃棄物を減らす第一歩となるのではないでしょうか。

資源が無駄になる

食品ロスはさまざまな資源を無駄にする原因になります。食品そのものはもちろん、生産過程で使った水や肥料、輸送にかかった燃料、梱包材などが、食品が捨てられることにともない無駄になるのです。

特に水資源の無駄は深刻です。世界で利用されている水の7割が食品の生産に使われているとされています。食品ロスを増やすということは膨大な水資源を無駄にすることにつながるのです。貴重な資源を大切に使うためにも、食品ロスの削減に取り組まなければなりません。

ゴミ処理事業経費増加による経済的損失

ゴミの処理には費用がかかり、税金が使われることになります。先述の環境省の発表では、2019年度のゴミ処理事業経費が約2兆885億円であったとされています。ゴミの増加の原因である食品ロスを減らせば、税金のより有意義な使い方ができるでしょう。

食品ロスを減らすための対策例

食品ロスを減らすために、国はいくつかの法律を定めています。法的に定められた対策に関しては必ず確認し、適切な対処や原因の解消を行いましょう。

加えて、企業が自主的に食品ロスの原因を探り、減らすための取り組みを行うことも重要です。SDGs実現に貢献する企業としてビジネスチャンスやイメージアップを図れるという面でもメリットがありますので、ぜひ取り組んでみてください。

食品ロスを減らすための対策について例を挙げて詳しく紹介します。

食品ロス削減促進法の施行

2019年10月、食品ロス削減の推進の基本的な方針が記載された「食品ロス削減の推進に関する法律(※2)」が施行され、略称として「食品ロス削減促進法」と呼ばれています。

食品ロスの定義や、削減に関する国や地方公共団体等の責務を明記することで、食品ロス削減の総合的な推進が図られています。法律として定められたことで、食品ロスへの関心が高まり、取り組む人やイベントなども増えている傾向があります。

食品リサイクル法の施行

2000年には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(略称「食品リサイクル法」)が定められました。

食品の売れ残りや食べ残し、製造過程で発生する食品廃棄物を抑制・減量化し、食品ロスを減少させること、また、飼料や肥料といった原材料として再生利用することを促進するものです。基本的方針や目標、再生利用を促進するための登録制度や認定について定められています。

フードバンク活動での食品寄付

品質に問題がない食品の場合、フードバンク活動で食品寄付を行うという方法もあります。一般向けに販売できないものを福祉施設などに寄付する活動です。寄付できるものは、米やパンといった主食から、生鮮食品、インスタント食品などの加工品、菓子など、フードバンクの団体によってさまざまです。

食品ロスの原因になりやすい企業の備蓄食品も、賞味期限が切れる前にフードバンク活動で寄付すれば有効活用できます。食品ロスを防ぎながら社会貢献もできるのでおすすめです。備蓄品管理に特化したサービスの中には、備蓄食品の賞味期限を効率的に管理して、寄付先のマッチングを行ってくれるものもあるので、導入を検討してみるとよいでしょう。

在庫管理の最適化・需要予測

在庫を抱えすぎないように管理を最適化することや、需要予測を十分に行い必要な量だけ仕入れるというのも食品ロスを減らすために大切なことです。売り場の見栄えをよくする大量陳列などが原因で食品ロスにつながっていないか今一度確認し、本当に必要な量かを考えながら発注するように心がけるとよいでしょう。

企業の備蓄食品に関しても、需要予測ができるサービスを導入すれば、フードバンク活動などで必要とされている食品を効率的に備蓄できます。使わなかった際に寄付先が見つかりやすくなり、食品ロスを削減できるでしょう。

まとめ

食品ロスは世界で取り組まなければならない課題です。法的に定められた対策をしっかり行うとともに、適正な在庫管理やフードバンク活動への参加を通して食品ロスの削減に取り組んでみてください。取り組みを行う姿勢は企業のイメージアップにもつながるはずです。

特に企業の備蓄食品の大量廃棄は社会問題になりつつあります。寄付などで有効活用できればよいですが、寄付先が見つからない場合や賞味期限切れで廃棄するしかなくなるといった原因で食品ロスが発生しやすいものです。

企業の備蓄食品を食品ロスにつなげてしまわないためには、ぜひ備蓄品プロセスをDXで循環させる「Musute」を導入してみてください。「Musute」は備蓄食品のデジタル管理で管理・運用の負担を軽減し、寄付先のマッチングや備蓄食品の需要予測も行います。備蓄食品を効率的に管理しながら有効活用できるので、企業の食品ロスへの取り組みをお考えの場合はぜひご検討ください。