緊急事態が発生した場合に備えて、BCPを策定している企業も多いでしょう。しかし、実際に災害などの緊急事態が発生した場合に、計画通りに実行できなければ意味がありません。そこで、行われるべきなのがBCP訓練です。
BCP訓練を行うことで、計画の流れを確認できたり、有効性を検証できたりします。また、従業員へ周知することで防災意識の向上にもつながるでしょう。今回はBCP訓練の概要や進め方、シナリオの作成方法までを解説します。
まずBCP(Business Continuity Plan)とは、事業継続計画のことです。企業が自然災害や火災などの緊急事態に陥った場合に、資産の損害を最小限にしつつ、事業継続や早期復旧を目指すために策定されます。緊急事態への対策として、事前に行うべきことや緊急時の対応などが事細かに示されているのが特徴です。
BCP訓練は、策定した内容を従業員に周知したり、BCPの有効性を検証したりするために行われる訓練のことです。議論形式で行われる方法や、災害発生を想定し一通りの流れを行う方法など、さまざまな形式で行われます。
日本は自然災害が多い国です。地震をはじめ、最近では台風や豪雨災害が激甚化しており、企業において防災対策への重要性が叫ばれています。そんな中、BCPを策定するだけではなく、実際の効果を判定し、よりよい計画へとアップデートする必要があるのです。
BCPは主に、計画の有効性や、従業員へ防災意識を定着させる目的で行われます。目的を明確にし、訓練を実施しましょう。
BCP訓練の具体的な目的について、詳しく解説します。
BCP訓練を実施することで、計画通りに進められるのか、有効性のある戦略であるのかを検証することができます。訓練の様子を確認したり、参加者の声を聞いたりして、より効果的なBCPにアップデートしていきましょう。
BCPは事業内容や経済状況の変化などによって、BCPをその都度見直す必要もあります。さまざまな環境変化に対応するためにも、BCP訓練の実施は重要です。
BCP訓練では、緊急事態発生状況やその時行うべき対応などを時系列にまとめます。このような具体的なシナリオを基に行うことで、従業員自身が緊急時にどのように対応すべきなのかイメージしやすくなるでしょう。
定期的なBCP訓練の実施は、従業員への防災意識の定着にもつながります。
BCP訓練には、主に5つの種類があります。さまざまな訓練を実施することで、実施手順や有効性の確認、課題も見出しやすくなるでしょう。
BCP訓練の種類と具体的な方法について、詳しく解説します。
机上訓練は、BCP訓練の中で行われやすい訓練の1つです。BCP実施に関わる担当者と経営層で、計画書に目を通しながら議論を行います。策定したBCPの内容、役割分担や手順などを確認し、その都度、改善を行っていくのが主な流れです。
机上訓練は、状況が記載されている状況付与票を基に、参加者内で作られたチーム内で意見交換を行う「ワークショップ型」と、状況付与票を基に自分の役割に対する対応を考える「ロールプレイング型」に分かれます。ロールプレイング型の方が、双方に高いコミュニケーションが求められるため、習熟度に合わせて実施方法は検討するとよいでしょう。
従業員の安否確認は、まず初めに行うべき緊急時の対応です。全ての従業員の安否確認、負傷者数と氏名を把握し、応急手当を行います。また、あらかじめ作成しておいた緊急連絡網が機能するかどうかも確認しておく必要があるでしょう。古くなっている場合は、最新の情報に更新しておく必要があります。
企業によっては、安否確認システムを利用している場合もあるでしょう。訓練の中で、安否確認システムから従業員に対してメッセージが送信されているか、安否入力のチェックが可能かどうかを確認するとよいです。
自然災害などによる影響で、普段使用しているオフィスや工場が機能しなくなる可能性もあるでしょう。このような場合は、あらかじめ決めておいた施設で災害対応をしながら、事業継続を進めていくことになります。緊急時、代替施設への移動、復旧作業が滞りなく行えるよう訓練を進めていくことが重要です。
設定されたルートで代替施設まで安全に移動できるかどうか、代替施設での事業継続作業は可能かどうか、などを1つ1つ確認していきましょう。工場の場合、製品の製造や加工に問題がないか検証する必要があります。
バックアップデータを取り出す訓練は、災害によって万が一、データが消去されてしまったことなどを想定して行われるものです。バックアップの稼働状況やバックアップ先が適切かどうかなどを確認します。災害からの復旧時に使用するシステムがあれば、正常に稼働するかどうかも確認しましょう。
災害は予期せず発生します。データを守り復旧に支障を来さないためにも、更新頻度の検証も行うことが重要です。
総合訓練とは、BCP発動から復旧までの一連の流れを行うことです。特定の災害や被害を想定し、策定した計画の流れに沿って進めていきます。机上訓練や代替施設への移動など、前述した訓練を組み合わせて行われる場合もあります。
総合訓練は、近隣企業や自治体、地元住民と連携して実施するのがおすすめです。災害対応に対する具体的なイメージを持ちやすく、地域全体で災害時の備えができます。そのためには、日頃から関係性を築き、協力体制を作っておくことが重要です。災害時の復旧をスムーズに進められるだけでなく、自社のBCP対策のアピールとなるでしょう。
BCP訓練は、以下のような手順で行われます。
1.訓練の計画・準備
2.訓練の実施
3.訓練後の評価
4.BCPの修正・更新
BCP訓練の進め方の各手順に関して、詳しく解説します。
まず、訓練の計画・準備を行います。訓練を行う目的を明確にし、訓練の種類やシナリオを作成してください。災害地や被害状況は、国や自治体が発表しているハザードマップや過去の被害状況を参考に設定するとよいでしょう。従業員に対して緊張感や現実味を持たせられます。
計画をもとに、必要な物品などの準備も行っていきましょう。
計画や準備が完了したら、BCPの内容・作成したシナリオに沿って訓練を実施していきます。参加者の対応や行動、計画通りに進まなかったところをその都度記録しておくことが重要です。訓練後の評価を行う際に、参考になるデータとなります。
訓練が終了したら、記録しておいた内容を参考に訓練の振り返りを行いましょう。参加した従業員間で話し合いながら、よかった点、課題などを共有するのもおすすめです。ここであいまいな評価を行ってしまうと、問題点や課題も明確さに欠けてしまいます。定量化できるところは数値化し、次回の指標とするのもよいでしょう。
評価を行い、改善点や課題が見つかったらBCPの修正を行います。修正後、更新されたBCPは従業員に対して周知をしましょう。
BCP訓練におけるシナリオとは、災害やトラブルが発生してからの従業員の対応を時系列に並べたものです。シナリオは、以下のような流れで作成するとよいでしょう。
1.訓練の目的や従業員に期待する行動
2.緊急時に連携が必要な社内外の登場人物
3.発生日時
4.被害状況
各項目の設定は、できる限り具体的に設定します。自社に関わる幅広い人を登場人物に設定したり、オフィスや工場の被害状況を細かく設定したりと、リアリティのあるシナリオ作成を心掛けましょう。参加者の意欲向上につながるだけでなく、緊急時にとるべき行動がイメージしやすくなります。
発生日時も曜日や時間、季節など詳細に設定します。発災日時が休業日であったり、夏と冬で季節が変わったりするだけで、とるべき行動や可能な対応が異なることに注意が必要です。また、初動対応ではなく、復旧対応に焦点を当てたシナリオを作成するのもよいでしょう。
BCP訓練を効果的に実施するためには、従業員に対して意味や目的を周知したり、被害状況などを具体的に設定したりすることがポイントです。1度の訓練で満足せず、振り返りをしながら、よりよいBCPを目指していきましょう。
緊急事態発生時、早期復旧や事業継続を進めるためには従業員の安全確保も欠かせません。従業員が自分の身を守ったり、会社の復旧作業を進めたりするなど、全ての従業員が緊急時に対する対応力を身に付ける必要があるでしょう。訓練実施時から緊張感を持って行ってもらうためには、従業員にBCP訓練の意味や目的を伝えることが重要です。
緊急時のみ使用するツールやシステムがある場合は、使用方法について共有しておくのもよいでしょう。
シナリオの作成方法でもお伝えしましたが、災害地や被害状況は具体的に設定するのが重要です。「A地域で発生した地震により停電が発生、工場Bが稼働困難となる」など、発生が懸念されている地震や過去に起こった災害を例に、リアリティを持たせながら細かく設定を行いましょう。
BCP訓練後の評価・振り返りは、よりよいBCPへと改善していくために必要な作業です。訓練に参加した従業員、経営層などさまざまな立場の人から意見を出し合い、よかった点、問題点などを共有していきましょう。
振り返りの場では、意見が出しやすい雰囲気作りも重要です。自由なディスカッションの中で、なるべく多くの意見を集めていきましょう。適切な評価・振り返りは、よりよいBCPにブラッシュアップすることにつながります。
今回は、BCP訓練の概要や目的、進め方やシナリオの作成方法などについて解説しました。BCP訓練は、従業員の防災意識の向上や、BCPの有効性を確認することにつながります。
訓練を実施する際は、従業員に対して目的や意味を伝えたり、リアリティのあるシナリオを作成したりしてみましょう。今回ご紹介したポイントを参考に、自社に合ったBCP訓練を進めてみてください。
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