台風は毎年日本を襲う自然災害の1つであり、甚大な被害をもたらすことがあります。企業にとって、台風対策は事業継続のために欠かせない重要な課題です。
本記事では、台風の基本情報から、企業が事前に行っておくべき対策までを詳しく解説します。この記事を参考に、企業は従業員の安全を確保し、事業活動への影響を最小限に抑えられるようにしましょう。
台風対策について考える前に、まずは台風の基本的な情報を確認しておきましょう。台風の勢力を示すための目安として、風速(10分間平均)に基づいて台風の大きさと強さを表現します。
台風の大きさは、強風域(風速15 m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径で次のように区分されます。
階級 | 風速15m/s以上の半径 |
大型(大きい) | 500km以上~800km未満 |
超大型(非常に大きい) | 半径800km以上 |
引用元:気象庁「台風の大きさと強さ」(※1)
また、次に示すのは台風の強さの区分です。台風の強さは最大風速によって以下のように区分されます。
階級 | 最大風速 |
強い | 33m/s(64ノット)以上~44m/s(85ノット)未満 |
非常に強い | 44m/s(85ノット)以上~54m/s(105ノット)未満 |
猛烈な | 54m/s(105ノット)以上 |
引用元:気象庁「台風の大きさと強さ」(※1)
台風に関する情報では、台風の大きさと強さを組み合わせて「大型で非常に強い台風」のように呼びます。さらに、暴風域は風速25m/s以上の風が吹いている、または吹く可能性がある範囲のことです。
このように、台風の基本的な知識を理解しておくことは、適切な対策を講じるために重要です。
気象庁の統計によれば、年間約25個の台風が発生し、そのうち約3個が日本に上陸しています。この上陸数は世界でもトップクラスです。日本では、7月から10月にかけて台風の発生、接近、および上陸が最も多く、この期間に台風被害が集中します。
1951年以降の統計では、強い台風の発生割合には周期的な変動が見られます。1970年代後半から1980年代後半に増加し、1990年代後半には減少しました。しかし、その後2000年代に再び増加しています。さらに、2008年から2013年の平均上陸数が1.7回だったのに対し、2014年から2019年には4.7回と2倍以上に増えています。
この変動が地球温暖化と関連があるかどうかは現在のところ明確ではありません。しかしながら、台風対策の重要性が再認識されています。
気象庁のデータによると、2014年から2023年の10年間で、日本への台風の上陸数(台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合)は次のような変動がありました(※2)。
特に2016年には、この10年の間で最多の6個の台風が上陸しています。近年、地球温暖化に伴う海水温の上昇により、強い勢力を保ったまま上陸する台風の数が増加している可能性があり、これに伴って強い台風がもたらす災害が懸念されています。
日本は島国であり、山や谷、崖が多い起伏に富んだ地形のため、台風に起因する災害が起こりやすい環境だといえるでしょう。台風が原因で起こる災害は大きく風害と水害の2つにわけることができます。
台風が発生すると、強風や暴風などの風害が発生します。特に台風の進行方向の右側は風が強くなりやすく、十分な注意が必要です。進行方向の右側には、台風の移動速度による風と台風自体の反時計回りの強風が合わさるため、風が強くなりやすい傾向にあります。
また、高潮や洪水、波浪による水害にも注意が必要です。特に沿岸の地域では、暴風による波浪・高潮や低気圧による海面上昇といった複数の要因が重なり、大波が発生することがあります。さらに、アスファルト舗装が進んでいる都市部では、排水路や下水道の処理能力以上の量の雨が降ると、排水しきれずに溢れ、河川がなくても浸水被害(内水氾濫)が起こることがあります。
このような風害と水害が同時に発生すると、被害が拡大するため特に注意が必要です。
台風が接近すると、企業はさまざまなリスクに直面します。ここでは、企業が直面する具体的なリスクについて詳しくみていきましょう。
台風の影響で、出退勤時の安全が確保されにくくなる場合があります。交通機関の運行状況や道路の状態、天候を確認しながら、出社・退社の適切なタイミングを判断しなければなりません。
また、台風時には公共交通機関が運休することも多く、従業員の出退勤が困難になることがあります。リモートワークを行っている場合でも、連絡が取れずに状況を把握するのが難しい場合があるでしょう。
オフィスビルの窓ガラスが割れたり、建物自体が損壊したりする可能性があります。浸水や強風によるオフィスの損壊は、業務で使用する機器や書類にも被害をもたらします。
また、建物周辺の道路が冠水することで、アクセスが困難になることも考えられるでしょう。従業員がオフィスに立ち入れない状況になってしまうと、事業継続に大きな支障をきたします。
自社が被害を受けなかった場合でも、取引先が被害を受けると事業継続が難しくなる可能性があります。例えば、納品の遅延や取引の停止などが発生し、供給網に影響を与えることがあるのです。これにより、自社の製品供給が滞るリスクが高まるでしょう。
物理的な損害による事業停止のリスクに加え、安全配慮の問題が後々業務に影響を与える可能性も考慮しなければなりません。
例えば、台風の暴風が吹き荒れるなかで出社した従業員が負傷した場合、企業は安全配慮義務を怠ったとされる可能性があります。その結果、巨額の損害賠償が発生し、企業の存続に関わる深刻な問題に発展することもあり得ます。
また、事業継続が滞ったために取引先に損害を与え、信用を失うリスクもあるでしょう。
前述したように、台風の発生は企業活動に大きな影響を及ぼすリスクがあります。台風による被害を最小限に抑え、業務の中断を避けるためには、事前に適切なリスク対策を実施することが重要です。
被害を最小限に抑えるためには、実際に機能する社内体制を構築することが必要です。指示命令の流れを明確にし、各部門で対策にあたる人員や責任者を決定し、危機管理マニュアルを作成します。その上で、すべての関係者に対して内容の徹底的な周知を行うことが重要です。
また、定期的な防災訓練を実施することで、従業員が緊急時に適切に行動できるようになります。訓練を通じて、危機管理マニュアルの内容を実践し、非常時の対応力を高めましょう。
出退勤に関する基準を明確にし、社内統制を強化します。リモートワークの場合も含め、対応を統一しながら、各自が状況に応じて柔軟に判断できるようにすることが重要です。上からの指示がなくても、従業員が自発的に行動できる環境を整えることが求められるでしょう。
台風被害の影響で通常の連絡手段が使えなくなる恐れがあります。そのため、社内での緊急時の連絡手段として、メールの一斉送信や電話連絡網など、複数の方法を事前に準備しておくことが大切です。
企業向けの安否確認システムは、アプリのプッシュ通知を利用し、リアルタイムで連絡を取ることが可能です。全従業員に現在の状況を確実に伝え、迅速な対応を促すためにも、このようなシステム導入も検討するとよいでしょう。
台風接近時などの緊急時に、従業員がテレワークで仕事を続けられる環境が整っていれば、一部の業務は休業を避け、自宅で業務をすることが可能です。さらに、従業員同士のリアルタイムなコミュニケーションや情報共有も容易になります。平常時から事前に定めたルールに基づいてテレワークを実践し、緊急時にもスムーズに運用できるよう準備を進めておきましょう。
また、テレワーク導入に伴い、勤怠管理が複雑になる可能性があります。そのため、勤怠に関するルールを事前に明確にして従業員に共有することが重要です。勤怠管理システムなどを導入して活用するのもよいでしょう。
従業員の帰宅が困難になる場合に備え、人数分×3日分の飲料水や食料、非常用トイレ、毛布を準備しておくと安心です。また、オフィスの立地条件に応じて、砂袋や土のう、水のうを備えることも検討しましょう。
さらに、災害時には長時間の電源喪失が想定されるため、パソコンや精密機械装置などのバックアップ手段が重要です。発電機や蓄電池を準備し、非常時の電力供給を確保しましょう。
重要なデータはクラウド上で管理し、定期的なバックアップを行うことが欠かせません。クラウド管理により、データは物理的なオフィスやサーバーに依存せず、安全かつアクセス可能な状態で保たれます。これにより、災害やシステム障害時にもデータの消失を防ぎ、業務の中断を最小限に抑えることができるでしょう。
台風は企業にとって大きな脅威となり得ますが、事前に適切な対策を講じることで、その影響をできるだけ減らすことが可能です。本記事で紹介した対策を参考に、企業は防災意識を高め、従業員の安全確保と事業継続のための準備を進めてください。これにより、企業は台風という自然災害に対しても強靭な体制を築くことができるでしょう。
災害対策の一環として、企業でも備蓄品の管理が重要となります。そこでおすすめしたいのが「Musute」です。「Musute」は、防災備蓄品の効率的な管理と寄付をサポートするサービスです。不要になった備蓄品を必要としている人々に届けることで無駄を減らし、企業は防災という責務を果たすことができます。ぜひ「Musute」を活用して、効率的な備蓄品管理を実現してみませんか。
(※1)気象庁「台風の大きさと強さ」
(※2)気象庁「台風の上陸数」