企業の災害対策として社内に非常食を確保しておくことは重要です。しかし、非常食の選定や管理には手間がかかり、担当者の負担になってしまうことも少なくないでしょう。

また、使われなかった防災備蓄食品が大量に廃棄されていることは社会問題になりつつあり、食品ロスにならない適切な方法を模索することも必要です。

社内に備蓄しておく非常食はどのように選び、管理すればよいのでしょうか。おすすめの非常食と管理方法について解説します。

非常食選定のポイント

企業に備蓄する非常食を選定する際には、防災備蓄品として販売されている商品を選ぶと、数年単位の賞味期限で長く保存ができるので安心です。

一般的な食品でも、条件に合致していれば非常食として活用できます。具体的には、長期保存できるものや非常時に調理せず食べられるものなどを選ぶとよいでしょう。

どのような食品が適しているのか、おすすめの非常食や選定のポイントをくわしく解説します。

重要な栄養素を補えるもの

非常食は、重要な栄養素を十分に補えるように選定しましょう。

乾パンやパックごはんなど、エネルギー源となる炭水化物を含む食品はもちろん大切です。しかし、備蓄しやすいことから、意識しておかないと炭水化物ばかりの食事になってしまいます。栄養が偏った食生活は体調不良の原因になるため、栄養バランスも考慮して非常食の選定を行いましょう。

手軽にタンパク質が摂れる食品なら、サバ缶やツナ缶といった魚介の缶詰、コンビーフや焼き鳥缶といった肉類の缶詰がおすすめです。

災害時は野菜不足になりがちで、口内炎や便秘になってしまう人も多いようです。野菜の乾物や野菜ジュース、ドライフルーツなどを備蓄して、ビタミンやミネラル、食物繊維の摂取もできるようにしておくとよいでしょう。

常温で日持ちするもの

災害などで停電してしまうと冷蔵庫や冷凍庫が使えなくなるため、非常食は常温で保存できるということが大切です。また長期保存できれば買い替えのスパンも長くなり、管理の負担も減らすことができます。非常食には常温で日持ちするものを選びましょう。

常温で日持ちする食品の例としては缶詰やレトルト食品、フリーズドライの食品などがあります。飲み物ではペットボトルの水やお茶、常温保存可能な紙パックのジュースやロングライフ牛乳などもおすすめです。

漬物や乾物といった昔ながらの保存食も重宝します。

調理がいらないもの

電気やガスが止まっていても食べられるように、調理がいらない食品であるということも重要です。カセットコンロなどで簡単な調理ができる食品も多数ありますが、まったく加熱調理ができない状況に陥ることも少なくありません。

缶詰やレトルト食品を選ぶときには、温めなくてもおいしく食べられるものを選んでおけば安心でしょう。

平常時は熱湯を使うカップ麺や乾麺でも、非常時は水で戻すだけで食べられるというものもあります。調理しなくても食べられるかを考えて選定することも、非常食選びのポイントとしておすすめです。

食べ慣れているもの

普段から食べ慣れているものを含めておくことも、非常食選定のポイントです。食べ慣れているものなら、食べ方や味の組み合わせなどに悩むことなく、非常時でもスムーズに食事ができます。

非常時は精神的にも不安を抱えがちなので、いつも食べているものがあれば安心できる、平常時の気持ちを取り戻せるといった点でもおすすめです。

非常食は「非常時だけに食べるもの」にこだわらず、「非常時でも食べられるもの」を意識して備蓄しておくとよいのではないでしょうか。平常時に試食し、おいしいと感じられるものや食べやすいものを選ぶというのも重要です。

しっかりと栄養が取れる食品に加えて、調味料やふりかけといった美味しさをプラスできる食品や、菓子やジュース、缶コーヒーといった楽しみになるような食品を備蓄しておくのもおすすめです。

食器に移し替える必要がないもの

災害などの影響で水道が使えない状況になると、洗い物ができなくなることも少なくありません。容器をそのまま食器代わりにして食べられるものなど、食器に移し替える必要がないものは非常食としておすすめです。

非常食を備えているのにもかかわらず、必要な食器が揃っていないため食べにくいという事態は避けたいところです。非常食として販売されている商品には、フォークやスプーンが付属しているものもあるため、選定時に確認しておくとよいでしょう。

処分しやすい容器を使ったもの

非常食を選ぶ際には、容器の処分がしやすいかどうかといった点にも配慮しましょう。

災害の影響などでゴミの収集ができない状況になっていると、大量のゴミが溜まってしまいます。ゴミの量をできるだけ削減するために、食べた後はコンパクトに折りたたんで捨てられるなど、処分しやすい容器のものがおすすめです。

非常食の必要量の目安

電気・水道・ガス・通信といったライフラインが大きな災害で止まってしまうと、復旧に3日以上かかると言われています。場合によっては復旧までに数週間を要することもあります。

災害発生直後は、行政からの公的物資などの配給が3日以上到着しないケースもあります。そのため、最低限でも1人当たり3日分を想定して備蓄することを心がけましょう。企業が用意すべき備蓄量を条例で定めている自治体もあります。

3日間に必要な非常食は1人当たり、主食とおかずの食事が9食分、お菓子は6食分程度が目安とされています。保存水は1人1日3リットルが目安とされているので、3日分で9リットルの備蓄が必要です。

社内にストックしておく備蓄品の総量は、従業員数に合わせて設定しましょう。全ての従業員の人数分を計算して、備蓄しておくことをおすすめします。

災害時に交通機関がストップしてしまうと、通勤者が帰宅困難に陥ってしまうことも少なくありません。復旧の見通しがつかないような大きな災害では、雇用形態にかかわらず家に帰れなくなる人が多いでしょう。混乱することのないように、働く人全員分の備蓄をしておくことが重要です。正社員だけでなく派遣社員やパート、アルバイトなどの従業員も含めた人数で必要量を計算してください。

来客や地域住民へのサポートなども考慮して、従業員数プラスアルファの備蓄を用意しておくとさらによいでしょう。

備蓄する非常食の量によって、かかるコストや確保すべき保管スペースの広さは変わります。企業で非常食を備蓄する際には、まず必要量をしっかり把握したうえで準備しましょう。

非常食の備蓄方法

非常食の備蓄方法は大きく分けて2つあります。

1つ目は非常時専用の食品として、保管に適した加工のされた食品を備蓄する方法です。防災備蓄品として販売されている商品なら長期間の保存ができるため安心です。しかし、防災備蓄品の非常食だけでは栄養に偏りが出てしまったり、嗜好品など食べる楽しみになる食品が少なくなったりといったデメリットがあります。

そのため2つ目の方法である「ローリングストック」も組み込むことがおすすめです。

ローリングストックとは?

ローリングストックとは、普段食べている食品を少し多めに買い置きしておくという備蓄方法です。

買い置きした食品は日頃から、賞味期限が切れる前に食べていきます。そして、食べた分をまた買い足して備えるというサイクルを繰り返すことで、常に一定量の食品を備蓄できます。

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ローリングストックのメリット

ローリングストックのメリットは大きく2つあります。

1つ目は、商品の賞味期限について管理がしやすくなるという点です。ローリングストックで賞味期限が早いものから食べて、新しいものを買い足していけば、常に賞味期限に余裕がある状態で備蓄が行えます。非常時に、備蓄した食品が期限切れで食べられないといった事態を防げるでしょう。

2つ目は、普段食べているものを備蓄しておくことで、非常時も食べ慣れた食事ができるという点です。平常時と同じような食生活を維持できれば、災害などの不安な状況の中でも落ち着きを取り戻せるのではないでしょうか。

ローリングストックなら比較的賞味期限が短いものでも備蓄が可能になります。栄養があるものや好きな食べ物もローリングストックで備蓄しておくとよいでしょう。

加工されていない食品を非常食として使うときの注意点

非常食として加工されていない食品を非常食として使うためには、注意が必要な場合もあります。特に賞味期限と保管場所については、しっかり注意点を把握しておきましょう。

普通の食品の賞味期限は、非常食として加工されたものよりもこまめにチェックしておく必要があります。

日常的に使うことを想定して作られている一般的な食品は、長期保存向けに加工されている非常食に比べて、賞味期限が比較的短いものです。うっかり期限を過ぎてしまわないように、古くなる前に消費し、買い足していくことをおすすめします。

非常食として加工されていない食品は、保管場所にも気を付けましょう。さまざまな場所で保管することを想定して作られている非常用の商品とは違い、一般的な食品の中には長期保存に不向きな容器や包材のものもあります。洗剤や薬品などと同じ場所で保管するとにおい移りがあるものや、湿気や水分が多いとカビが生えてしまうものもあるので、商品に記載された保管方法を必ず確認して、指示通りに保管してください。

まとめ

もしものときに従業員をサポートするためには、日頃から非常食を備蓄しておくことが重要です。専用の加工がされた非常食を長期保存するだけではなく、栄養や好みに配慮した一般的な食品もローリングストックしながら、上手に備蓄していくとよいでしょう。

しかし、企業で防災備蓄やローリングストックを行う場合、賞味期限の近い食品をどうするかといった点が課題になります。管理状況の確認が間に合わないまま賞味期限が切れてしまい、廃棄してしまうという企業も多く、社会問題になりつつあるのが現状です。

そこでMusuteは、防災備蓄品を効率的にデジタル管理し、賞味期限が近くなったら寄付の形で必要な人々に届ける仕組みづくりに取り組んでいます。「無、捨て」「結、手」をテーマに、備蓄品管理のDX化や非常食の選定、寄付先のマッチングをサポートし、循環型の廃棄ゼロの世界を目指します。

自社の非常食管理を効率化したい方や、社会に役立つ防災備蓄を導入したいとお考えの方は、ぜひMusuteの導入をご検討ください。