企業が行う防災訓練は、従業員や顧客の命を守り、事業を継続していくために欠かせません。さまざまな災害に対する備えとして、企業が実施すべき訓練について理解することは、いざという時の迅速かつ適切な対応につながります。
この記事では、企業が実施すべき防災訓練の種類やその具体的な内容、また実際に役立つ訓練を実施する際のポイントを詳しく解説します。従業員や顧客の安全を守り、企業としての責任を果たすために、実践的な防災訓練の方法を学びましょう。
企業が防災訓練を実施する理由は何なのでしょうか。ここでは主な理由を3つご紹介します。
まず1つ目の理由は、企業には、従業員や顧客の安全を守る責任があるためです。防災訓練は、非常時における対応方法を従業員が知っておくための重要な機会となります。
企業が想定すべき災害は、地震や津波などの自然災害、火災などの二次災害、そしてこれらによる従業員の負傷など多岐にわたります。従業員や顧客の命を守るためには、企業が主体となって防災訓練を実施することが欠かせません。具体的には、それぞれの災害に合った最適な行動や避難場所、顧客対応の方法など、さまざまな状況に合わせた訓練を行うことで、適切な対応策が見えてくるでしょう。
2つ目は、事業を継続するためです。企業は災害に見舞われた際でも、事業の中断を防ぐこと、またたとえ中断してしまった場合でも早期に再開することが求められます。防災訓練を含むBCP対策は、被害を最小限に抑え、主要な業務の継続・早期復旧を図るために重要です。災害時の事業継続方法や優先すべき業務の選定、日常的に行うべき対策を事前に決めておくとよいでしょう。
3つ目は、顧客への影響を最小限に抑えるためです。災害による影響は企業だけでなく、顧客にも及びます。具体的には、納期に間に合わない、サービスの提供が難しくなるなど、さまざまな問題が発生する可能性があります。顧客への影響を可能な限り少なくするためにも、定期的な防災訓練が必要です。
このように、企業が防災訓練を行うことは、従業員や顧客の命を守るだけでなく、事業の継続と顧客への影響を最小限に抑えるためにも重要です。
近年、東日本大震災などの大規模な自然災害が相次いで発生し、多くの被害が出ています。このため、防災に対する意識が少しずつ高まっている一方で、依然として防災対策が十分に普及していないという現状があります。人々が災害を自らの問題として認識していないことも課題の1つです。
2022年にセコム株式会社が実施した「防災に関する意識調査」によると、全国の20歳以上の男女500人のうち、9割以上が「水害に対する危機意識が5年前に比べて高まった」と回答しました。しかし、実際に防災対策を行っている人は約4割にとどまり、防災意識の低さが浮き彫りになっています(※1)。
個々の防災意識が低いままでは、自治体や企業、学校などが防災対策マニュアルを整備していても、実際に個人が十分な対策をとらない可能性があります。より多くの人々に防災の重要性を理解してもらうためには、防災訓練への参加を促進することが不可欠です。防災訓練を通じて、実際の災害時に役立つ知識とスキルを身につけることができ、家族や地域の防災意識も高めることができるでしょう。
防災訓練は、具体的なシチュエーションに応じてさまざまな種類があります。企業が実施すべき従業員向けの防災訓練の種類とその内容について詳しく解説します。
初期消火訓練は、火災発生時に消火器やバケツリレーなどにより火災の被害を最小限に抑えるための訓練です。火災の初期段階での対応は非常に重要であり、迅速な行動が被害の拡大を防ぎます。訓練では、実際に消火器を使用して、使用方法や注意点を確認しましょう。緊急時に冷静に対応するためにも、訓練で十分に理解しておくことが重要です。
火災の影響を最小限に抑えるには、早期の発見と迅速な初期対応が欠かせません。火災が発生した際の行動をしっかりと理解しておくために通報訓練を行い、従業員が直接火災を見つけた場合や自動火災報知器が作動した場合など、さまざまな状況に対応できるようにしましょう。
火災発生時には、まず自身の安全を確保することが最優先です。安全を確認した後、冷静に119番に通報をすることが重要です。119番通報から消防車の到着までに平均5分以上かかるため、迅速に通報しなければなりません。小規模な火災やすでに消火された場合でも、火災を発見したら必ず119番に通報しましょう。
応急救命訓練では、心肺蘇生法やAED(自動体外式除細動器)の使用方法を学びます。急病人やけが人が発生した場合に素早く対応するために不可欠な訓練です。訓練で心肺蘇生法やAEDの使用方法を確認しておくことで、緊急事態に遭遇した際でも冷静かつ適切に行動できます。救命講習は、消防署だけでなく、オンラインでも受講可能です。それぞれの企業に合った訓練を実施しましょう。
救出救助訓練は、閉じ込められたり、大きなものが倒れて下敷きになったりするシチュエーションを想定して行います。この訓練では、工具や担架を用いて負傷者を安全に救出し、搬送する方法を学びます。
オフィスには、機器や機材といった大きなものが多数あり、これらが転倒して下敷きになった場合、一人だけの力では救助が難しいことも珍しくありません。そのような状況に備えて、普段は使用しない工具や担架などの扱いに慣れておくことが重要です。
避難誘導訓練は、災害発生時に安全な場所へ迅速に避難するための重要な訓練です。例えば、地震時には机の下に身を隠す、火災時には適切な避難経路を通って外へ脱出する、津波や洪水の際には高所へ移動するといったことが考えられます。
訓練では、避難経路の確認や避難経路上の障害物の対策、避難誘導の役割分担などを具体的にシミュレーションしておくとよいでしょう。避難後の点呼や報告の手順も確認しておくと安心です。
安否確認訓練は、災害発生時に従業員の安否を迅速に確認できるようにするための訓練です。連絡手段や確認方法を事前に決めておくことで、非常時にも迅速に対応できるでしょう。安否確認システムなど災害発生時の安否確認に利用できるツールを導入しておくのがおすすめです。訓練では、非常時と同様に安否確認の連絡をして、従業員が回答します。
帰宅困難対策訓練は、災害時に公共交通機関が停止し、帰宅が困難な場合の対応方法を確認する訓練です。帰宅困難時の対策として、会社における一時滞在場所の確保や、必要な備蓄品の確認などを行います。
また、徒歩で帰宅する際のルートの確認も行い、災害時に安全に帰宅できるよう備えます。さまざまな場合を想定した訓練を行っておくと、非常時でも冷静に判断することができるでしょう。
防災図上訓練では、災害時の避難経路や避難時の危険箇所を図上で確認します。他にも、実際に発生する可能性の高い災害を想定し、その発生時の対応を図上でシミュレーションする訓練もあります。このような訓練を通じて、より実践的な防災対応を身につけることが可能です。
防災訓練のシナリオや内容が形式的だと、参加者の防災意識を高めることが難しくなります。参加者が自分ごととして取り組むためには、重要なポイントを理解し、訓練に反映させることが必要です。ここでは、効果的な防災訓練を実施するためのポイントについてみていきましょう。
防災訓練を実施する際には、明確な目的を設定することが重要です。何を目指して訓練を行うのか、具体的な目標を明確にすることで、訓練の効果を高めます。例えば、従業員全員が初期消火の方法を習得することや、避難経路を正確に把握することなど、具体的な目標を設定して、訓練前に共有しておくとよいでしょう。
訓練を行う際には、具体的な災害状況やシナリオの設定が欠かせません。例えば、建物やライフライン、交通機関の被害状況を詳細に設定しておくと効果的です。また、実際の音声アナウンスを取り入れることで、より現実感のある訓練が可能となります。
実際の災害を想定したシナリオを作成し、リアルな訓練を行うことで、従業員の対応力を向上させることができるでしょう。さらに、訓練の度に被害の規模や場所を変えることで、より効果的な訓練が実現します。
防災訓練は災害対策の一環として重要ですが、それだけでは十分とは言えません。企業が災害に備えるためには、防災備蓄品もきちんと準備しておくことが不可欠です。非常時に必要な物資としては、飲料水や非常食、医薬品、毛布などが挙げられます。これらを備蓄するだけでなく、いざという時に期限切れになっていることのないように、定期的にチェックし、管理することが重要です。
さらに、日頃からデータをクラウド管理しておくことも欠かせません。災害時には紙の文書や電子データが破損してしまうリスクが高まります。そのため、特に重要なデータはクラウドに保存し、定期的にバックアップをとっておくと安心です。クラウド管理により、災害発生時でも遠隔からアクセスが可能となり、業務の継続や迅速な復旧が期待できるでしょう。
このような総合的な災害対策を実現するためには、最新の技術を活用するのがおすすめです。「Musute」を導入すると、企業の防災備蓄品の管理と運用をデジタル化し、不要な備蓄品を社会で必要とする人々に届けることができます。これにより、廃棄コストを削減しながら社会貢献も実現可能です。さらに、「Musute」を活用することで、企業の管理負担を大幅に軽減し、どこからでも備蓄品の状況をリアルタイムで確認できるようになります。「Musute」を活用して、社会に貢献しながらより持続可能な備蓄品管理を目指しませんか。