「食品ロス」とは、賞味期限間近の食べ物や食べ残しなど、食べられるのにも関わらず捨てられてしまう食品のことです。日本だけでなく、世界中で問題となっており、国は2030年までに食品ロスを半減させる取り組みを進めています。

食品ロスの削減は、SDGsの目標を達成するだけではなく、企業価値や社会的評価を向上させることにもつながるものです。本コラムでは、食品ロスの概要やSDGsとの関係性、企業が取り組むメリットや具体的な対策について解説します。

食品ロス問題の現状

食品ロスとは、まだ食べられるのにも関わらず廃棄されてしまう食品のことです。賞味期限切れで廃棄されてしまった食品や、家庭や外食時の食べ残し、スーパーなどの売れ残り食品なども食品ロスに該当します。

食品ロス問題は日本だけではなく、世界中で取り沙汰されている社会問題です。では一体、どのくらいの量の食品ロスが発生しているのでしょうか。日本や世界の現状について解説します。

日本の現状

農林水産省が発表した2021年度の日本の食品ロスの総数は年間523万トンに及んでいます。国民1人あたり年間約42キログラム、1日に換算すると約114グラム(お茶碗約1杯分)もの食品を捨てている計算です。

日本の食料自給率は38%と、先進国の中でも低い水準となっています。食品の半数以上を輸入に頼っているにも関わらず、多くの食品ロスを生み出しているのです。

こうした日本の状況から、政府は「食品ロス削減推進法」や「食品リサイクル法」などを施行し、2030年までに食品ロスを半減させる取り組みを推進中です(※1)。また、自治体や企業も食品ロス削減に向けさまざまな努力を行っています。

世界の現状

食品ロスは日本だけの問題ではありません。UNEP(国際連合広報センター)が発表した報告書によると、10億食分に相当する10億5,000万トンもの食料が世界中で廃棄されていることがわかりました。この量は、食料全体の約5分の1にあたります。

食品ロスが世界中で問題となる一方で、貧困や気候変動などで生じる食料不足によって飢えに苦しむ人々が大勢いるのも事実です。発展途上国を中心に7億人以上の人々が十分な食事が得られず栄養不足に陥っています。

10億食分もの食品ロスが発生しているにも関わらず、世界全体で7億人以上の人々が飢えに苦しんでいるという矛盾が生じており、深刻な社会問題となっているのです。

食品ロスが与える世の中への影響

食品ロスは単に食べ物が“もったいない”だけではありません。多くの食品ロスが発生している現状は、環境問題や社会問題、そして経済への問題にまで発展し、私たちの生活に大きな影響を与えています。

どのような問題があるのかを具体的に解説します。

環境問題

大量の食品ロスが発生することは、地球の環境にも影響を及ぼします。食品を廃棄する際に、地球温暖化の原因となる二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスを発生させてしまうのです。

日本では食品ロスを含めた食品廃棄物は、焼却する方法を取ります。食品廃棄物を土の中に入れ埋め立てることで処理をする国もありますが、どちらの方法でも温室効果ガスを発生させる一因となっているのが事実です。

焼却処理の場合は二酸化炭素が発生し、埋め立ての場合でも二酸化炭素の25倍もの温室効果のあるメタンガスが発生してしまいます。食品ロスが原因で排出された温室効果ガスは世界全体で約4.4ギガトンにも及ぶと言われており、地球温暖化を加速させる原因となっているのです。

社会問題

食品ロスは貧困問題や食料問題などの社会問題にも影響を与えています。国連世界食糧計画(WFP)による世界の食料援助は年間440万トンですが、世界中で食べ物を必要としている人々に行き渡っていないのが事実です。一方で、日本では食料援助量を超える食べ物が捨てられています。

また、食品ロスを含めた環境負荷によって発展しうる社会問題もあります。地球温暖化による気候変動が生じ、食料を生産できる国や地域が限定されてしまうことです。

増え続ける世界の人口に対して食料の生産量が減ってしまうため、食糧問題や貧困問題が拡大する可能性もあるでしょう。食料の需要に対して生産性が減少することによる、価格の高騰も考えられます。

経済問題

食品ロスは食べ物だけでなく、お金も無駄にしています。

たとえば、食品廃棄物を処理するためにはお金がかかります。環境省が全国の市町村および特別地方公共団体を対象に行った「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」によると、 令和2年度のごみ処理事業経費は約2兆円ほどです。国民1人当たりに換算すると16,800円です(※2)。

食品ロスも一般廃棄物の一部として処理されており、その費用の多くには私たちが納めた税金が使われています。

食品ロスを減らすことは無駄な経費の削減につながり、削減した税金を他の政策などに有効活用することも可能です。

SDGsと食品ロス削減の関係性

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標のことです。

2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標として、2015年に国連サミットで採択されました。日本を含めた先進国や発展途上国、すべての国が積極的に取り組んでいます。

SDGsには17のゴールが設定されています。その中の、目標12「つくる責任つかう責任」を達成するためには、食品ロス削減が欠かせません(※3)。

目標12では「持続可能な方法で生産し、責任をもって消費する」ことを目指しており、具体的な指標となる11のターゲットを挙げています。その中でも3つ目のターゲットでは、お店や消費者から捨てられる1人当たりの食料を半分に減らすことを掲げています。

食品ロスを削減することでSDGsの目標12達成に貢献できるだけではなく、間接的に飢餓や気候変動を抑えられるでしょう。食品ロス削減に対する取り組みが、SDGsのさまざまな目標の達成につなげられるのです。

企業における食品ロス削減のメリット

家庭だけではなく、企業も積極的に食品ロス削減に取り組むことが重要です。社会貢献につながるだけでなく、企業のブランド価値や社会的評価を高めたり、コスト削減も可能になるでしょう。

企業が食品ロス削減に取り組んだ際のメリットについて、くわしく解説します。

企業のブランド価値・社会的評価の向上

SDGsの取り組みが浸透している中、消費者は社会・環境問題に対する企業姿勢を重視する傾向にあります。そのため、企業が食品ロス削減の取り組みを行うことによって、企業のブランド価値や社会的評価を向上させることにつながるでしょう。

SDGsの目標達成に貢献することは、企業が社会的な責任を果たしていることにもなります。企業イメージや評価が向上すれば、商品の売上や集客アップも期待できるでしょう。

廃棄物処理にかかるコストの削減

前述したとおり、食品ロスを廃棄するためには多くのお金がかかります。食品ロスを減らせれば処理にかかっていた費用も削減できるため、企業のコスト削減につながります。削減したお金を他の重要な業務に充てることもできるでしょう。

また、賞味期限が近い商品の価格を下げたり、余った商品を寄付したりするなど、捨てずに有効活用することも重要です。コスト削減に加え、廃棄物処理時の二酸化炭素を減らし、地球温暖化抑制にもつながります。

企業ができる食品ロス対策

企業における食品ロスの原因として、賞味期限が迫った商品在庫の廃棄があります。しかし、各企業で販売している商品の賞味期限だけでなく、災害に備えて用意している「防災備蓄品」内の食品にも注意が必要です。

幸いにも災害が発生せず、未使用のまま賞味期限間近や賞味期限切れとなった食品を破棄することも食品ロスにつながります。ここでは、賞味期限間近の商品や防災備蓄品など、企業が保有する食品に対してできる食品ロス対策について解説します。

賞味期限の延長

賞味期限とは、「決められた日付まで品質が変わらずおいしく食べられる期限」のことです。賞味期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありません。しかし、販売や消費をするうえで、捨てるか否かの判断基準となります。

鮮度を保つ素材を使用した包装をしたり、個包装や少量パックにしたりすることで酸化を防ぎ、賞味期限を延長する工夫を行うことは企業ができる食品ロス対策です。売れ残りや使い切れずに捨ててしまう状況も防げるでしょう。

賞味期限が近い食品を割引価格で販売する

賞味期限が近い食品を“訳あり食品”として割引価格で販売することも対策として有効です。売れ残りを減らせるだけでなく、消費者側もお得に購入できるため、家計の手助けと食品ロス削減を同時に行えます。

実際に、大手スーパーマーケットチェーンやオンラインショップで賞味期限が近い商品を割引価格で販売しています。

フードバンクへの寄付

フードバンクとは、包装に印字ミスがあったり賞味期限が近かったりすることで販売や使用できなくなった食品を福祉施設などに寄付するボランティア活動です。実際に大手レストランチェーンがフードバンクへの寄付を行った事例もあります。

また、防災備蓄品を入れ替える際に残った食品をフードバンクに寄付する活動を行っている企業もあります。

フードバンクへの寄付は、食品ロスを防ぎながら社会貢献もできる活動ですが、各受け入れ団体によって寄付できる食品に定めがあることに注意が必要です。

AI活用による在庫管理の最適化・需要予測

AI活用により、食品ロスの削減に取り組むことも可能です。

AI技術を活用することで、正確な需要予測が行われると同時に、最適な在庫管理が期待できます。最終的には、過剰な食品の発注を防ぐことができるため、食品ロス削減につながるでしょう。

また、防災備蓄品管理にAIを活用することも有効です。備蓄品の種類や数量、賞味期限の把握などを容易にでき、起こりうる災害に対して万全に備えることができます。

まとめ

今回は、食品ロスの概要やSDGsとの関係性、企業が食品ロス削減を行うメリット、対策例などに関して解説しました。世界中で食品ロスが問題となっている中、日本企業においても対策を講じる必要があります。

企業が食品ロス削減を行うことで、企業価値や社会的評価の向上、コスト削減のメリットがあります。商品在庫だけでなく、防災備蓄品の食品ロスも削減していくことが重要になるでしょう。しかし、在庫管理はルールやタスクが膨大で、最適に管理するのは容易ではありません。

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