企業において、防災備蓄品の賞味期限切れは避けられない問題の1つです。日本国内だけでも、毎年数百万トンもの食品が廃棄されており、その一部は企業の防災備蓄品によるものです。このようなフードロス(食品ロス)は環境への負担となるだけでなく、企業のコスト増大にもつながります。
しかし、この問題は適切な対策をすることで大幅に改善でき、同時にフードロスを削減することも可能です。本記事では、企業が防災備蓄品の管理を改善し、フードロスを減らすための具体的な方法について解説します。
フードロス(食品ロス)とは、まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品のことです。この問題は、環境への悪影響や経済的な損失など、さまざまな問題を引き起こします。
例えば、食品廃棄物が増えると、ゴミの焼却時に排出される二酸化炭素が増え、焼却後の灰の埋め立て問題も発生します。また、廃棄された食品の生産には多くの資源が投入されており、水やエネルギーの無駄遣いにもなるのです。
さらに、フードロスは倫理的な問題も含んでいます。食料不足に苦しむ人々がいる一方で、大量の食べ物が無駄にされている現状は改善が必要です。特に企業では、大量の食品が廃棄されることが多く、有効な対策が求められています。
世界中で年間約13億トンの食品が廃棄されており、その中には防災備蓄品も含まれます。企業にとっては、フードロス削減はコスト削減と社会的責任の両面で重要な課題です。また、SDGs(持続可能な開発目標)の一環としても、フードロス削減は積極的に取り組むべきテーマとなっています。環境への負荷を減らし、資源の有効活用を促進するためにも、企業のフードロス削減は急務といえるでしょう。
世界の人口増加が進むなかで、フードロスの問題に何も対策を講じなければ、栄養不足で苦しむ人々がますます増え、貧困問題がさらに深刻化する恐れがあります。このような事態を防ぐためにも、フードロス削減に向けた取り組みを進めなければなりません。
防災備蓄品は、災害時に備えて一定量の食品などを確保しておくものです。しかし、これらの備蓄品は適切に管理されないと、賞味期限が過ぎてしまい、結局廃棄されることが多くなってしまいます。
では長期保存ができ賞味期限の長い防災食品が、なぜフードロスになってしまうのでしょうか。その背景について詳しくみていきましょう。
近年、大規模な自然災害の発生や新型コロナウイルス感染症の影響により、防災食品市場は拡大を続けています。2020年には、新型コロナウイルス感染症の流行による家庭備蓄の需要増加で、国内の防災食品市場は2019年比4.2%増の224億円に達しました(※1)。
2021年に行われた株式会社富士経済の調査では、備蓄を目的とした米飯類やパン、保存水などの9品目の市場が分析されました。品目別では、主食として優先度の高い米飯類が市場をけん引しており、味のバリエーションや保存期間の長期化が進んでいます。また、パン・乾パンは即食性が高く、参入企業や商品の増加、パッケージの改良によって市場が活性化しています。さらに、菓子・甘味類の需要も増加しており、多くの品目で市場が拡大していることがわかりました。
多くの企業や自治体では、さまざまな防災備蓄品を確保しています。2020年4月現在、都道府県と市町村を合わせて米は13,000トン、乾パンは1,760万食、インスタント麺は約53万個が備蓄されていると国会の答弁で発表されました(※2)。これらの防災備蓄品は、災害発生時に迅速かつ効率的に必要な物資を供給するための重要な役割を果たしています。
しかし、幸いにも災害が起こらなかった場合、これらの備蓄品は賞味期限切れによって廃棄されることが多く、フードロスの一因となっています。賞味期限が過ぎた食品は安全性に問題がない場合でも法的に使用が難しく、廃棄処分しなければなりません。また、廃棄処分にかかる費用や環境への影響も無視できないでしょう。
賞味期限前であっても、防災備蓄品が廃棄されるケースがあります。一部の企業では、賞味期限が近づいた食品を早めに処分することがリスク管理の一環として行われているため、まだ食べられる食品が廃棄されているのです。
さらに、防災備蓄品も他の食品と同様に、3分の1ルールが適用される場合があります。3分の1ルールは、製造日から賞味期限までの期間を3等分し、最初の3分の1を過ぎた時点で小売店への納品を停止するというもので、結果としてまだ十分に食べられる食品が廃棄される原因となっています。
食べられるはずの防災備蓄品が廃棄されることによるフードロスを防ぐために、どのような対策ができるのでしょうか。今回は6つの方法をご紹介します。
賞味期限が近づいた防災備蓄品をフードバンクに寄付することは、フードロス削減の有効な方法の1つです。フードバンクは、必要としている人々に食品を提供する活動であり、企業が食品を寄付することで社会貢献にもつながります。寄付された食品は、生活困窮者や社会福祉施設などで有効活用されるため、企業のイメージ向上にも寄与するでしょう。
また、フードバンクへの寄付は、企業の社会的責任(CSR)の一環としても評価され、企業の信頼性を高める効果も期待できます。さらに、寄付活動に参加する社員のモチベーション向上や、地域社会との連携強化にもつながるでしょう。
ローリングストック法は、日常的に防災備蓄品を使用し、消費した分を新たに補充する方法です。この方法を取り入れると、賞味期限切れを防ぎながら備蓄品の新鮮さを保つことができます。例えば、企業の社員食堂で防災食品を使用し、その分を補充することで、常に新しい食品が備蓄される状態を維持できるでしょう。
ローリングストック法による管理を行うと、食品の無駄を最小限に抑えられるだけでなく、コスト削減にも寄与します。
このように企業全体で防災備蓄の重要性を認識し、効率的な管理を行うことにより、持続可能な資源利用が実現できます。防災備蓄品の適切な管理は、企業の環境への取り組みとしても評価されるでしょう。
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賞味期限が近づいた防災備蓄品を社員に配布することは、企業と社員の双方にとって有益な方法です。一般的に、防災備蓄品は賞味期限が切れる前に入れ替えることが多いため、まだ食べられる状態の食品を無駄にせずに済みます。
また、廃棄する予定だった食品を配布することで、廃棄コストを削減可能です。企業は廃棄処理費用を節約でき、社員は配付された食品を日常の食事に利用できるため、双方にとって経済的なメリットがあります。
食品を配布することで、社員に対する福利厚生の一環として評価されることも期待できます。社員は無料で食品を受け取ることができるため、満足度が向上するでしょう。
賞味期限が切れてしまった防災備蓄食品を飼料として再利用することも可能です。適切な処理を行うことで、食品が動物の飼料として再利用され、廃棄物の削減につながります。食品廃棄物のリサイクルは、環境保護の観点からも重要であり、企業が取り組むべき課題の1つだといえるでしょう。
賞味期限が近づいた防災備蓄品を業者に引き取ってもらうことも可能です。近年では、防災備蓄品の手配から回収までをアウトソーシングする業者が現れています。これにより、企業や自治体は備蓄品の管理負担を軽減し、効率的に運用することが可能です。
業者のサービスは、備蓄品の選定や入れ替え、在庫確認、回収と多岐にわたります。ただし、業者によって対応できる備蓄品の種類や料金体系などが異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
防災備蓄品の管理システムを導入することで、賞味期限の管理を効率化することができます。自動的に期限が近づいた食品を通知する機能のあるシステムを活用すれば、廃棄リスクを大幅に減少させることが可能です。また、このようなシステムを活用することで、在庫の最適化や補充のタイミングを適切に管理できるでしょう。
さらに、クラウドベースのシステムにより、複数の拠点での備蓄品管理が一元化され、リアルタイムでの状況把握が可能となります。これにより、担当者間の連携が円滑になり、全体的な運用効率が向上します。防災備蓄品の管理システムは、業務負担を軽減し、企業の防災体制の構築に欠かせないツールだといえるでしょう。
防災備蓄品の賞味期限切れによるフードロス(食品ロス)は、企業が適切な対策を講じることで大幅に削減できます。今回ご紹介した方法を参考に、さまざまな方法を組み合わせて実施することが重要です。これらの対策を通じて、企業はフードロス削減だけでなく、社会貢献やコスト削減にもつながる持続可能な活動を推進することができるでしょう。
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