「こども食堂」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。しかし、具体的にどのような活動をしている場所なのかということまでは、知らないという人も多いかもしれません。
子どもだけのために作られている食堂と思われがちですが、実際は地域の親子の憩いの場としても機能する場所であり、近年注目を浴びています。企業によっては防災備蓄品の寄付などの形で支援している会社も多いようです。
こども食堂とはどのようなものかを詳しく解説し、こども食堂のためにできることや、企業が支援するための具体的な方法を紹介します。
「こども食堂」とは、子ども一人でも無料または安価で利用できる食堂です。金銭的に十分な食事を用意できない家庭の子どもに栄養のある食事を提供することはもちろん、家族と食卓を囲んで食事をする「共食」が難しい子どもたちに共食の機会を提供する取り組みとしても注目を集めています。
公的な制度はなく、民間が自発的に行っている取り組みで、「みんな食堂」や「地域食堂」という名称で展開しているところもあるようです。
利用は子どもだけに限らず、帰りが遅い会社員や家事の時間が取れない家族なども一緒に食事をとれるこども食堂もあり、地域住民のコミュニケーションの場にもなっています。
こども食堂の発足は、2012年に始められた「だんだんワンコインこども食堂」が発祥だとされています。東京都大田区の八百屋の一角で、朝食や夕食を十分に食べられていない子どもたちのために、店主の近藤博子さんが自主的に始めた食堂です。
このことを知った東京都豊島区の子ども支援団体メンバーが活動を取り入れたことをきっかけに、全国に取り組みが広がっていきました。
こども食堂には、複数の目的があります。
金銭的な理由などで十分な食事を食べられていない子どもに食事を提供するというのが大きな目的ですが、精神面をサポートすることも目的の一つです。いつも一人で食事をしている子どもに、アットホームな雰囲気や地域住民と交流できる場を提供します。
また、手作りの栄養のある食事や、地域で生産された野菜を使った食事などが提供されることより、食育の目的といった面も注目されています。
こども食堂数は年々増加している傾向があるようです。
全国こども食堂支援センター・むすびえの報告によると、2023年度は9,132箇所で、公立中学校の校数にほぼ並ぶ食堂数になりました。2022年度からは1,769箇所増加しており、2018年度以降で最も多い増加数であるとのことです(※1)。
こども食堂では、子どもの食事について経済面・精神面など、さまざまな面でサポートできることが大きな特徴です。主な4つのメリットを紹介します。
こども食堂は無料または安価な価格で利用できます。そのため、経済的な理由で十分な食事をとれていない子どもが利用しやすいというのは大きなメリットです。支援が必要な子どもに対して栄養に配慮した良質な食べ物を提供できます。
家庭だと食事を一人で食べざるをえない環境の子どもに、「共食」の場を提供できるのもメリットです。共食とは、家族や友人・仲間と一緒に食卓を囲んでご飯を食べることを意味します。
望ましい食習慣を身に付け、食事の適切な量や質を自然に理解するために、共食は大切なことです。食事の場で交わされるコミュニケーションを通して豊かな心を育み、食べ物を大切にする気持ちやマナーも学ぶことができます。
子どもだけでなく、保護者も利用できるところがほとんどです。保護者同士が顔見知りになることで、子育ての悩みや有益な情報を共有する交流につながります。困ったときに助け合える良好な人間関係を築く場になるでしょう。
また、地域の高齢者など地域住民も一緒に参加して、食卓を囲んでいる食堂も少なくありません。住民が世代を超えて集まる場となり、地域のコミュニケーション活性化やコミュニティ形成につながるというメリットもあるのです。
世界で解決すべき問題についての目標が定められたSDGsには、目標1に「貧困をなくそう」、目標2に「飢餓をゼロに」が掲げられています。また、目標3は「すべての人に健康と福祉を」です。
こども食堂は無料や安価な食事の提供を通し、貧困や飢餓で苦しむ子どもたちをサポートして健康を守るので、SDGsに関連する取り組みであると言えるでしょう。企業が食品の寄付などでこども食堂を支援することは、SDGsに積極的に取り組んでいるという評価にもつながります。
メリットが多いこども食堂ですが、実際に運営していく中では課題が発生することもあるようです。特に課題となりやすい点を解説します。
基本的にこども食堂はボランティアをベースに活動しています。食材はフードバンクや地域住民からの寄付でまかなわれることが多いので、食材が不足する、使いたい食材を入手できないといった場合も起こりうるでしょう。
活動費の確保も簡単ではありません。活動資金は運営している人々の持ち出しという形になることも多く、負担が大きいと継続が困難になります。
スタッフは基本的にはボランティアであるため、企業の従業員のように安定的な確保は望めません。家庭や仕事がある中でボランティアをしている人が多く、毎回必要な人数が集まるとは限らないのです。
どこで開催するかという会場の確保も課題です。有料の場所を借りるとなると費用がかかり運営の負担になってしまいますが、無償で使える会場は多くはありません。運営メンバーが営んでいる店舗を使うなど工夫して開催しているこども食堂もありますが、場所の確保は簡単ではないというのが現状です。
こども食堂は、もちろん誰でも利用してよい場所ではありますが、開催の目的としては家庭で十分な食事を取れていない子どもを支援したいという思いから行われているものです。しかし、本当に支援が必要な子どもや保護者が参加できているかという確認は難しく、本来対象となるべき人に届いていない場合もあります。
生活に困っている家族に、参加してみようと気軽に思ってもらえるようにすることが理想です。こども食堂の存在や情報を、どうすれば問題を抱えている世帯にまで届けられるかといった点が課題となります。
近年は行政も積極的にこども食堂の存在の周知に協力している場合が少なくありません。全国的な規模で支援を行っている民間団体もあるようです。こども食堂に関する取り組みについて事例を挙げながらご紹介します。
農林水産省は食育の推進に意義があるとして、こども食堂について解説したホームページを設けています。
厚生労働省はこども食堂運営のために、衛生管理のポイントをまとめたホームページを設けて情報提供をおこなっています(※2)。
2018年には各地方自治体に対して、こども食堂の普及について推進することや注意点をまとめた通知も発信しました(※3)(※4)。
こども食堂を支援する取り組みを行う地方自治体も増えており、地域のこども食堂の状況をホームページ上で提供している自治体もあります。地方自治体による直接的な情報提供はなくても、各地域の社会福祉協議会やNPO法人、民間団体などが情報を公開している場合もあるようです。
全国的な規模でこども食堂の支援を行っている民間団体もあるようです。
例えば、「認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ」(※5)です。むすびえは、各地の地域ネットワーク団体の支援や、企業・団体とこども食堂をつなげる活動、調査・研究、啓発を行っている団体です。
こども食堂普及のために、どのようなことができるでしょうか。個人と法人、運営団体の場合に分けて解説します。
個人の場合は、ボランティアとして参加したり、食材や資金を寄付したりといった方法があります。こども食堂が近くにない地域の人は、自分ではじめるというのも選択肢の一つです。
まずは、こども食堂を運営している人に話を聞いてみるとよいでしょう。ネットワークを作っている社会福祉協議会やNPO法人もあるので、問い合わせてみると情報がもらえるかもしれません。また、支援が必要な家族が身近にいたら、地域のこども食堂の活動について知らせてあげるということも重要な普及活動の一つです。
法人の場合は寄付を通して活動を支援できます。企業にとっては少額の寄付金でも、こども食堂の活動を長期間支える貴重な活動費となる場合も少なくありません。
寄付はお金だけでなく、食材や物品も喜ばれます。食品や調理で使う消耗品などを扱っている企業なら、現物の寄付をすることは大きな支援となるでしょう。その他の企業では、賞味期限が近くなった防災備蓄品などを寄付するという方法があり、食品ロスの削減にもなるのでおすすめです。
こども食堂の運営団体の場合は、継続した活動を心がけることが何よりも大切です。過度にメンバーの生活を犠牲にするような無理はせず、地に足をつけてできる範囲の活動を行い、手の届く子どもたちを支えて続けることが、何よりの普及活動となるでしょう。
こども食堂は、食事の提供を通して子どもをさまざまな面からサポートする重要な活動です。しかしボランティアベースであるため、食材の確保などが困難になることも少なくありません。継続には、寄付などを通した社会全体での支援が必要不可欠です。
こども食堂のために企業ができることの一つとして、防災備蓄品の寄付があります。まだ食べられる備蓄食品を寄付する取り組みです。しかし、寄付を必要としているこども食堂や求められている食材を、社内で把握するのは難しいかもしれません。
そのような場合は、備蓄品管理のDX化ができる「Musute」を活用すれば、備蓄品の効率的な運用や寄付先のマッチングがサポートされ、こども食堂への寄付も負担なく行うことができます。こども食堂の支援や防災備蓄品の有効活用に力を入れたい企業様は、ぜひ導入をご検討ください。