食品ロス削減と貧困問題解決の両方に貢献できる取り組みとして、近年「フードバンク」が注目を集めています。フードバンクを活用することで、企業は社会貢献活動への参加、企業イメージの向上、コスト削減など、さまざまなメリットを得ることが可能です。
本記事では、フードバンクの仕組みや具体的な取り組み事例、そしてフードバンク活動に参加するメリットについて詳しく解説します。
私たちの身の回りでは、品質に問題がないのに、売れ残った、賞味期限が近いなどの理由で捨てられてしまう食品が数多く存在します。一方で、経済的な事情やさまざまな理由により、十分な食料を得ることが難しい人々がいるのも現実です。フードバンクは、このような「食の格差」を解消するための重要な役割を担っています。
世界で初めてのフードバンクは、1967年にアメリカで誕生しました。日本では、食品ロスや貧困問題が深刻化するなかで、2000年代に入り解決策の1つとして注目を集めるようになりました。「セカンド・ハーベストジャパン」を筆頭に、多くの団体が設立され、2023年現在では全国に215団体が活動しています。これらの団体が扱う食品の量は、年間約6,000トンにものぼると言われています。
フードバンクは、企業や団体から寄付された食品を、必要としている人々に無料で提供する活動です。食品ロス削減と食料支援という、2つの大きな目的を達成する取り組みと言えるでしょう。
具体的には、企業などが販売できない食品を寄付し、フードバンクはその食品を安全に保管して、必要な団体や施設、生活困窮世帯などに届けています。
フードバンクと似た言葉に、フードドライブやフードパントリーという言葉があります。その違いについてみていきましょう。
フードドライブは、企業だけでなく、一般家庭など個人が食品を寄付する活動です。家庭で余っている食品を、フードバンクや福祉団体に提供することで、食料支援を支えます。
また、フードバンクやフードドライブで集められた食品を、必要な人に直接配布する場所のことをフードパントリーといいます。フードバンクが食品を団体や施設へ配送するのに対し、フードパントリーは、集まった食品を必要な人に直接手渡す点が大きな違いです。
フードバンクは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」達成に向けた重要な活動です。食品ロス削減は、企業だけでなく、私たち一人ひとりの意識を変えることが欠かせません。フードバンクやフードドライブを通じて、まだ食べられる食品を有効活用することで、持続可能な社会の実現に貢献できるでしょう。
フードバンクは、食品製造会社やスーパーマーケット、農家などから、賞味期限が近いなどの理由で廃棄せざるを得ない食品を寄付してもらい、それを必要としている人々に届けます。
寄付された食品は、フードバンク団体によって、安全性の確認や適切な保管が行われた後、福祉施設や団体、子ども食堂などに届けられるのです。地域によってニーズは異なるため、フードバンクは、それぞれの地域の特徴を考慮しながら、本当に必要な人に、必要な食品が届くように活動しています。
フードバンクには、大きくわけると次の4つの機能が求められます。
・企業から提供される食品を受け取り、保管し、必要な団体に配送する物流機能
・提供される食品と各団体が求める食品をマッチングする機能
・食品の安全性を管理する機能
・食中毒やアレルギーなどのトラブルを防止する機能
フードバンクは、地域社会において、食に関する課題解決に貢献する重要な役割を担っているといえるでしょう。
フードバンクが近年注目されている理由は主に2つあります。
世界では、生産された食品の3分の1にあたる13億トンもの食料が毎年廃棄されています。日本では、年間約612万トンの食料が廃棄されているのが現実です。まだ食べることができるにもかかわらず捨てられるこれらの食品ロスは、深刻な問題となっています。
このような状況のなか、フードバンクは食品ロス削減の解決策として期待されているのです。
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日本では、先進国の中では相対的貧困率が高く、子どもの7人に1人が相対的貧困状態にあるといわれています。フードバンクは、こうした人々に必要な食料支援を行うことで、貧困問題の解決にも貢献しています。
フードバンクは、食品を受け取る人と提供する企業、そして行政にも、それぞれ多くのメリットをもたらす活動です。
食品を受け取る人は、食費を節約できるだけでなく、食事を安定してもらうことができます。これは心の安定にもつながるでしょう。さらに、食事を通して食の大切さを学んだり、食育の機会を得たりすることも期待できます。
フードバンクへの食品提供は、企業にとって、CSR活動や社会貢献活動として企業イメージの向上につながり、消費者や株主へのアピールになります。また、廃棄予定だった食品を有効活用することで、コスト削減につなげることが可能です。さらに、食品を無駄にせず、誰かの役に立てているという実感を得ることで、従業員のモチベーションアップにも貢献するでしょう。
行政にとっても、フードバンクは重要な役割を果たします。食品ロスを削減することで、SDGsの目標達成や環境負荷の低減に貢献できるだけでなく、生活困窮者への食料支援は、福祉支援にかかる費用の軽減につながります。また、フードバンクの活動を通して行政と民間が連携することで、地域活性化を促進する効果も期待できるでしょう。
次に、日本の企業・団体におけるフードバンクの具体的な取り組み事例をみていきましょう。
2016年から活動している認定NPO法人フードバンク渋谷(※1)は、行政と協力し、集めた食品を必要とする人へ提供するフードパントリーの役割も担っています。
行政から防災備蓄品の提供を受ける一方、区の相談窓口ではフードバンク渋谷の案内状を発行してもらうなど、密接な連携を図っています。食料支援を通じて、生活困窮者の生活支援や保護を重視し、誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指しているのです。
熊本県を拠点に活動する一般社団法人ひのくにスマイルプロジェクト(※2)は、代表の茶木谷与和さんが児童相談員時代の経験を活かし、子ども食堂を設立したことから始まりました。
その後、貧困や食品ロス問題の深刻さを目の当たりにし、「フードバンクひのくに」を設立しました。現在は、フードバンク、子ども食堂、子ども食堂ネットワーク、子育て相談の4つの柱で活動しています。子どもたちの笑顔と安心できる居場所を守ることが、地域や日本の未来を変える一歩になると信じて、活動を続けています。
鳥取県で健康茶の製造・販売を行う株式会社ゼンヤクノー(※3)は、食品ロス削減に積極的に取り組む企業です。廃棄されていたチコリの根を焙煎し、チコリコーヒーとして開発するなど、独自の取り組みで食品ロス削減に貢献しています。また、賞味期限が迫った商品をフードバンクへ寄贈するなど、社会貢献活動にも力を入れています。
ここでは、フードバンクに食べ物を支援する場合と、フードバンクから食べ物を受け取る場合について、その方法を具体的にみていきましょう。
支援できる食品は、米、麺類、缶詰、お菓子、飲料、調味料、インスタント食品、保存食など、日持ちする食品です。ただし、団体によって受け入れ可能な品目や賞味期限が異なるため、事前に確認するとよいでしょう。
寄付方法は、フードバンクの運営事務所へ直接持ち込む方法があります。持ち込みが難しい場合は、宅配を利用することも可能です。また、イベント会場、ショッピングモール、ドーム球場などで行われるフードドライブに持ち込むのもよいでしょう。最近は、コンビニエンスストアでもフードドライブを実施している場合があります。
フードバンクは、生活困窮者、子育て世帯、ひとり親世帯、高齢者、障害者、滞日外国人など、さまざまな困難を抱える人々へ食品を提供し支援しています。支援対象はフードバンクによって多少異なるため、まずはお住まいの地域のフードバンクに問い合わせてみましょう。
食品の受け取り方法は、子ども食堂やシェルターといった支援団体を経由する方法と、フードバンクから直接受け取る方法があります。直接受け取る場合は、炊き出し、食料無料配布イベント、フードバンク拠点でのピックアップといった方法で受け取り可能です。
イベント情報はSNSやニュースで発信されるため、こまめに確認し、フードバンクの支援を積極的に活用してみましょう。
フードバンクへの食品提供は、企業価値の向上、廃棄コスト削減、従業員のモチベーションアップなど、多くのメリットをもたらします。
しかし、フードバンクへの提供には、手間がかかることも事実です。納品調整を行ったり、遠方の団体とのやり取りをしたり、物量によっては複数のフードバンクとの契約が必要となるケースもあります。これらの状況から、寄付する食品の管理が難しいなどと感じる企業もあるのではないでしょうか
Musuteは、そんな課題を解決する防災備蓄品管理のDXソリューションです。廃棄予定の防災備蓄品を必要とする人々に届け、企業とフードバンク、そして社会をつなぎます。デジタル管理による効率化や、フードバンクとのマッチング支援により、企業は負担を最小限に抑えながら、食品ロス削減と企業価値向上を実現できます。ぜひこの機会に、Musuteを活用したフードバンクへの参加を検討してみませんか。